最も大切なもの
2週間ぶりの晴れ間。
シドニーは連日の雨、全身がカビてしまいそうなこびりつくような湿度に捕らえられ、逃げ場のない日々が続いていた。
久しぶりに窓外に見る青空は救いの神。
何をおいても真っ先にすること、それは陽の光を全身に浴びること。
すぐに顔を隠してしまうかもしれない太陽と競うようにバルコニーに出て伸びをした。
南半球のジリジリと焼け付くように照りつける太陽が心地良い。
暖かさと眩しさに心底ありがたさを感じた。
夜半からまた雨予報。いつまた雲に隠れてしまうとも知れない危うい太陽が愛おしい。
こんな異常気象でなかった頃にはここまで太陽に恋い焦がれたことはなかった。
いつだって、何においても同じだ。
いつもそこにあり、当たり前のものほど、
その存在を忘れがちで、そして最も大切なもの。
皮肉にも、失ってその大切さに気づく。
あなたにとって特別ではない、あるのが当たり前で気に留めないものこそが特別な存在なのだ。
それがいつもそこにあることであなたの日常の一部を構成し、バランスをとっている。
あなたの周囲に日常に存在する家族、友人、環境はあって当たり前で、しかしながら特別な存在なのだ。
その日常の特別たるを軽視、ないがしろにすればいつかそれを失う時が来る。
家族を当たり前のものとないがしろにすれば関係は崩れ、信頼を失うだろう。
そしてそれを失ったあなたの日常は壊れ、バランスを崩す。
…そして失った特別の存在を渇望する。
日は昇り、沈むのが当たり前だと、地球のメカニズムを軽視し自然破壊をした結果が異常気象。
いつだって、そこにあり、当たり前のものこそが特別で最も大切に扱うべき存在。
失い、その大切さに気づかされ、傷つく前に、周囲を見回してほしい。
あなたの当たり前で特別な存在を、敬い感謝し、しっかりと向き合ってほしい。
完全に失ってからでは遅いのだから…。
まだ、修復ができるうちに大切に、大切に…。
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