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檀一雄全集を読む

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新潮社版の『檀一雄全集』を一巻から読んでいってその感想を書いていこうと思います。
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#檀一雄

新潮社版『檀一雄全集』目次

第一巻 花筐/佐久の夕映え [帯文] あの豪放なる魂の鼓動が聞える! --今よみがえる夢…

【檀一雄全集を読む】第一巻「母の手」

 檀一雄は母親のことを度々書いている。檀は六歳の時に父の転勤のために両親から離れて母方の…

【檀一雄全集を読む】第一巻「吉野の花」

 時代物の小説だ。資朝卿(日野 資朝/ひの すけとも)の話で、鎌倉時代の後期に中流貴族の…

【檀一雄全集を読む】第一巻「冬の瓦」

 満州から帰国し、最初の妻律子と結婚して石神井公園池畔の借家に住むようになってから始めて…

【檀一雄全集を読む】第一巻「魔笛」

 昭和十七年に満州の寛城子でロシア人バウスの家に間借りしながら書いた小説で、同年満州の『…

【檀一雄全集を読む】第一巻「漆黒の天国」

 昭和十二年に日中戦争の動員令を受けて軍隊に入った檀一雄は昭和十五年に召集解除となるが、…

【檀一雄全集を読む】第一巻「樹々に匐う魚」

 水沢あきの幼少期から教師になっての日々を描いた話。あきは母親が二人いる家で育った。十五歳の夏休みに父親が亡くなり、母、母の一人は出奔した。もう一人の肺病の母も亡くなり、あきはその母の弟に預けられることになった。  このように特殊な環境で明確な愛情をかけられることなく、二年遅れて入った学校では同級生と交わることもなく、教師の命令で自分を鞭打つ組長甲野五郎に密やかな恋をする。その思い出から、のちに教師になったあきは目をつけた男女の生徒を執拗に鞭打ち、そのあとでは家に呼んで一

【檀一雄全集を読む】第一巻「逗留客」

 この全集で初めて読んだ小説だ。解題にも「本全集において初収録」と書かれている。初出は保…

【檀一雄全集を読む】第一巻「夕張胡亭塾景観」

 この小説は第二回芥川賞の候補作になった。冒頭に掲げられた句「歯こぼれし口の寂さや三ッ日…

【檀一雄全集を読む】第一巻「花筐」

 一応榊山が主人公ということになるんだろうか。個性的な男二人の間で純粋な男が振り回されな…

【檀一雄全集を読む】第一巻「花筐序」

 「花筐」は元々長篇の構想だったものの、この「花筐序」のあとに発表した「夕張胡亭塾景観」…

【檀一雄全集を読む】第一巻「帰心」

 淫蕩の血を自覚する主人公吉田健作は妻子を国許に残し東京に暮らす日本画家で、場末の酒場で…

【檀一雄全集を読む】第一巻「衰運」

 由木滕介はカリフォルニアに出稼ぎに行っていた両親と、まだ会ったことが無い妹が事故で死ん…

【檀一雄全集を読む】第一巻「美しき魂の告白」

 主人公多田の幼少期の追憶。多田の年齢は書かれていないがおそらく未就学児か小学校低学年くらいだろう。これも檀一雄の幼少期、福岡の野中(久留米)や柳川の家で育ったころの記憶を織り込みながら書かれていると思われる。  話は多田を取り巻く女性を軸にして書かれている。初めは多田と二人で暮らしていた若い祖母。近所に住むドイツ人捕虜のぽーら。祖母は自死し多田は叔母の許に預けられる。多田を養子に貰いたい様子の叔母だったがアメリカに行っていたという母が帰国し、多田は母と住むことになる。