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会社員がバリ島の農村に水道を通した話

■会社員×NPO活動で見えたこと
学生時代のインドネシア留学がきっかけで、会社員をしながら、バリ島の田舎で給水事業NPOをしています。仲間たちと協力すること約4年。多くの村人に水を届けることができました。

活動しながら見えてきたのは、『日本の水の未来のヒント』でした。 


■バリ島給水事業について

・活動の背景

活動を実施するプダワ村は、インドネシアのバリ島北部に位置する、人口約5,500人の農村です。バリ島は世界的なリゾート地として有名ですが、北部では行政による水インフラ整備が遅れています。

プダワ村には6つの集落があります。当初は、各集落がバラバラに給水事業を行っていた為、給水サービスの格差に起因した、集落同士のトラブルも生じていました。また、村全体の給水普及率は約25%に留まり、遠方への水汲みの負担や、水浴びや洗濯の制限が問題となっていました。

支援後も、現地の方々自身で水インフラを維持できる”本当の支援”がしたい

その想いを胸に、本活動に取り組みました。

・村人が主役の給水事業スキーム

まず、村長や集落長で構成されるプダワ村水道組合を立ち上げました。プダワ村給水事業マスタープランの作成、村全体の水道料金ルールの統一などを行い、平等な給水の礎を築きました。

次に、専門性を有する現地の水道公社(PDAM)、ウダヤナ国立大学と協定をを結び、”村人が主役”の給水事業運営スキームを構築しました。

”村人が主役”の給水事業スキーム

 給水事業の持続性を担保すべく、水道公社、大学が参加するインセンティブ設計を工夫しました。本事業への参加を通じて、ウダヤナ大学は研究活動の充実化、PDAMは少ない業務負荷で、インドネシア政府が掲げる『農村における水アクセス改善目標』に寄与できます。

そして現在、プダワ村中心部では、毎日いつでも水が使えるようになりました。

■水を軸に地域が一つに

・『地元主導』にこだわる

給水事業に係る最終的な意思決定は、必ず村人に実施してもらいました。最初は受け身だった村人も、私たちや水道公社、大学がサポートを継続する中で、『自分たちがプダワ村の将来を担うんだ!』という使命感を持ちました。

私たちから一方的に“答え”を与えるだけでは、給水事業の持続性が薄れます。

そもそも、村にとって本当に必要なモノ・コトは、現地で暮らす村人が一番分かっているはずです。

水道組合の定例会議の様子


例えば、現地に自生するシュロの木皮を活用した低コストなフィルターを自作する等、”地元の知恵”を活かしたアイデアが生まれました。

天然のフィルター付きの水路を整備


・水を通じて村が結束

プダワ村には『ゴトンロヨン』という素晴らしい慣習があります。村の生活に関わることはみんなで話し合い、みんなで作業する文化です。今回の給水工事は、全て村民自身にゴトンロヨンで行ってもらいました。『自ら考え、手を動かす』ことで、給水事業を自分ゴト化してもらいました。

水源工事を行う村人たち


水道料金を支払う一般の村人たちの理解も重要です。水道組合が中心となり、給水事業の説明会やSNSでの情報発信を行いました。

給水事業説明会の様子


この『村人が主役の給水事業スキーム』は、バリ島現地メディアに取り上げていただきました。 日本では、秋篠宮殿下が総裁を務める『日本水大賞 国際貢献賞』を受賞しました。国内外からの評価が、本活動のブランディングにつながり、村の結束力が高まりました。

バリ島現地メディアに取り上げられた本活動


村人が自発的に植林活動も始め、将来の水源保全にも想いを馳せています。その様子からは、水に関する活動を心から楽しんでいるように感じます。

水を軸に、地域にワクワクが生まれました。

植林活動の様子


■日本の水の未来のヒント

・水と人のつながり

水を軸に、プダワ村がひとつになる様子を見ながら『日本よりも水と人の距離が近い』ことに気が付きました。

工事後の水源には多くの村人が集まり、感謝の祈りを捧げていました。
水が命の農業で生計を立てるプダワ村は、水と人の距離が近いんです。

水源に祈りを捧げる村人

現在、日本の水インフラは老朽化や財政赤字、担い手不足などの課題が山積みです。特に中規模以下の地域では、これまでの『自治体依存型』の水インフラ継続が困難になってきます。

しかし、水道が当たり前な現代の日本人にとって、水と人の距離は遠のいていると思います。

昔は日本でも、田畑の豊作を願い、水の神に祈る祭事が各地で盛んでした。

水と人の距離が、もっと近かった。

プダワ村で活動する中で、『私たちと水のつながりを、どうやって取り戻すか』が、日本の水の未来に重要だと、深く考えるようになりました。

・日本版ゴトンロヨン(相互扶助)のデザイン

住民と水のつながりを復活し、水インフラの自分ゴト化、積極的な参与をどうやって促すか。

そのためには、日本版ゴトンロヨン(相互扶助)をどのようにデザインするかが、極めて重要だと思います。

私は、一見、日本とは全く異なるプダワ村の活動が、ヒントになると思います。

地元の企業や大学、NPOと連携しながら、現地住民の想いを、地元主体で支える『日本版ゴトンロヨン』が、今後の日本の水インフラの維持に必要です。

”社会的な意義”や”人々の想い”にお金が集まりやすい今、こういった『新たな水インフラのエコシステム』を、様々な視点から思考すべきです。


日本の水インフラの未来は、インドネシアの田舎にヒントがありそうです。


長文にもかかわらず、最後までお読みいただきありがとうございました。

・バリ島田舎の給水事業  詳細はこちら
https://www.japanriver.or.jp/taisyo/oubo_jyusyou/jyusyou_katudou/no25/no25_pdf/tikyuunotomo.pdf

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