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音楽劇『空中ブランコのりのキキ』 世田谷パブリックシアター

2024年8月9日(金)19時
@世田谷パブリックシアター
¥8000

永島敬三くんご出演と聞いて興味を持ったけど、どうやらキッズ向けの演目っぽい。ああ、大人も子供も楽しめる的なやつね。ほかのキャストもほぼ知らないし、はてどうしよう、面白いかなあ。メインビジュアルの敬三くんがあんま可愛くないのが気になる・・・。
ちょっと迷ったけれど、モチーフがサーカスならば悪くないかも? エアリアルもあったらうれしいな、期待半分でチケットを購入。念の為に一般発売の初日にポチったんだけど、けっこう埋まっていて驚いた。

<STORY>
キキは三回宙がえりのできる空中ブランコのり。キキの三回宙がえりを一目見ようと、どこの町へ行ってもそのサーカスはいつでも大盛況でした。
しかしキキには、もし他の誰かが三回宙がえりをはじめたら、自分の人気はおちてしまうのではないかという不安がありました。
「お客さんに拍手してもらえないくらいなら、わたしは死んだほうがいい……」
けれども予感は的中し、ある日、他のサーカスでも三回宙がえりが成功してしまうのでした。(童話「空中ブランコのりのキキ」)

公式サイトより

この舞台は童話「空中ブランコのりのキキ」と「愛のサーカス」、それに絵本「丘の上の人殺しの家」のみっつのお話をミックスしてあるのだそう。相変わらず予習しない人間のアタシ、公式サイトさえもチェックせず観劇に臨んでしまった。
へえ、原作があるんだあ。童話ってけっこうシュールだったり不条理だったりするよね。な~んか別役実っぽいw と思ってたらナント、本当に別役実作品だった!
「空中ブランコのりのキキ」は中学の教科書にも載ってたらしいけど、アタシは読んだことないわ。きっと最近の教科書なのね。。。

子供向けと謳いつつ、やはり別役作品なのでちょっとビターテイスト。死とか生きる意味とかね。キッズたちにはどう映ったのかな、この舞台。
キキが自分はつまらない人間で、空中ブランコしか取り柄がないと思っていて、お客さんを喜ばせなくなったら飛ぶ意味がないと言う。そんな彼女が、拍手のためじゃなく自分が飛びたいから飛ぶんだと最後にそう言ったのがよかった。
でも一度きりの四回宙返りをするために、全てを捨ててしまったのは悲しいな。しかも他のサーカスで三回宙返りをやったっていうのが、ただの噂だったのも悲しい。噂のサーカスの子・ピピを、キキと同じ俳優さんが演じているっていうのがまたね・・・。
生きているだけでいい、自分が飛びたいから飛ぶ。そう思えたのになんであの薬を飲んだのかなあ。ただ四回宙返りをしてみたかったのかな。

少年ピピと子像が港街に流れ着き、街の人が彼らの面倒を見る・・・という一連のできごとがサーカスの出し物だったというオチもすごい。あとから団長がやってきて木戸銭を徴収するって言い出した時、(えっ、みんな怒るんじゃ?)と思ったんだよね、アタシ。でも街の人は喜んでお金を払っていて(マジか?!)ってなった。ピピたちにやさしくすることが街の人たちの喜びになっていたという。うう、申し訳ない。アタシのココロが汚れていたわ・・・。

お目当てのひとつだったエアリアルは、序盤のサーカスシーンでやってくれたので満足。欲を言えばもうちょっと長くやってほしかったけど。
しかしサーカスアーティストの方々、さすがのクオリティで目が足りなかった。だってあのシーン、出し物いっぺんにご披露してくれちゃうから~~!
はあ、やっぱりサーカスはワクワクする。大きなテントでやるような、本当のサーカスは見たことないんだよね。いつかは見てみたいなあ。

もう一方のお目当て、永島くんは「人殺し三兄弟」の次男・キーボデー。不安要素だったビジュアル、ぜんぜん大丈夫!(←日本語)無問題! かわいい次男坊だったわ。衣装やヘアメイクの方々、ありがとう!!
人殺し三兄弟は、お客から殺し請け負うんだけど、誰かを殺すんじゃなく依頼人自身を殺すんだそう。んな家業があるかい、自殺幇助じゃないかい。などと言ってもしょうがない、ここは不条理な絵本の世界なんだから。(原作が)
しかも今まで依頼は一件もなく、つまり人を殺したことは一回もない。そんなんで十数年以上、いや二十年? どうやって生活してきたんだ。実家が太いのか? などと言ってもしょうがない。ここは(以下略)

いやー、三兄弟めっかわ~!
永島くんと、長男ピーボデー、三男チーボデーの三人の並びが絶妙。小ぶりでがっしり、長っ細いの、ころっとしたちっちゃいの。紫の衣装もオモチャっぽくてかわいらしい。
人殺しなのに、まじめで慎ましく、心優しい。

とゆーわけで永島くんの役がめっかわで満足だったけど、でもキャストさんみーんな良かったわけで。ちなみに永島くん以外は全員初見。ほぼ名前も知らないくらいの。
三兄弟の玉置孝匡さん、田中美希恵さん、キュートで愛されキャラになっていてよいわ~。長男の柔らかくてやさしい雰囲気。三男の「キャ~~~~!」連呼のシーンは可愛すぎて爆笑!

キキとピピの二役を演った咲妃みゆさん、歌もうまくて華奢で愛らしい。アタシは特にピピが気になったなあ。主人公じゃないから心情の掘り下げもない分、ミステリアスで。物憂げな微笑みを浮かべる少年。よき哉。

ピピの連れてる子像はパペットで、それを操るのは松岡広大さん。像の耳が時々ぱたぱたするところがかわゆすぎる。松岡さんは本役でロロというピエロも演じているけれど、そちらは、まあ割とふつう。象はとてもいい。

狂言回しは瀬奈じゅんさん。美しい妙齢の女性からおばあさんに、ストール一枚でさらっと変身。うまい。しかし咲妃さんといい、宝塚の人って知らなくてもすぐわかるの、なんでだろうね。

サーカスって華やかなんだけど、なぜか淋しさとか物悲しいイメージがあるよね。原作はどんな感じなんだろう。読んでみたいけどほぼ絶版らしくて、どこかの図書館とかにあるのかなあ。
一本のお芝居として、三つの話がもうちょっとシームレスにつながっていたらもっと良かったな。でもおもしろかった。キラキラでかわいくて、ワクワクするけどやっぱりちょっと切ない。でもどこかあたたかい。観て良かった。
衣装も美術もとてもかわいくて、目に楽しい。また例の如く目が悪いのに、二階席なのにオペラを忘れてしまい、あんまりよく見えてなかったけど(泣)ネットで舞台写真や動画を見て(こんなんだったのか~!)と補完している。もっと舞台写真ください・・・。

<出演>
咲妃みゆ 松岡広大/玉置孝匡 永島敬三 田中美希恵
谷本充弘 馬場亮成 山下麗奈/瀬奈じゅん
サーカスアーティスト:吉田亜希 サカトモコ 長谷川愛実 吉川健斗 目黒宏次郎


この日は上演中に地震があり、一時中止に。その後すぐ再開するかと思いきや、点検に時間がかかるとかで結局40分弱ほどかかった。そりゃそうだよね。いろんなものを吊り下げたり、それにぶら下がったりするんだから、しっかり安全確認しないとね。点検中は漫画みたいにガチャガチャトンカンすごい音がしてたわ。頑張ってーとココロの中で応援しながら待ってた。

終演後はポストトークの予定で、40分おしたら中止になるかもと心配したけど、予定通り開催してくれた。
トークの内容は「せたがやアートファーム」についてや、この演目を立ち上げる経緯なあどの話から、稽古場の雰囲気なども。もう少し作品の内容についてを聞きたかったな~。
でもキキの最後のモノローグについては良い話が聞けた。最初は全く違うセリフだったけど、咲妃さんとのディスカッションでキキの心情とリンクするものがあり、そこから作られたセリフなのだそう。ほほう~。

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