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私の最後の恋#5


彼と別れて数ヶ月

ここ数ヶ月はぼーっとしてたら
あっという間に過ぎていった


ポッカリ空いた心の穴を埋める代わりのものは
特になかったから
ポッカリ空いたまましばらく過ごした


ようやく色々気持ちも落ち着いて

もう一度じぶんと向き合おうと思えた頃

あのカフェに行った



いらっしゃいませ!


『パンダ』だ。

ドキっと。うわぁ。と。
ちょっと今日は複雑な気持ちたった。

オーダーを取りに来てくれたのも
『パンダ』だった。

、、、いつもホットジンジャーエール


と思ったけど

新しい自分になりたくて

過去の自分とは別れたくて

せめてもの気持ちで

いつものやつとは違うものを頼んでみた


『メロンソーダをお願いします』


お腹が冷えることが苦手だからあんまり
冷たい飲み物は飲まないけど

ちょっとスカッとしたかった。
でも、ちょっと自分を甘やかしたかった。
そんな今の私にピッタリだった。



『今日は違うんですね、』


ん、、、、?

いつもと違う?

『今日は暑いですもんね!』


6月だ。雨も降ってる。まさにどんよりな梅雨真っ只中。

パンダの口から出た、いつもと違う、という
言葉に驚いて変なことを言ってしまった。

何か言うにしてももっといい言葉があっただろう。

パンダが自分のことを認識してくれていたことに
舞い上がってしまった。

いつものやつといってもパンダがオーダーを
取りに来てくれたことは累計3回くらいだろう

他の日も見ててくれたのだろうか

いや、奥の方で作っていたから
知ってたのかな?

色々生理のつかない頭の中でぐるぐると
想像だけが膨らんだ。



『お待たせしました、メロンソーダです』


『ありがとうございます』


『今日みたいな天気の日は、僕もなんかスカッとできるもの飲みたくなっちゃいますね!』


『そ、そうですね!!!』



パンダが私だけに向かって喋った。

なんかもうこのときの自分のひきつり笑いは
思い出しただけで笑ってしまいそうだ。


緊張してしまってその日のことは
よく覚えていない。

ただ、私の心にポッカリ空いた穴は
パンダの言葉と甘くてシュワっとする
メロンソーダで8割くらい埋まっていた。


私を認識してくれていたこと。

そして帰り際に

『またお待ちしてます、雨なのでお足元気をつけてください!良い一日を!』

とパンダは言った。


その日からカフェに通うことが私の生きる
モチベーションになった。





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