【毎週ショートショートnote×青ブラ文学部】にゃんとなく、夏の夕暮れ海岸で
もうこの世に未練はないと最後に大好きだった夏の海で夕日を見ていた時だった。
「ピーピー」
どこかで子猫の声がする。声を頼りに辺りを歩いていると松の木の下に生まれて長くならない子猫がいた。茶トラの子猫は母猫とはぐれたのだろうか。たった一匹でピーピーと鳴いている。
不憫に思った僕は子猫を抱き上げると思わずつぶやいた。
「お前もひとりぼっちか。僕と一緒だな。お前、うちに来るか?」
それからの僕は、この世に未練はなかったはずなのに、ピーと名付けた茶トラの為に必死で仕事と子(猫)育てをがんばった。
ピーは賢い猫で、仕事から帰った僕をいつも玄関で出迎えてくれたし、疲れた時にはいつもそっと寄り添ってくれた。そんなピーが愛おしくて、僕はもう死にたいなどとは思わなくなった。
あの出会いから時が過ぎ、僕は心を通わす人ができて結婚をし、子供も生まれた。僕の愛する人たちもピーと心を通わせ、毎日が楽しく穏やかに過ぎていった。
ピーと出会った日の様な夏の夕暮れ、僕はなぜだかピーと海が見たいと思った。歳をとって弱ったピーをあの日みたいに抱っこして海へ行った。夕日のきれいな海はあの日と何も変わらない。
「ピー。夕日と海がきれいだね。ピーはあの日の事覚えてる?あの日、ピーと出会っていなければ、僕はこの世にいなかったのかもしれないよ。ありがとう、ピー」
ピーは僕の方を見つめて「にゃーん」と鳴いて喉をゴロゴロ言わせた。
その日から3日ほど経った朝、ピーはお気に入りのクッションの上で冷たくなっていた。
僕は大事なものを失った悲しみに打ちひしがれていたけれど、そんな僕に妻と子供が寄り添ってくれた。みんなでピーとの別れを悲しんだ。
ピー、君を失った悲しみはすぐには癒えないけれど、僕は君を忘れないよ。
僕を救ってくれたピー。
この世での命を繋いでくれたピー。
虹の橋の向こうで僕や家族を見守っていてくれな。いつか僕がそっちへ行った時、ピーに胸を張って会えるようにがんばって生きていくから。
ありがとう、ピー。
大好きだよ、ピー。
また会う日まで・・・
++++++++++++++
毎週ショートショートnoteに参加します💛
今週のお題は「海のピ」です。
青ブラ文学部にも参加します💛
今週のお題は「にゃんとなく」です。
410文字の倍くらい書いちゃいましたにゃ🐱💦
タイトルも俳句っぽくしてみましたにゃ🐱
よろしくお願いしますにゃ🐱💕
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪