しゃべるピアノ【ショートショートnote杯】
「ねえ。」
どこからともなく声が聞こえる。あたりを見渡しても誰もいない。
「ねえ。」
また声が聞こえる。そこにあるのは古びたピアノだけ。商店街の一角にぽつんと置かれた、誰もが弾いていいピアノ。
まさか、ピアノがしゃべってる?
「まさか、ピアノ?」
「そう、私。あなた、ピアノ弾けるでしょ?ちょっと弾いてみてよ。」
なぜ俺がピアノ弾けるって知っているんだ。怪しすぎる。
俺は、ピアノに挫折した。プロになりたくて、音大に進んだけど上には上がいる。折れた鼻っ柱は元に戻らず、学校も休学している。
ピアノがしゃべるなんて。俺はどうかしてしまったのだろうか。でも、このピアノを面白がる自分もいた。
手始めに、人気歌手の曲を弾いてみる。
悪くない。素直にピアノを弾く事が楽しいと思える。周りには多くの人だかり。動画を撮っている人もいる。
俺はピアノにお礼を言った。ピアノは嬉しそうに答えた。
「やっぱり私が見込んだ男ね。あなた有名になるわよ。」
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