【登場人物】 千歳―ちとせ 高校 2 年生 東陽神社の娘。使い狐の丸狐を 自分の兄弟と思っている 丸狐―まるこ 東陽神社の使い狐。尻尾は 5 本。 きつねうどんが大好き。ちょろい ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 夕方、田舎の川べりの道。 千歳、下校中。 千歳「あー、もういったい何なのよ!体育の 時間には吉田先生に“お前はたるんどる!” っていいがかりつけられてグラウンド 2 周 走らされたし、担任には“こんな成績じゃ 進学は無理です。もっ
二人は決して結ばれてはいけない 人の身ではない私はあなたを思うことも 許されない… それは、痛いほどわかっている そのアヤカシの姫は 静かな夜の柔らかな風に吹かれながら その夜出会った青年のことを 思い出していた 切なくて苦しくなる心 恋など出来る身ではない だが、自分の想いに抗うことができない 本当に忘れなくては…いけない? ただ一人想うだけなら、罪にはなるまい 姫は静かに目を閉じた あなたのためなら あなたのためなら 私はすべてを捨ててもかまわない アヤカシ
私と彼が遠距離恋愛になってから三度目の七夕を迎えた。 先週末に連絡した時には『帰るよ』と優しく言ってくれていたのに、昨日大ゲンカを してしまった。 急に帰れなくなった言い訳をする彼に しびれを切らし言ってはいけないコトを、 口に出してしまった。 都会での暮らしが楽しくて、帰って来る気 なんてないコト… 怒りながら電話を切った彼 くやしくて、切なくて、思いっきり泣いた 泣きながら眠った夜、夢を見た 昔の…まだ一緒にいた頃のふたりの夢 縁日の思い出、満天の星空、 楽しかった
少しだけ早く目が覚めた。 朝の柔らかな光を浴びながら、 ベランダに出てゆっくりと煙草をふかす… 今日もいつもと同じ一日の始まり。 また同じ繰り返し…か。はぁ。 俺は今、長期休暇の真っ只にいる。 ずっと役者をやってきて初めて取った 長い休み。 ずっと走り続けてた時は考えなかったことが、 毎日頭の中をぐるぐる回る。 ぼんやり景色を眺めていたら、入学式へ向かう真新しいダブダブの制服を着た中学生の 会話が聞こえてきた。 「お前、中学入ったら何やるんだよ」 「僕、演劇部に入る。お芝
気持ちのいい朝。 隣でスヤスヤと眠る彼の口元に甘く光る "よだれ" 自然と私の口元が緩んでしまう。 ゆっくりと両腕で自分を抱きしめる 『おはよう ワタシ』 朝日を浴びながら、自分にそう語りかけた... 彼と同棲をはじめて2年とちょっと、付き合い始めて4年が経った。 優しくて、困った時には頼りになる彼。 不満など何もない。 このまま結婚?ってなってもきっと上手くやっていけると思う。それ位私達は自然体でいられる関係。 友達に話すと『うらやましい!』といつも言われる。私って幸せだ
「忘れなきゃいけない」そう思えば思うほど思い出してしまう。決して結ばれてはいけない恋。なんで出会ってしまったんだろう彼と… 大学のキャンパスでその人を見かけたのは単なる偶然だった。何かを探すようにキョロキョロしては、しばらく歩き肩を落とす。その様子が面白くて暫く人間観察してしまった。 …何だか面白い。笑いそうになるのを抑えながら、道案内を申し出た。 私の声に吃驚した彼を見て私はこらえ切れず笑ってしまった。彼は緊張した様子で『案内お願いします』と言った。 道案内しながら、彼と
いつものように高速を飛ばして、ここに来た。赤と白、お目出度い市松模様のコンビナートが見える。変わらないこの景色。前と違うのは、"1人で来た"ということだけ。 たったそれだけだ... 僕の父親は大学教授。外づらがよく女子大生に人気だといつも家で自慢する。 母親は自分で起業し、家に帰ることはほとんどない。 そんな2人は僕が8歳の時に離婚した。 ある時、お金だけは持っている父親から 「養育費を受けとって来て」という母からの命令で僕は父親の勤める大学に向かった。 父親の親族が経営