第三話 〜運命の仕事、ヒト〜
【美容師への世界へ】
父がこの世を去り、いよいよ私が家を支えなければと
強く思うようになりました。
世の中は女性の活躍が目を引く1980年初頭。
資生堂や小林コーセーに、
「女性を取締役へ抜擢」
という文字が踊っていた時代。
元来、成功願望が強く
負けず嫌いの性分を母から受け継いでいる私。
女性が男性と分け隔てなく、いや、むしろ女性だからこそ活躍できる仕事を探していた私がそこにいました。
心の中では既に決めていた職業がありました。
そう、“私は美容師を目指そう!”と。
ですが、独特の仲間意識の中に入っていけるのか、
技術の厳しい世界に入っていけるのか、
少々臆病になっていました。
「美容師は大変そう」
「立ちっぱなしで病気になるらしいよ」
などと、周りからは反対の声ばかりが聞こえました。
しかし、
何の資格も特技もない母が、
父を亡くしてから苦労しているのを見ると、
自分の手に職を、技術やスキルを身につけていくことは、生きる上で、必要なことだと思われたのです。
23歳
美容室への見習いとしては遅すぎるが、
ヒトの2倍頑張ろう!
そう決めて、技術の世界へ飛び込んだのでした。
美容師の帰りは遅い。
23時、24時は普通。
営業が終了してからレッスンをやり始めます。
家では母がひとりで待っている。
早く帰りたい。
焦る私は、とにかく人一倍練習して、
早くスタイリストになることを目指したのでした。
これが、私の原動力。
これが、私の使命。
そんな思いを抱いて、日々仕事を頑張っていたのでした。
【出逢い】
恋愛なんてする時間も余裕も無く、
2年が過ぎ去りました。
私はひたすら美容師の仕事に没頭しました。
当時、カットの技術を修得するのには
5年を要すると言われてましたが、
私は2年で修得しました。
他の人より遅くに美容師を目指した私は、
いっときも早く技術を自分のモノにしたかったので、
猛スピードで身につけました。
仕事ばかりしていた私でしたが
ある日、居酒屋へと誘われました。
お酒を全く飲めないので、こういうところはまず、
行かない私。
ですが、なぜかその日だけ、
誘われるがままに出かけて行ったのでした。
そこで、3〜4人ぐらいの青年が、片隅のテーブルで、
それはそれは楽しそうに、
わちゃわちゃとお酒を飲みながら話をしている姿が
目にとまりました。
「一緒に飲んでやらんね〜。(※飲んであげて~)
この人達は、いっつも男ばっかりたいっ」
とのママさんの言葉。
友達と私はその人達と合流することになったのです。
「ダッサ〜💦」
これまで、美容業界のスマートな男性を見てきた私には、作業着姿で建設業の話をしている人達の姿は、
このように見えてしまったのです。
でも、話をしてみると、
(あれ?何か違う!)
(誠実そうだし、人間味ありそうで温かい!)
男性美容師という中性的な生物を見てきた私には、
かえって、温かみのある、安心できる、
そんな人達にも思えてきたのです。
そして、のちに、夫となるヒトがそこにいたのでした😆
また、その飲み仲間の人達が、この先、
夫が経営する会社の社員さんになる人達になるとは、
この時は想像だにしませんでした。
居酒屋で、偶然出会っただけの人となんて
普通ならそれでおしまいだと思いますが
何か目に見えない縁のようなものを
感じていたのでしょうか。
私達はそれから頻繁に逢うようになったのです。
建設業、美容業と、
両者とも資格の必要な仕事であること、
常に向上心を持って仕事に取り組み、
上を目指して熱意を持っていること等の
共通点があったため、
いつしかお互いに尊敬しあえる存在になっていました。
「この人は、安心できる人!」
「この人なら、大丈夫たい!」
そんな母の言葉で、心を決めました!
私の母は、人を見る目だけはピカイチだったのですから😄
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プロローグ~失敗と成功~
第一話~強い使命感~
第二話~1つ目の壁~
第四話~人生の転機~