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人生は色んな色で彩られている

武庫川女子大で開催された「作家と語る」という会に行ってきました。ゲストは森絵都さん。

私にとっての森絵都さんの小説は「風に舞い上がるビニールシート」から始まり、「宇宙のみなしご」「カラフル」「つきのふね」とはまっていき、一気に読んでしまった「DIVE!!」は本当に大好きな作品です。

「宇宙のみなしご」との出会いは少し変わっていました。数年前に「バースデーブック」という名前だった気がするのですが、365日分その日と関わりのある本に、その日付のブックカバーがつけられて販売されていた企画本がありました。私の誕生日で、中身を知らず手に取ったのが「宇宙のみなしご」だったのです。

あらすじも知らずに本を読むことってあまりないですよね。でも、私にはその時ページをめくりながらその偶然にとても驚いたものです。そこに登場する、周りに合わせることなく過ごす中学生の主人公。当時、主人公と同い年だった我が子が「学校にはいかない」と宣言したこと。今でも自分のペースを貫く我が子たち。ああ、それで良いんだ、と少し母の肩の荷がおりたこと。

のちのち、子どもたちもそれぞれこの本を読んだらしいのですが、その息子から今回のイベントに行こう、と誘われたのもなんとも不思議なものでした。

今日の会はとても面白い企画で、武庫川女子大の学生や卒業生が森絵都さんの小説の好きなフレーズとその感想について語り、さらに質問をするというもの。感想までは言えても、そこから質問に繋げるって結構難しいですね。でも良い質問がたくさんあって、それに答える森絵都さんのことばが美しくて、なぜ小説があんなに魅力的なのかが本当によく分かりました。

森絵都さんは児童文学が書きたかったと。たくさんの子どもたちが読みたいと思う本を書くために、初期の作品では意図的に少年少女たちの心を掴むフレーズを入れるようにしていたそうです。本に興味を持たない子たちも、好きな歌手の好きな歌のフレーズなら、その文字をノートに書いたりして大切にする。本がそういうものであってほしいという気持ちを込めていたと。

ひとつの小説はひとつの宇宙であり、その世界のお話が終わると次の宇宙を描く。小説は特別な存在の人が主人公になることが多いので、普通の子を主人公にして描きたいお話もあった。文字を通して関わる人は全て好きになってしまうので、嫌な人も魅力的なひとになっていってしまう。本は不特定多数の人に書いているのではなく、たったひとりの誰かに向けて書いている。本を読んで影響を受けたと言われるけれど、一番素晴らしいのはその本を読んで心で受け止めたことであり、その人自身である、
などなど(表現はちょっと違ったかも…ですが!)

「カラフル」のように、人生は色んな色で彩られている。たくさんの色が混ざると黒に近づいてしまうけれど。そんなこともあるさ。

文を書く、という創造の過程を通して、関わる人がみんな好きになるというのは本当に素敵なことば。今世の中はSNSでも、日常生活の中でも、自分のフィルターを通して人を批判することが増えていますが、森絵都さんの創造フィルターを通すとみんな魅力的になるのです。そんな創造フィルターを誰もが持てたらいいな。

色んなことばに心を打たれたこのイベント、通学中の電車で知ったという息子は本当に偉かったと思います。「宇宙のみなしご」を読んだ頃には、君と一緒にこんなイベントに参加できるとは思ってもいなかったよ。

好きな本に出会える、という喜び。
文字から衝撃を受ける、という感動。

もっとそんな体験をしたいな。と感じる会でした。そういえば私のバースデーブックがなぜ「宇宙のみなしご」だったのか。それはその日が森絵都さんの誕生日だったから、だそうです。

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