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【住宅設計の失敗例】ことばには出ない「大事なこと」に気づけるのか

住宅設計は「要望を全て叶えること」が正しいことだと思っていた時期がありました。要望に対して120パーセントで答えた間取りをつくることが私は得意でもあり、難関な要望を叶えた間取りを作り上げた時は達成感を感じます。

ただ、要望というものは建築主の思い込みもあり、本当にそれが必要なのかどうか、よりも情報に左右されていることも多いのです。木造軸組工法は地震に弱いから2×4がいい、暖房形式は〇〇がいい、自然素材以外の物は使いたくない・・・など。コスト度外視でネットで見た情報や、ある住宅展示場で学んだ情報を鵜呑みにしていることもあります。

明らかに情報に左右されていることに関しては対話を重ねて取捨選択すればよいのですが、それが読み取れない「ことばには出てこないこと」が実はとても重要なことがあります。

【目次】
1. 言葉通りに真に受けると失敗する
2. 言葉にしたことと違うことを望んでいた。
3. 真面目な設計者こそ、失敗しがちな「要望通り」
4. そもそも、言葉通りに聞くことばかり学んできたのだ
5. 全てを聞きながらも「大事なことを」探る聞き方

言葉通りに真に受けると失敗する

以前、リノベーションの設計依頼を受けたときに要望をかなえる間取りのご提案をしました。そのときに、なんとなく奥様の顔が曇ったことが気になりました。「いかがでしょうか?」と聞くと、

「みゆうさんみたいな建築士さんに設計を頼んだら、魔法使いが魔法をかけてくれるような、そんな夢のような家が作れると思っていました。」

と言われました。驚きましたが、少しそんな答えが出るような気もしていました。なぜなら、要望通りに設計をしたのに、私自身も腑に落ちない部分があったからです。

言葉にしたことと違うことを望んでいた。

そのあと、奥様といろんな話をしました。設計者は魔法使いではないこと。そして、設計者ができるのは、建築主ご一家の家への思いを形にすること、だと。思いが分からなければ理想の家も作れない、ということ。

その対話の後は、いろんな本音を聞くことができて、やっと本当の要望が理解できました。

その奥様だけではありません。家を建てる、家をリノベーションするのには理由があり、その理由の一つに「あまり言葉にできない本音」を抱えていることもよくあるのです。

真面目な設計者こそ、失敗しがちな「要望通り」

私は時間をかけて設計をする設計者です。ハウスメーカーや工務店さんは融資や契約の関係もあり「〇日までに設計を決めないといけない」と設定するところが多いようで、そんなすぐに決められないとSNS上で相談を受けることがあります。

メーカーや工務店の仕様もあるでしょうし、できることできないこともあるでしょう。でも、要望通りにプランを作っているから、その間取りがベストです、と言われると確かにもやもやします。

客観的に間取りを見ると、それは「要望をかたちにした家」であることは間違いないけれど「暮らしやすさを考えた家ではない」こともあります。その収納は使いやすいか、そのリビングは使える空間があるか。部屋面積や条件だけではない、暮らしやすさを建築主は求めているけれども・・・。

そもそも、言葉通りに聞くことばかり学んできたのだ

そのような要望を聞き出す「対話」についてふと考えることがありました。

よく考えてみると、学校で学ぶことは「文面から正しく読み取ること」であると。他者の表現をどうとらえるかは人それぞれで、いろんな受け取り方があります。そして「言葉にしたこと」が言葉通りの意味をなさないこともあります。対話ってひとつのワードで相手を認識するのではなく、言葉を重ねてその真意をはかることなのかなと。

全てを聞きながらも「大事なことを」探る聞き方

実は要望を会話の中から全て受け止めるのは、一度お会いしただけでは難しく、設計を重ねていくなかで徐々に受け止めている気がします。
設計が全て整い、工事が始まる少し前に真意が見えることもあります。
だからこそ時間も手間もかかるので、効率化を図ってコストダウンを試みるハウスメーカーさんにはそこまでを望むのは酷なのかもしれませんね。

これからの時代、余剰住宅も増え、家を建てる軒数も減るでしょう。

家への価値も高まっていくのかもしれません。

これから設計の仕事をしたい、と思われる方にオススメする学びは、デザインのテクニックだけではなく、建築主の話をいかに聞き出すことができるか、という「聞き方」にあるのではないかなと思います。そして、家を建てたい人たちがもやもやとした気持ちを抱えずに済み、家づくりが楽しいものだと感じるようになってもらいたいです。

もちろん、みゆう設計室は、今までもこれからも、対話を重ねて家づくりをしていきたいと思っています。


※今回の記事の元になるコラム。

※noteに「#熟成下書き」というというお題がありまして、だいぶ前に寝かせていた下書き記事をまとめました。良い企画!!

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