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【読書記録】開かせていただき光栄です
年末年始、久しぶりにゆっくり本を読むことに。
今回読んだのは皆川博子さんの『開かせていただき光栄です』。
あらすじは…
舞台は18世紀ロンドン、解剖が神への冒涜とされ、外科医の社会的地位が低かった時代。
外科医ダニエルとその弟子たちは、解剖学が医学の進歩に繋がると信じ、屍体を違法に買い取っては解剖をする日々。
そんなダニエルの解剖教室の暖炉から、あるはずのない屍体が次々と現れる。屍体は誰なのか、どうして暖炉に隠されていたのか。その謎を追うというもの。
率直な感想は、もう文句なしに面白かった!
作者の皆川博子さんは幻想的な作風で知られる作家さんで御年95歳。この作品を書かれた時でも80歳を超えていたというから驚きです。
この作品に関しては、幻想的という訳ではなく、古き良き海外ミステリーを読んでいるような、アガサ・クリスティーやコナン・ドイルの作品を彷彿とさせる世界観でした。
(実際にはクリスティーやドイルより一世紀ほど前の設定ですが)
今回初めて知ったのが、作中で捜査をする治安判事という役職。
イギリスの警察組織というとスコットランドヤード(ロンドン警視庁)ですが、その創立は1829年。つまり、これはまだ警察組織が出来ていない頃の話。
当時は治安判事が地方の治安維持や裁判を行なっていました。ただし、その役職は名誉職で無給。
それゆえに、貴族や一部の特権階級の人たちが金や権力に物を言わせ、黒を白と言わせることが出来ました。
実際、主人公のひとりエドの父親は、無実の罪で裁判にかけられ有罪となり処刑、死後に冤罪であることが判明しています。同じく解剖教室の仲間クラレンスの弟は、貴族の馬車に轢き殺されたのに、裁判にもならず済まされます。
今でこそ警察組織があり、きちんとした捜査がされるのが当たり前ですが、読んでいてその理不尽さにやりきれない思いになりました。
時代設定のせいもあり、最初は少しとっつきにくい感じがありますが、中盤以降、事態は二転三転、どんどん引き込まれて一気読み。私自身がどんでん返しが好きなこともありますが、極上のミステリーでした。