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君の知らない君の詩

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自作。思い入れのある、手紙のような詩。 マガジンのタイトルは、ASKAさんのアルバム名のもじりです。
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#中原中也

また来ん春

また来ん春

また来ん春と人は言う
何を言おうか 早や春は
すでに私を追い越して
遠く届かぬ 夢の中

思えば桜の木の下で
君と出会った春の日に
花は俄に匂い立ち
世界は色づき息づいた

詰まらぬ話も 頷いて
笑顔をくれた 君は今
月の光の影の差す
森で息を潜めてる

この世の地獄というものを
なんにも知らぬ顔をして
また来ん春と 人は言う

また来ん春と 人は言う

追伸

中原中也氏の「また来ん春」という作

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餞

──ああ、こんなところにも生きる意味は芽生えるのか。

こんな痛みは、知らなかった。

私は今まで宙に浮いたように生きてきたが、これから先は一層そのように生きていくのだろう。

雲の上を歩くようにして。

ただ、心に炎を点しながら。

私にあるのは、おまけであり、残されただけの道。

それを消費するためだけに、足を動かし、歩を進める。

何かを目指す訳でもなく──。

「また来ん春」

そんな言葉

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