文字を持たなかった昭和 六十七(田起こし)
明日からゴールデンウィーク。いつぞやのゴールデンウィークに北陸を訪れた際、見渡す限りの田んぼが水を湛えて田植えの準備が進み、一部にはすでに田植えされた田んぼがあるのを見かけて「もう田植え?」と驚いた。気温が低めの地方では、人手の確保を兼ね連休を利用して早めに田植えするのかな、と思ったものだ。
さて、母ミヨ子たちの農作業である。
稲刈りに合わせて水を抜いてあった田んぼには、春になるとレンゲソウが一面に咲く。咲き終わると田起こしが始まる。水分が抜けて固くなった田んぼの土を耕して空気を入れるのだ。空気が入ることで空中の窒素が取り込まれ、土中の栄養が増える(らしい)。咲き終わったレンゲソウは、田んぼの土に鋤きこまれて有機肥料の役目をする(これは知っていた)。
厳密に言えば、田起こしにもいくつかの段階があるようだが、土の塊の大きさを徐々に小さくしていくために複数回起こすことなど、子供のころは知る由もなかった。いや、そこまでの興味がなかったと言える。この項を書くためにネットで確認し知った次第で、恥ずかしい限りだ。
作業が機械化されていないころは人の手で鋤を打ったり、牛を飼っている家は牛に鋤を引かせたりした。よその田んぼで牛が鋤を引く光景はわたしも辛うじて覚えている。ミヨ子の家では、耕運機を購入して以降、田畑を耕すのは夫の二夫(つぎお)が中心になった。
とはいえ機械で全ての作業をまかなえるわけではない。田んぼの畦近くや田んぼの隅など、耕運機を入れづらい部分は、やはり人の手で補うしかなかった。そしてその細かい作業の多くはミヨ子が担当した。
《おもな参考》
農林水産省 >田おこし・代かき