つぶやき 防災週間(おまけ)
「つぶやき 防災週間」(前編・後編)へのおまけである。
近所の、更地を利用した臨時駐車場で、南米出身と思しき女性が、そこに生えている草の若芽の部分を熱心に摘んでいた、という話をした。
彼女が摘んでいた植物が何なのかが気になり、数日後わたしは再び「現場」を訪れた。
まだ水たまりは残っているが、ぬかるんでいるほどでもない。駐車している車は多くないし、人影もない。彼女が前かがみになって摘んでいた草のところまで、わたしは歩みを進めた。
高さにして1メートルほど伸び、根元から何本にも枝分かれしたその植物は、元気に繁っていた。水たまりのところには同じくらいの背丈のものが2本ほどあり、その2本だけで「盛大に繁っている」感じがあった。
近寄ると、彼女が摘んでいたと思われる若芽やその周囲の部分は、明らかに摘み取った跡があった。それも無数に、と言っていいほどたくさん。
数日前に摘まれたであろう部分に鼻を近づけてみたが、ハーブのようなにおいはしなかった。試しに柔らかそうな葉っぱを摘み取って嗅いでもみたが、すくなくともわたしにとっては「それほど癖の強くない草」の匂いのように思えた。どこかで嗅いだような、でもどこにでもあるような、という感じだった。
誰もいないのをいいことに、駐車場の中を少し歩いた。水たまり以外のところにもこの植物は繁っていて、かつ、どれも「若芽やその周辺の葉っぱを摘んだ」跡がたくさんあった。つまり、彼女(とその一味?)は、しばしばここで食材調達をしているのだ。
駐車場と歩道はロープで仕切られているだけで、通行人、そして通過する車からも丸見えである。そんなに長居するつもりはなかったからそれほど気後れはしなかったが、大きめのレジ袋がいっぱいになるまで草(の若葉)を摘み続けるのは、けっこう度胸がいると思う。
もっとも、言葉も習慣も違う国で、母国にいるときと同じような行動をとることは、さほど気を使うことでもないかもしれない。そもそも日本人は、周りの人がすることに見て見ぬふりをすることが好きだ。かくいうわたしも、見て見ぬふりをしたあとで、犯行現場の確認のように、この駐車場に戻ってきたのだから。
それにしてもこの草はなんだろう? 今日び、写真をアップロードすればたちまちその正体を検索してくれる植物図鑑アプリもあるようだが、この1回のために慣れない作業をするのも面倒で、やめた。
トップ部分の写真がその「草」です。