本当のさよなら
別れの涙。それは、ある程度の時間を経て、訪れることもある。別れた人の姿、生き方、愛情が実感できたとき、それは自然に流れ落ちるのかもしれない。そのとき、人は、本当のさよならをすることができるように思う、過去を思い出として、引き出しに納めることができるのではないか。
「冬の山ひとり」
吐く息白く 冬の山
歩く 峠の道 ひとり
むかし二人が 教えてくれた
見晴台へ 石畳
遠くに 白き アルプスが
オレンジ色に 染まる 夕暮れ
思い出す旅 冬の山
歩く 峠の道 ひとり
父と母ゆく 後ろを追った
なにげない日々 宝物
戻って みたい あの時に
想い寄せては 滲む 稜線
天に通じる 冬の山
歩く 峠の道 ひとり
ひかり始める 星にたずねた
二人の居場所 いずこかと
涙も 枯れた この今を
強く生きよう そして さよなら
終