グテーレス事務総長が考える国連憲章99条の発動と、ニュルンベルク裁判の罪状はイスラエルに当てはまる
ガザの人道状況の悪化を受けて国連のグテーレス事務総長は国連憲章第99条に基づき、国連安保理に対して停戦の宣言を行うように要請した。国連憲章第99条は「事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる」というものだ。
破壊力の大きな戦闘機や戦車を用いた多くの市民を巻き添えにする攻撃は、不必要で過剰ともいえ、それは防衛ではなく報復や懲罰的性格をもつもので、国際法では不当な武力行使となる。実際、ガザ・パレスチナ住民の犠牲者数はイスラエル人に比べると、15倍近くも多い。21年3月に国際刑事裁判所は、2014年夏のイスラエルによるガザでの軍事行動を戦争犯罪の疑いで捜査することを明らかにした。2014年夏のパレスチナ人犠牲者は2300人ぐらいで、今回の犠牲者の8分の1程度、今回の攻撃はそれよりもはるかに規模の大きな国際法違反だ。
国連憲章では武力による土地の併合は認められていないのに、イスラエルは占領地で次から次と入植地を拡大している。イスラエルは占領地である東エルサレムで入植地をあらたに拡大する計画を先月末にも明らかにした。
第二次世界大戦後に行われたニュルンベルク裁判では、IMT(国際軍事裁判所)憲章第6条に基づき、ナチス・ドイツの被告たちは、平和に対する犯罪(数々の国際条約に違反する侵略戦争の計画および遂行)、また人道に対する犯罪(すなわち、戦前および戦中の一般市民に対する殺人、殺戮、奴隷化、移送、その他の非人道的な行為、または軍事裁判の所轄圏内で行われた犯罪に伴うまたは関連した政治、人種、または宗教に基づく迫害)などで裁かれた。これらの罪状は、ガザ攻撃を推進するイスラエルのネタニヤフ首相にほとんど当てはまる。
2019年7月にナチスのホロコーストを生き抜いた9人のユダヤ人たちが、ナチズムとイスラエルのナショナリズムであるシオニズムを比較したことがある。
記事の中では、イスラエルがパレスチナ人たちを分離壁やガザ地区の中に閉じ込めるのは、ナチスがポーランドでゲットーの中にユダヤ人を閉じ込めたのと同様なやり方である、イスラエルはパレスチナの子供たちを政治犯として刑務所で拘束しているが、ナチスが子どもまで収容所に送り込んだことを思い出すと語る人もいた。また、イスラエルの生存を守るためにという理由でジェット戦闘機やレーザー誘導爆弾など近代的兵器をもってパレスチナ人を殺害すること決して許されないという主張もあった。
シオニズムは、ユダヤ人たちにヨーロッパ諸国の国民になれないと言ってパレスチナへの移住を勧めた。ナチスのニュルンベルク法もまたユダヤ人たちはドイツ国民ではないと言ってパレスチナなど国外移住を求めた。ナチズムとシオニズムは本質的には同様の思想であると考えるホロコースト生存者もいる。
イスラエルは、22年3月、ヨルダン川西岸やガザというパレスチナ出身者がイスラエル市民と婚姻を通じて、イスラエルの居住権、市民権を取得する(イスラエルに帰化する)ことを禁止する法案を成立させた。きわめて人種的性格が強い法律とパレスチナ人をはじめ国際社会から批判されている。
1935年9月に成立したナチス・ドイツのニュルンベルク法は、ユダヤ人がドイツ人の血を汚染することを前提にドイツ民族の純潔を守るための人種差別法で、ユダヤ人とドイツ国籍者、民族的にドイツ人との婚姻を禁止するものだったが、22年3月に成立したイスラエルの婚姻法はナチスのニュルンベルク法を彷彿させるものだ。
イスラエルではこのように人種的傾向が強まっているが、昨年11月に行われた総選挙結果もイスラエルの人種的傾向を顕著に表すことになった。
極右政党「ユダヤの力」党首のベン・グヴィール国内治安相は、イスラエル国内のパレスチナ系イスラエル人からイスラエルの市民権をはく奪して、イスラエル国家への忠誠が見られないと判断された場合にはイスラエルから追放するという民族浄化措置を提唱している。パレスチナ系イスラエル人の国会議員を「第5列(スパイ)」と形容し、パレスチナ系イスラエル人を放逐することを奨励する担当省を設立したいと述べている。彼はパレスチナ系市民の「最終的解決」を見つけることに躍起となっているようだ。「最終的解決」という言葉はナチス・ドイツがユダヤ人の絶滅について用いた言葉だった。
イスラエルは世界史の流れに逆行するようにファシズム化し、いつか来た道に戻ろうとしている。日本はアラブ連盟やヨーロッパ諸国などと協議しながら、イスラエルの国際法違反の行為には明確に「NO」の声を上げるべきだ。日本の外務省はイスラエルの入植地拡大をずっと批判してきたが、日本政府は国際社会を主導するようにイスラエルの国際法違反の行為を非難すべきで、それは本当の意味で国際社会の日本への信頼を高めることにもなるだろう。