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アフガニスタンに残された米国製兵器がパレスチナの武装集団に
米国のバイデン大統領は20日の選挙イベントで日本の防衛費増額、韓国との関係改善、ウクライナ支援をはじめとする欧州への関与など日本の態度を変えたと誇った。岸田首相は7月にNATO首脳会議に出席する予定だが、日本はますます欧米の軍事同盟に傾斜している。ウクライナ戦争が終わってもロシアとの関係修復や北方領土返還交渉はいっそう遠のき、中国の関係改善も容易ではなくなった印象だ。米国に従順な日本外交は、米国で誰が大統領になっても誇らしく語られるのだろう。
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21世紀に入って小泉政権はイラク戦争を無条件に支持し、安倍政権は憲法が禁ずる集団的自衛権を米国との間に確立し、また岸田政権はNATOにも加盟しかねない印象を与えている。
岸田首相はNATO首脳会議に合わせて中東ではサウジアラビア、UAE、カタールを訪問するそうだが、いずれもエネルギーの輸入を介して日本と良好な関係にある国ばかりだ。イランと米国の核合意再建の調停などを行ったほうが、日本外交の存在感を世界にアピールすることになると思うが、米国に遠慮して日本の対イラン外交は停滞している。
先週、パキスタンのサマア通信は米国がアフガニスタンに供与した武器がパレスチナの武装集団に移転されていると伝えた。同様のニュースは「ニューズウィーク」もイスラエルの軍関係者の発言として報じている。米軍がアフガニスタンに残した武器は、同国の周辺で活動するTTP(パキスタン・タリバン運動)、IS(イスラム国)、「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」などの武装集団を刺激することになる。
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米国のウクライナへの武器移転が米国の軍需産業に莫大な利益をもたらすことは言うまでもない。ロシア軍のウクライナ侵攻は昨年2月に始まったが、ロシア軍は一昨年3月から軍隊をウクライナ国境に集結させている。それでも米国にはロシアと外交を行う姿勢がなかったのは軍需産業の利益を考えてのことだったのかもしれない。
昨年12月末までに米国がウクライナに供与した武器の総額は200億ドル(2兆8400億円)にも及ぶ。その額は2021年に米国が武器移転したアフガニスタン、イスラエル、エジプトなどトップから12位までの国々への武器援助の総額の実に倍に上る。EUもウクライナに対して同時期50億ドル(7100億円)の支援を行い、英国のそれは57億ドル(8100億円)だった。いかに米国のウクライナへの武器移転が突出しているかがわかる。EUのウクライナへの武器支援は非加盟国のそれとしては史上最高額となっている。(AnalystNews May 17, 2023)
米国の国防総省から議会に提出された報告書(2022年3月付)によれば米軍が21年8月までにアフガニスタンに駐留していた16年間、アフガン政府軍に移転した武器のうち70億ドル(9900億円)相当をアフガニスタンに残した。そのほとんどが米国が敵対していたタリバンの手に渡ったことになり、さらにこうした武器は周辺の武装勢力に移転される可能性がある。米国がアフガニスタン国軍に提供した96、000台の軍用車両のうち40、000台がアフガニスタンに残り、その中には12、000台の軍用ハンヴィーがあるという。
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ちなみに日本の23年度の防衛費は、22年度より1兆4000億円余り上積みされ、過去最大の6兆8000億円余りとなったが、米国の対ウクライナ軍事支援はその半分近い額だ。最近、自動車の販売店に行くと、展示車が異様に少ないが、セールスの担当者に尋ねると半導体不足で自動車の生産が滞っているのだそうだ。しかし、自動車業界は防衛省との契約で業績を上げているとも語っていた。日本でも米国の軍産複合体のような存在があることを実感する思いだったが、過日も書いた通り防衛費を倍増しても武器・弾薬を扱う自衛隊員がいなければ「宝の持ち腐れ」となる。自衛隊員の待遇改善を考えたり、憲法を盾に海外派遣を行わないと政府が強調したりして隊員の安全を保障して自衛隊員の定員割れを防ぐほうが日本の防衛力増強になると思うが、岸田政権の防衛政策はバイデン政権に防衛費の大幅増を誇りたいのか、まったくの「主客転倒」状態に陥っている。
※アイキャッチ画像は米軍が放棄していった軍用ハンヴィーに乗るタリバン兵士たち