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自らの投獄を免れるために戦争を継続するネタニヤフと、ネタニヤフを止められない米国バイデン政権

 イスラエルはその帝国主義的な戦争をレバノンにまで拡大し、レバノンの首都ベイルートではイスラエル軍の空爆による破壊が進められ、ベイルート国際空港の近くでも「ヒズボラの資金源」を標的に攻撃を行っている。

ワシントンDCで 「ネタニヤフは戦争犯罪人」 https://www.foxnews.com/politics/anti-israel-agitators-descend-dc-ahead-israeli-pm-netanyahus-address-congress

 ネタニヤフ首相がガザ、レバノンで戦争を継続するのは彼の個人的な要因が大きい。ボブ・ウッドワードの近刊などではバイデン大統領はネタニヤフ首相の不誠実ぶりに怒っていることが伝えられ、バイデン大統領はネタニヤフの戦争継続の意図が贈収賄など汚職に対する彼の有罪判決による投獄を避けるためのものであることを認識しているものの、それでもバイデン大統領はイスラエルに資金や武器を提供し続けている。自らの権力の保持のために無辜の人々を殺害するのは「ひどい」と言わざるを得ない。その殺害を手助けすることも同様に「ひどい」。

イスラエル軍の攻撃を受けるベイルート https://x.com/sahouraxo

 第二次中東戦争は1956年10月29日から11月6日にかけて行われ、米国のドワイト・アイゼンハワー大統領は、戦争がソ連の影響力の中東への浸透を招きかねないとして、スエズ運河を国有化したエジプトに戦争をしかけたイギリス、フランス、イスラエルにIMF融資の停止をちらつかせるなど圧力をかけて撤退させた。この三国を撤退させたような勇気がバイデン大統領には見られない。アイゼンハワーが三国に圧力をかけたのは二期目をかけた大統領選挙の直前で、現在とほぼ同様な時期だったが、それでもアイゼンハワーはイスラエルなど三国の撤退を実現させた。戦争には敗れたが、ナセルとエジプトはスエズ危機によって大きな名声を得ることになった。スエズ運河の国有化は維持され、その収益はすべてエジプトの国庫に入るようになった。

https://satoru-world.net/2022/10/16/20ce/

 バイデン大統領がイスラエルに強い圧力をかけられない背景の一つには、大統領選挙が拮抗していてドナルド・トランプが大統領になることへの脅威がある。アイゼンハワーは、二期目の大統領選挙を前にしてユダヤ票をほとんど手に入れることが判明し、その再選は確実視されていた。バイデン大統領にはネタニヤフを批判することで、ユダヤ票や、キリスト教福音派のシオニストの票を失いたくない意向がある。

ニュールンベルク裁判 本来ならばネタニヤフもこうやって裁くべきだ 強制収容所の運営に責任をもつオズヴァルト・ポールは「人道に背く罪」や「戦争犯罪」で有罪となり死刑を宣告された。 Oswald Ludwig Pohl (1892~1951)

 ネタニヤフ首相は、こうした米国の事情を見て、米国の大統領選挙前に既成事実化を一挙に進め、大イスラエルの拡張主義を実現したい意向のようだ。ガザ北部の占領を確実にし、またレバノン南部もイスラエル支配に置きたいに違いない。ハマスとヒズボラに最大限の損害を与えることによって、少なくともイスラエルに対する軍事的脅威を減ずることになる緩衝地帯をガザ北部やレバノン南部に築きたい。また、ネタニヤフはトランプが大統領になることを切実に望んでいる。トランプが大統領になれば、ネタニヤフの意図する軍事行動をほぼフリーハンドに実行することができるのだが、それは中東地域をさらなる混乱に陥れることになる。

ネタニヤフ夫妻 怖い

 ネタニヤフはハマスの最高指導者シンワルを殺害することによって、和平交渉の相手がいないとますます主張するようになるだろう。ネタニヤフの戦争の目的は、パレスチナの脱植民地化の闘争を終わらせ、パレスチナ人から主権をもつことへの希望を奪うことにある。ネタニヤフはパレスチナ自治政府をイスラエルの行政の下請けのような存在にして、交渉相手としての威厳や尊厳を奪い、カタールがガザに資金援助することを黙認することで、ハマスに力を与え、パレスチナの分断統治を図ってきた。

イスラエル軍がベイルート南部の病院近くを空爆 子ども含む18人死亡 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1505110?display=1

 ネタニヤフの関心は、彼の汚職による投獄を防ぐために、“戦争首相”としての地位にとどまることにある。シンワルを殺害したように、ハマスの指導者を次から次へと殺害して、ガザにイスラエルの入植地を建設し、さらにヨルダン川西岸の入植地も拡張するという彼の政党リクードのイデオロギーである修正シオニズム(大イスラエル主義)の目標の達成をネタニヤフは目指している。むろん、それは重大な戦争犯罪に相当する行為だが、国際刑事裁判所はロシアのプーチン大統領に比べると逮捕状の発行が遅いが(逮捕状は請求されているが)、ネタニヤフに早急に逮捕状を発行することも彼の戦争を止める一つの手立てにはなるだろう。

表紙の画像は「子ども殺しのネタニヤフを逮捕せよ」


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