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映画「戦場のピアニスト」のと重なる現在のガザのイメージ

 映画「戦場のピアニスト」で、主人公のピアニスト・シュピルマンが破壊を極めたワルシャワの街を泣きながら徘徊する様子と現在のガザを歩く女性の姿が重なる動画がネットにアップされている。

「戦場のピアニスト」とガザ(下)
https://www.instagram.com/humanmovieteam/reel/C6Q2xNqC3Pd/

 映画「戦場のピアニスト」(監督: ロマン・ポランスキー、2003年)は、ポーランドのユダヤ人、ウワディスワフ・シュピルマンのナチス占領下での体験を描いたものだ。彼は、ワルシャワの富裕なユダヤ人家庭の出身で、父母、姉妹、弟の家族は高級なアパートに住んでいた。占領初期は、秀でた芸術家の自負から自らの危険を切実なものとして受け止めていなかった。彼はレストランのピアノ奏者の職も得た。しかし、ドイツのポーランド・ユダヤ人に対する扱いが次第に厳格になっていくと、シュピルマンは、ドイツ軍の迫害、死への恐怖を逃れて友人のアパートで潜伏生活を送るようになる。さらにその友人が行方不明になると、廃屋から廃屋を渡り歩く逃亡生活を余儀なくされた。「戦場のピアニスト」は、シュピルマンの回想録に基づくもので、初版は1946年に出されたが、共産党政府は本の販売を差し止めた。

『戦場のピアニスト』 ウワディスワフ・シュピルマンウワディスワフ シュピルマン(著/文)佐藤 泰一サトウ タイイチ(翻訳) 発行:春秋社 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784393495421

 シュピルマンは1911年にポーランドに生まれ、ピアニストの訓練をワルシャワで、また1920年代にはドイツで受けた。ワイマール共和国下のドイツは音楽の研さんに適していた。ベルリン芸術アカデミーでフランツ・シュレッカーに師事してピアノと作曲を学んだ。1933年にナチス政権が成立すると、ワルシャワの家族の元に帰ることになり、ポーランド放送のピアニストとして働いた。彼は多くのポピュラー音楽やクラシックの作曲を行うようになり、またピアニストとしても名声を馳せるようになった。

 しかし、1939年9月にドイツ軍がポーランドに侵攻すると、シュピルマンの家庭もワルシャワ・ゲットーに送り込まれた。彼は、家族を餓えから守るために、「カフェ・ノワチェスナ(Café Nowaczesna)」でピアノの演奏を始めたが、ここはナチスの将校やその協力者たちの溜り場だった。ユダヤ人たちの協力者たちの様子を見てシュピルマンは、「この機会に二つの幻影を失った。一つはユダヤ人の連帯であり、またユダヤ人の音楽性に対する信頼である。」と語っている。

 さらにシュピルマンは他のカフェやナイトクラブを渡り歩いた。しかし、こうした努力も空しく彼の家族はポーランド東部のトレブリンカ強制収容所に送られることになる。シュピルマンは、ポーランドではよく知られる音楽家だったが、ポランスキー監督の映画が上映され、また彼の伝記がドイツ語、英語に訳されるまでは欧米諸国ではあまり知られない存在だった。

トレブリンカ絶滅収容所跡 https://www.viator.com/ja-JP/tours/Warsaw/Treblinka-extermination-camp-half-day-tour-from-Warsaw/d528-22434P15

 アメリカのユダヤ系作家、公民権運動家のレニ・ブレンナーは1983年に『Zionism in the Age of the Dictators(邦題:ファシズム時代のシオニズム)』を著したが、その中でハンガリーの「シオニスト救済委員会」の指導者だったルドルフ・キャスツナー(Rudolf Kasztner)は、ナチスと協力していたことを明らかにしている。彼は、1944年から45年にかけて、ハンガリーのユダヤ人の将来についてナチスと交渉を行っていた。1957年にキャッツナーは元シン・ベト(イスラエルの国内諜報機関)のエージェントによって殺害された。この背景にはシオニストとナチスの過去の事実が発覚することを恐れたイスラエル政府の意図があったとされる。ブレナーは、ナチスとシオニズムのイデオロギーの類似性がこの協力の理由としてあると述べている。ナチスもシオニズムも、ナショナリズムの共通項として、血と土地を重視するものだ。

アマゾンより

 パレスチナ占領地に関する独立国際調査委員会のナビ・ピレー委員長は19日、イスラエルはガザの人々を強制的に排除するために、強制的に移動させるという明確な意図をもっていると述べた。ピレー委員長によれば、イスラエルはガザ北部から南部に人々を強制移動させ、その南部を意図的に攻撃した。また、調査委員会のクリス・シドティ委員は、「イスラエル軍は世界で最も犯罪的な軍隊の一つだ」と述べている。シオニズムはユダヤ人の社会正義に関する幻影を崩すかのようだ。



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