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イマーシブな同窓会のつくりかた

こんにちは。建築家のケンシロウです。
皆は同窓会に行ったことはあるだろうか。

同窓会はかなり没入感があるイベントである。
日常となった仕事から離れて、学生生活を送った仲間たちとの世界に浸り込めるのだから。

今回は、そんな同窓会が、さらに没入感のある「イマーシブな同窓会」となるように、とあるイベントを企画した。
結果、多くの参加者から感謝を述べられ、心から開催してよかったと思えた。

同窓会の様子。来場者撮影。

そんな「イマーシブな同窓会」のつくり方をシェアできればと思う。

1 / 世界観をつくる


あなたはある時同窓会をひらこうと思った。
そんなとき、まずすることはこれだ。

イベントで何より大事なのは、世界観とコンセプトである。
人は、その世界観に没入するためにイベントに参加しているといっても過言ではない。

世界観を表すために、今回のイベントは「第二成人式」と名付けた。

コンセプトは、
「成人からの10年を共有して、新たなつながりをつくり、30代をよりよく生きること」である。

この世界観とコンセプトを直感的に伝えるために、参加候補者へ向けての招待状をつくった。

実際に送付した招待状。スマホのサイズぴったりになるように制作した。

招待状には世界観を伝えることに加え、参加人数の目安を計るという重要な役割がある。日付と参加費は具体的に決め、会場は参加人数に基づいて決めるため大まかな場所のみ示しておく。

今回は、高校の同期会であり、卒業以降連絡手段が途絶えてしまっている人が大勢いた。
そこで、招待状を電子とし、友達から友達に送ってもらう方式で招待を行った。
世代が同じ方は、チェーンメール方式といえばわかりやすいだろうか。
ただし、内容や文面は迷惑メールとならないよう細心の注意を払った。
特に気をつけて良かったと思うことはこれだ。

同窓会を執り行う場合、参加候補者の多くが友人ということもあり、友達口調で連絡をしたくなる気持ちになる。

しかし、その呼びかけ方で来てくれるのは「仲が良い人」のみなのだ。
参加候補者の中で幹事との「仲良さ」に線引きをしてしまい、自分を排除してしまう可能性が高い。
つまり、内輪の仲にアウェーで乗り込みたくないという気持ちが働く。

友達言葉は「友達」と「友達以外」を区別して友達との友情を深めるものと捉えられる。

招待の文面とと体裁を固くすることで、かえって全ての人にひらかれている印象となるよう気をつけた。

回答にはGoogleフォームを用いると便利だ。
同級生の中でも、同窓会に来る人は
①旧友に会いたい
②仕事のつながりをつくりたい
③婚活したい

の3択かと考えていたので、回答の中に営業したいことを記入できる欄をつくった。
会が終わった後に話を聞くに、③の人はあまりいなそうだったが。

2 / 会場をコーディネートする


招待状への返信で大まかな参加者の人数の目安が把握できたら、
次は会場を探していく。
「会場ベストサーチ」などの検索サイトを用いると、条件に合った会場が検索しやすい。

日程を年末年始に予定している場合は、予約が埋まりやすいため早めの連絡が必要だ。
今回は約3ヶ月前に会場を決定した。

会場が決まれば、会場のレイアウトを担当者と相談していく。
立食にするのか、着席にするのかは式の雰囲気や進行に大きく影響するため早めに決めておきたい。

また、子連れの参加者はいるか、会の時間は昼なのか夜なのかを配慮する必要がある場合もある。

レイアウトが決まれば、音環境や光環境について決めていく。
これらは、「五感的な没入感」を生み出すための重要な要素となる。

今回は、光環境は会場設備の最大光量の約6割を会における最大とするようお願いし、やや暗めの会場づくりをした。

やや暗い空間は、自然と話す際の距離を近づけ親密な仲がつくりやすくなると考えたためだ。

音環境については、指定の音楽を流したい場合はCDを用意する必要がある場合が多い。
今回は各フェーズでの雰囲気のみを伝達し、会場で保有しているBGMを流してもらった。

会場づくりで今回もっとも成功したことは、
「服装の色味を指定」
したことだ。
カジュアルフォーマルな服装で着てもらうようメールにて伝達したうえで、
「より楽しむために、服装のどこかに緑色を入れてください」
とお願いした。

そうすることで、人が入った状態の会場全体の色味が統一される。
なんとなく、“仲間”感がでるのだ。
(ドレス、ピアス、靴下のイラスト)

緑のドレスで来てくれた方、緑のピアスの方、緑の靴下を直前に買ってきてくれた方、校章バッチをつけてきた方など、皆さんかなり協力してくれた。

校章の色を採用し、緑色とした。
集合写真をみると、なんとなく色味が統一されていることがわかる。

緑、青緑、緑にあう茶色などの色味でなんとなく統一されている

3 / 没入感のある余興をつくる


さて、ここまでの準備で、「同窓会」としての体裁はつくられた。
ここからは、さらに深い没入体験をつくるための試みとなる。

①オープニングムービー

まず、「日常の世界から非日常の世界へとつれてくる」イニシエーション、通過儀礼が必要となる。

今回はオープニングムービーを作成した。

英語音声に字幕をつけて伝えたいことを表現した。

ムービー自体は、映像ディレクターである同級生に依頼し、作成してもらった。
会のコンセプトを伝えたうえで、それを達成するため来場者に意識してもらいたいポイントを伝達。

  1. 話しかけること

  2. 撮影すること

  3. 忘れないこと

というのが今回のルール設定だ。

要点をまとめることで来場者へ期待する行動を促す

この映像をみた元イベンターの同級生は、「この作り込みをみたら、“ちゃんと参加しよう”という気持ちになった。」と声をかけてくれた。

②来場者の登壇

没入感をつくるうえで重要なこととして、
「提供側」と「参加側」の境界を無くすことが挙げられる。

そこで、今回は“来場者に登壇してもらう”という選択肢をとった。
結婚式でよく用いられる手法だが、やはり効果的だ。

「乾杯の発声」をしてくれた同級生は、自分が現在スポーツインストラクターであることを説明したうえで、乾杯のため前に突き出した盃と腕を維持させたまま、長時間話すという最高の幕開けをしてくれた。

「それでは皆さん、このように盃を前に突き出してください」

司会の「もう耐えられないです!(本気)」と同時に乾杯が行われた。

「第二成人式代表者のことば」をお願いした同級生は、自身の半生を振り返りつつ、「お互い、第二成人として、頑張りましょう」
と言葉を締め括り、この会が「ただの同窓会」ではなく「第二成人式」であるということを皆に再認識させてくれた。

「第二成人代表者のことば」の様子。参加者撮影

さらに、歓談の時間の間、司会が来場者にインタビューをしてまわり、他の来場者はそれをラジオBGM的に楽しむという時間も設けた。 
いつでも自分が登壇する可能性があるのだ。

司会者が来場者にインタビューをしてまわる。歓談しながら、回答者の現在地を知れる。

③余興

さて、そのような「第4の壁」崩しを十分にした後、余興を用意した。
余興にも目的を設定すると良い。

今回はルールのひとつでもある、
①話しかけること
を達成しやすくすることを余興の目的
とした。

同窓会にきても、結局もともと仲の良かった人としか話さない、ということがおきがちだ。
それはそうだ。なぜなら仲がいいことを互いに承知しているから。
しかし、考えてみてほしい。仲がいい友人とは、このような会がなくても会う。

折角なので、いままであまり話さなかった人とも仲良くなってほしい。
私自身も、会を開く直前に卒業以来会った友人と意気投合し、高校時代にもっと仲良くしていれば、と思っていた。

そんな中用意した余興は次のようなものだ。
ひとつめのゲームに関しては、この記事を読んでいるあなたも参加できるので、紙とペンが近くにあったら是非やってみてほしい。

時間を測ることが大事。よーいスタート!
(スクロールすると答えがでます)







答えはこちら。意外とある。私の身の回りの個人平均は5個程度。

一つ目のゲームでアイデアを出し合って会話することを促し、

二つ目のゲームで言葉以外のコミュニケーションを使って親密性を高め、

「声を出さずに」「手を使わずに」行う、というゲーム。


三つ目のゲームで相談・決定というチームワークを即席で発揮してもらった。

最後は運ゲーム。

ゲームには時間制限があり、焦ることで「行動への没入」がなされる。
優勝賞品は、シンプルに一万円にした。
「これを使って皆んなでこの後どこかへ行ってね」という意味があったが、どのように使われたのだろうか。

④”げーむますたー”の登場

突然、スクリーンにノイズが走る。

ざざー……
会場がどよめき、司会が困惑する

スクリーンに映し出されるのは、校章のマークが入った覆面をした男。
そして言う。

なにやらデスゲームのような雰囲気。
来場者の1人が怒声をあげた。

「なにがゲームだ!!こっちは12年ぶりに集まっているんだぞ!!
オレはゲームなんかに参加しないぞ!!」

どこからかサングラスの男が現れ、抗議した来場者を羽交締めにして会場から退場させる。

「やめろッ!!離せッ!!うわッ!!ウワーーー!!」

会場はどよめきながらも、ゲームマスターである「ますたーちゃん」の言うことに従うことになる…

という催しも用意した。
これがとにかくやりたかった。
抗議した男は事前に手配した役者であり、余興の直前に会場に紛れ込んでもらった。
司会を務める同級生が映像と台詞の掛け合いを行なっていく。

敗者には強制退場という"制裁"を加えると参加者を脅す、ますたーちゃん

「参加者が嫌な思いをしないデスゲーム」をひらきたかった。
オチとして、「げーむますたーの記憶の扉がひらく」というものを用意した。
言っている意味がわからないと思うので下記の一連をみてほしい。

数字を使ってグループをつくるというゲームをますたーちゃんが説明。
敗者には厳しい制裁が待っているとのこと
しかし、司会に「グループをつくりたいのはお前じゃないのか!?」と指摘される
ますたーちゃん「あ、頭が痛い、、記憶の扉が開く、、」
「無いはずの記憶」が展開される
♪「時を超えて〜君を愛せるか〜」
司会「ますたーちゃんもこっちに来てみんなと遊ぼうよ!」
ますたーちゃんが会場に現れゲーム敗者たちと記念写真。

会場は「記憶の扉」の映像が一番盛り上がっていた。

⑤思い出ムービー

少しの歓談を挟み、会を締めくくるムービーを流す。
こちらは、おふざけ無しのムービー。BGMは校歌。

今回は卒業アルバムから写真をとってきたが、
事前に参加者から写真を募集してもよいかもしれない。
これをもって、会は締められた。

これらの進行をスムーズに進めるためには、
会場とものごとの進行がおきるきっかけを事前共有しておく必要がある。
進行に合わせて、動画の再生やスライドの切り替えをしつつ、光環境、音環境を変化させ、会の環境をつくっていく。

会場に共有したタイムスケジュール。時間の流れをコントロールする。

4 / 二次会をつくる


ここまで会をつくりこんだなら、本番の会では、ムービーや余興が多くなり歓談の時間があまりとれなくなる。

その役割は、二次会に回そう。
ただ、見出しと異なるが今回は「二次会はつくらない」を選択した。
会で仲良くなった人々で自由に設定してもらいたかったからだ。

ただし、誘導はした。
同級生の1人が近隣で飲食店を営んでいるため、その宣伝を行ったのだ。

結果、来場者の2/3ほどが誘導先の店で二次会に参加した。
さらにその2/3は終電を逃していた。

超満員の二次会

1人の同級生の、「これだけの人数が終電を逃すことを選択したのなら、この会は成功なんじゃないか」
という言葉には救われた。

二次会には卒アルを持っていくと話のタネになり盛り上がる。

ちなみに、二次会として利用した「海らふ屋 すすきの店」は道民である私が胸を張っておすすめできるほど寿司が美味い。

5 / 記録に残す


私の師匠筋にあたる建築家の西田司さんに良く言われたこと。
「イベントものは記録写真が全て」

これはその通りだと思う。100年ほど存在する建築と異なり、
イベントは数時間〜数日しか存在しない。

そのため、記録写真を残すための手配が必要となる。

まず、カメラマンの手配だ。来場者とは別に、カメラが得意な友人やプロに依頼するとよい。

今回は、来場者のライブ感も大事にしていたため、会場に「使い切りフィルムカメラ」を置いておき、1人一枚どこかで撮影してもらった。

本記事のように、noteなどで記録を取ると、写真からはわからない内容も残せるだろう。
これらを行う前に、来場者に「撮影許可」をとることも忘れないようにしたい。

今回は、事前にメールにて全員に確認した。

来場者による使い切りフィルムカメラの写真。
スマホの写真とは異なる趣があり、今回の世界観にピッタリだった。

失敗と学び


最後に、今回の企画において失敗した点と、そこから得た学びを記す。
同窓会や第二成人式、デスゲームを開催予定の方は是非参考にしてほしい。

失敗① 予約人数は直前に変動することを見越して予約するべき

招待状の回答を人数の目安としつつも、当日が近づくにつれ、
「仕事の都合がつかなくなった」や、「やはり参加できそうだ」など具体的なスケジュールの確定とともに参加人数が変動していく。

そのことを考慮はしていたものの、具体的な対策を立てきれなかったことが一つ目の失敗だ。
最終回答締切日の早めの告知と、リマインドをより行うべきであった。

失敗② カメラ機材は事前に動作確認するべき

今回、カメラマンを友人に依頼していたが、直前になって機材の故障が発覚してしまった。
結果、スマホで記録撮影を行う方式に切り替えることとなった。(それにより動画記録を残すことができたが)
プロに依頼しない場合は、機材の事前確認は必須であった。

失敗③ 余興のゲーム時間の設定

今回、ゲームを計4つ用意したが、基本的に自分一人でルールを作成したため、難易度の設定について最後まで確信しきれなかった。
特に、チームプレーを必要とするゲームについては難易度の確認が難しかった。

2つ目のゲームである「声を発さずに数字の順に並ぶゲーム」は、難易度を大きく左右するであろう制限時間の設定が長すぎたと思う。

できるかぎり本番に近い状態のリハーサルを行う必要があった。
(ゲームルールを確定させたのが会の前日であったため実家の母親でしか難易度の確認ができなかった)


つまり、総合して、「同窓会をひらくのはめちゃ大変!!」ということがわかった。
しかし同時に、参加者が喜んでいる顔やSNS投稿をみると、
本当に開いてよかった、という気持ちで満たされる。

同窓会ビジュアライズサービス


今回の同窓会は開催側にとっても参加側にとっても非常に実りのある試みであった。
このような、一風変わった同窓会を企画/ビジュアライズするサービスがあると嬉しい人が多いのではないだろうか。

私の場合、身の回りにたまたま各方面のクリエイティビティを発揮できる友人がいたため、今回のクオリティを出すことができたと感じている。

具体的には、
グラフィックデザイン/会場デザイン→建築家
映像デザイン→映像ディレクター
脚本/司会→俳優

で行っている。
もし、自分たちの同窓会も面白くしたい!
という方がいたら、連絡してほしい。
面白い体験を一緒に考えてたい。

それでは!

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