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【連載企画】宮崎とれたて旬の味~水産物編

 国内有数の食糧基地である宮崎県。身近に「食」があふれる幸せを感じてもらうため、「旬の水産物」に焦点を当て紹介する。

このコンテンツは、2019年4月から2020年12月まで宮崎日日新聞社本紙社会面に長期掲載されたものです。登場される方の職業・年齢等は掲載当時のものです。ご了承ください。


1.めいつ美々鰺(日南市)

脂乗り濃厚なうま味
 張りのある魚体が、銀白色にきらめく。日南市南郷町の目井津港で、この時季水揚げされるブランド魚「めいつ美々鯵びびあじ」。刺し身=写真下=の引き締まった厚い身から、濃厚な味が広がる。

 脂が最も乗った3~6月に取れる90グラム以上のマアジに限定し、地元漁協や漁師、市などの協議会が3年前にブランド化。近海の定置網で漁獲した直後、紫外線殺菌した海水で0度付近まで冷やし、うま味を閉じ込める。

 脂質含有量7%以上のものは最高級ブランド「三ツ星」として、1キロ1200円以上の高値が付く。県内外に出荷し、東京・豊洲をはじめとする市場や飲食店からも高い評価を受けている。

 定置網漁35年の新堀水産の元浦亮代表(67)は「鮮度管理で勝負し、常に最高の魚を届け続ける」。努力に裏打ちされた自信をのぞかせた。

 メモ スズキ目アジ科。日南市の幼児言葉で「魚」を意味する「びび」と、「色つやの美しさ、美味」を掛け合わせて命名された。漁獲量は2017年30トン、18年99トン、19年48トンで、このうち三ツ星の基準を満たすのは1~2トン。

2.ブリ(日南市ほか)

脂の乗り 体形で判別
 この時期、日南市の南郷漁協地方卸売市場で風物詩となっている寒ブリの水揚げでは、何十匹もが横一列に並べられる。特徴である脂の乗りが一匹一匹異なるため、仲買人が比べやすくするためだ。

 求められるのは体長の割に胴回りがある、丸々と太った寒ブリ。痩せたブリは1キロ数十円だが、刺し身=写真=などが絶品の寒ブリは同800円程度。シーズン初期は1匹1万5千円以上の高値が付く。漁協担当者は「大きさでなく、寒ブリ特有のグラマラスさが見分けるポイント」。

 県南では主に定置網で漁獲し、今年は3月2日から水揚げ。同17日は4800匹の大漁で、揚場あげばは活気があふれたという。
 漁獲する新堀水産の元浦亮代表(67)は「最高の魚は地元業者が先に買い地元で販売するので、ぜひ県南に食べに来て」と話した。

 メモ スズキ目アジ科。全長1メートル。関西ではツバス・ハマチ・メジロ・ブリと呼ぶ出世魚。本県でも古くから漁獲され、延岡市の故日高亀市氏は明治時代にブリ大敷網漁を発案し、「ブリ大尽」として全国に知られている。

3.キハダマグロ(日南市)

ねっとりしたうま味
 日南市漁協によると、キハダマグロの旬は2回で、脂の乗りが良くなる冬と、漁獲量が増える5~7月。国内有数の水揚げ地になっている同市油津港ではこの時季、毎朝30~60キロの巨体200匹ほどが並ぶ壮観な風景が見られる。

 水揚げするのは川南町や日向、延岡市のマグロはえ縄船約100隻。鹿児島県種子島周辺を漁場に、生きたアジなどの餌を無数に付けた、長さ約50キロのはえ縄を仕掛ける。

 日向市の細島港所属「正漁丸」の穴谷正美船頭(70)は14日、1週間ぶりに帰港し、約40匹を水揚げ。穴谷船頭は「日によってむらがあるが、釣果は上り調子」と手応えを感じている。

 地元消費に加え、関西などにも出荷。日南市漁協販売課の鶴岡亨課長は「冬ほどの脂はないが、刺し身=写真=でも、手ごろに特有のねっとりとしたうま味が味わえるのでお薦め」と紹介した。

 メモ スズキ目サバ科。熱帯、温帯域に広く分布し、全長2メートル。体色が黄色みを帯びているので「黄肌きはだ」の名前が付いた。小型は「シビ」と呼ばれることが多く、県内ではマグロの仲間で最も食べられている。

4.カツオ(日南市)

■地元水揚げ 鮮度抜群
 3月末の午前4時、日南市南郷町の外之浦港。カツオ一本釣船「第七十八福徳丸」(119トン)の船員約20人は、バケツリレーの要領で丸々と太った7~12キロの大型計約15トンを水揚げ。前日に種子島沖で釣ったもので、澄んだ目と深紅のえらが新鮮さを物語っていた。

 この時期、カツオは南洋から北上し、沖縄近海から日向灘まで広く分布。全国一の水揚げ量を誇る本県船団約30隻は「黒潮の狩人」となって群れを追い、日南市の母港には、全国で最も早く水揚げされる。

 ただ、県内での水揚げは4月まで。船団はカツオがさらに北上するにつれ、水揚げ地を関東や東北に移すからだ。

 今のカツオは地元水揚げのため、何より新鮮さが売り。漁獲した翌日に水揚げするものを「新口しんぐち」と呼び、ルビー色の美しい身と、もっちりとした食感を楽しみたい。

 漁師らは3~5日間洋上で漁を行った後に帰港し、水揚げ後はすぐに次の漁に出る。福徳丸の河野功船頭(52)=同町=は「新しいカツオは刺し身が最高。毎日食べても食べ飽きない」と太鼓判を押した。

 メモ スズキ目サバ科。全長90センチ程度。熱帯、温帯の海に広く分布。日本へは春来遊し、秋に南下する。「目に青葉、山時鳥ほととぎす初鰹はつがつお」とは初夏(5月)の風物を並べた句だが、これは関東での話。本県ではもう少し早く、皮だけをあぶったものを「焼っ切り」と呼んで食す。

5.しまうら真鯛(延岡市)

 桜咲く春先に旬を迎え、産卵を控えて魚体が鮮やかな桜色に染まることから、この時期に「桜鯛」とも呼ばれるマダイ。産卵で接岸して漁獲量も多くなり、スーパーなどでも見掛けることが多くなる。

 一年中安定した品質の養殖マダイも、春は色が鮮やかになり、適度な脂が乗って食べ頃に。県内最大手の木下水産(木下豊一社長)=延岡市島浦町=は、毎日約1200匹を活魚専用車で出荷する日が続く。

 同社のブランド「しまうら真鯛」は、島浦島との間にある流れの速い海峡で育てるため成長が早く、締まった身質が特徴。天然物に負けない味で、九州内の高級ホテルでも人気が高い。

 お勧めの食べ方は、皮目をあぶった「焼っ切り=写真」。レモン塩で食べ、木下拓磨専務(31)は「しょうゆよりマダイ本来のうま味が堪能でき、箸が止まらなくなる」とPRする。

 メモ スズキ目タイ科。全長約70センチで日本沿岸に広く分布。2017年は全国の漁獲量約7万8千トンのうち、養殖が8割を占めた。産卵後は「麦わら鯛」と呼び痩せてまずいとされるが、餌を豊富に食べて太る秋の「モミジ鯛」は脂が乗る。

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