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癌じゃない人にもウィッグがとってもおすすめなワケ ベスト4
髪を剃ったら瀬戸内寂聴さんみたいになった。何もないのは頭が寒いし無防備な感じがして、病院に行くときは帽子かスカーフで。外出する時はウィッグを被って、治療中ってことはごく親しい人以外には内緒にする日々が始まった。ガンになったのは悪いことじゃないんだから、隠さなくていい、スキンヘッドで堂々としていればいい、というのが最新の流れらしいけど、私はちょっと違う気がしていた。だって髪の毛がない私の風貌は、「病気」「がん」というのを周りの人に意識させて、驚かせたり怖がらせたり暗い気分にしたりする。そして腫れ物に触るみたいに扱われるのが何より嫌だったから。
それにしても、髪の毛がないこと、ウィッグ使いに慣れてみると、すごく便利でいいことが多い。治療が終わって髪がまた生えてきても、もう伸ばすのはやめてウィッグ人生で行こうかな、と思っていたぐらい。
おすすめのワケ1 髪型はいつも完璧&時短。ドライヤーはお蔵入り。
ウィッグでお出かけを始めてまだ初期の頃、トリノの街中で知り合いの若い日本人女性にバッタリ会った。美人でオシャレだけどちょっと変わり者の彼女は、こんにちはー、さやかさん、と挨拶もそこそこに、私の顔を正面から左右両側からジロジロ眺め始めた。ウィッグに慣れていないその時の私は「やばい、実は禿頭というのがバレてる? そんなに近くで見たら、合成毛ってわかっちゃうんじゃない?」と内心ヒヤヒヤ。すると彼女はこう言った。
「なんか、今日髪型、すっごいキマってますね、素敵。どこでカットしたんですか?」
そう、ウィッグは美容院でブローしてもらったみたいに髪型がキマっているから、外出する時にはメイクをしてウィッグをスポッと被るだけで準備オッケー。ブローが決まらないなあ、とか、寝グセを気にする必要もない。便利この上ないのです。
おすすめのワケ2 お高いシャンプーやトリートメントなどヘアケアグッズ一切いらず。
髪が抜けてしまってすぐの頃、薬局に行って「今、抗がん剤治療中で、これはウィッグなんですけど、頭は何で洗ったらいいでしょうね?」とこっそり薬剤師さんに相談してみたことがある。
イタリアの薬局には薬剤師さんがいて、医者の処方箋が必要な薬、必要でない市販薬、そしてコスメグッズも充実しているところが多い。オーガニックやらナチュラルライフが人気な今、薬局でしか買えないファーマシーコスメも大人気だから、抗がん剤でセンシティブになっている頭皮向けの、オシャレなオーガニックなシャンプーでも買って気分を上げようかな、と思ったのだ。
そしたら「そうですね、でも毛髪がないんだから、身体を洗うのと同じ石鹸とかシャワージェルで大丈夫ですよ」とズバ! だよね(笑)
そんなわけで、髪が抜け始めた3月の初旬から、ひよこみたいな毛が生え始めた10月ごろまでの半年間、シャンプーはもちろん、リンスもトリートメントもヘアオイルも、とにかくヘアケア関連のものは一切必要なかった。そして髪が生え始めて、シャンプーで頭を洗うのを復活させてからも、使う分量は本当に豆粒1個分ぐらい。それを手のひらにのせて、クルクルっと洗えばハイ、終わり。面倒くさがりの人にはとても嬉しい楽チンさなのだ。
おすすめのワケ3 美容院に行かなくていい
昭和の昔、女子大生だった頃はワンレンをかき上げていた私ですが(笑)、イタリアに住んでからはずっとショートまたはショートボブ、という感じのヘアスタイル。だから伸びてボサボサにならないように、1ヶ月か1ヶ月半に1回程度、美容院に行かなきゃならない。ところが治療中の半年間は髪がないんだからそれがゼロ! 美容院に行って座っているのが嫌い、美容師さんと当たり障りのない会話をするのが苦手な私にとって、ほんとに気が楽で嬉しいガン特典なのだった。
しかも、私が普段、トリノで行っているヘアサロンは、シャンプー、カット、ブローで60ユーロぐらいかかる(中ぐらいのレベル)けど、髪がなかった約10ヶ月、7回か8回ぐらいは美容院へ行かなかったから、60ユーロ✖️7回として合計420ユーロ浮いた計算になる。ウィッグ代は350ユーロ、見事、回収できちゃったというわけです。髪を伸ばすのはもうやめて、その分、違うスタイルのウィッグをいろいろ買って楽しむのもあり?と思ったり。
おすすめのワケ4 白髪対策もいらない
一時ブームになっていたグレーヘア。白髪は染めないで自然体で!というのがウリだったみたいだど、完全に真っ白(グレー)になるまでの間、白髪が混ざった状態ではカッコ悪いというので、結局、白く染めていたりするらしい。私はグレーヘアは似合いそうもないから、定期的に白髪をカバーするカラーリングをしていた。でも髪がなければ、それも必要ない。頭皮にも、環境にも優しい、ウィッグライフは本当にオススメです。
そしてウィッグのお手入れも簡単
私が買ったウィッグは人工毛の、まあまあいいレベルのもの。お値段は税抜きで350ユーロ。イタリアの、消費税に似た付加価値税というものは、贅沢品には最高22%がかかり、ウィッグもオシャレ目的なら22%だから400ユーロを超えるはず。でも私の場合は「医療用」ということで、最低の4%がかけられての350ユーロだった。お店の人曰く、人毛は高い(1000〜2000ユーロ越えとのこと)上にお手入れも大変、暑くて大変だから、人工毛がおすすめといわれた。私のウィッグ選びの話はこちら。
人工毛のウィッグはお手入れも本当に簡単で、何日かに一回、ウール洗い用の洗剤を水に溶かして、その中に少し浸して、優しく揉み洗いする。すすいだら、今度は柔軟剤をつけて終わり。熱に弱いのでドライヤーやヒーターに乗せて乾かすのは禁止で、自然乾燥させればさせればよい。ほっぽらかしでいい、というのがまたまた、ずぼらな私には嬉しい限りなのでありました。
と、こんなふうに思っていたのに、髪が伸びてきたら、結局ウィッグは使わなくなって、美容院にも行き、白髪染めもしている私。なんでだろう? ウィッグライフを絶賛したのはのは嘘じゃない、本心だし、今もそう思っているのに。
髪の毛を剃り続けるのは勇気がいる。そして何よりもきっと、普通の人の、普通な暮らし、がんになる前の自分に戻りたかったのかな、そんな気がしています。
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