ピエモンテのしあわせマダミン
昨日、7月14日は、私にとって少し、特別な日でした。なぜかというと、ちょうど一年前の昨日、5ヶ月頑張った抗がん剤の治療が終了したから。そして2週間後に予定していた手術の日程が決まった日、だったから。27年前からイタリアで暮らし始めた私が、イタリアで乳がんになってイタリアで治療を受け、そしてまた元気になった今がある。この間のいろいろな想いや体験、イタリアの病院の話、人々の病気についての考えなどなど、皆さんにここで、ご報告していきたいと思います。毎週火曜日に、更新予定です。
イタリア、トリノで26年も暮らしています。トリノはワインやらトリュフやらチョコレートが有名だけど、実はそれだけじゃなく、実は人々はとても食いしん坊だとか、イタリアの有名食企業の多くがトリノ生まれだったり、現代のイタリア料理に影響を与えたものがたくさんあったりという土地柄。そんなトリノの、今日のおいしかったをレポートします。不定期更新ごめんなさい。
イタリアで感染が爆発した3月、イタリアでのコロナウイルスとの暮らしを記録し始めた「ピエモンテのしあわせマダミン」。www.madamin2.meの記事を、このマガジンでまとめていきます。
オレンジやらミカンやら食べるたびに、おいしいなあ、でもこの皮かさばるなあ、と思っていた。マーマレードを作ったり、乾燥させてパウダー状にして料理に使うとか、いろいろ使い道がありそうなことはわかっていたけど、日常はバタバタと時間が過ぎていって、オレンジを食べるたびに、後ろめたい思いと一緒に生ゴミとして捨てていた。 でもなぜか昨日、マーマレードを作ってみる気になった。ネットで、いろいろレシピを検索してみる。皮を、白い部分も厚くむいて好みの形に切り、水に長くつける、または1−2度煮
イタリア人の友人たちの多くが、私のことを「ピッコラ」とか「ミヌータ」とかいう。小ちゃい、という意味のそのイタリア語は、イタリアの人たちが親愛の情を込めて相手を、特に女性をそう呼ぶということを27年暮らしてわかったけれど、私の場合はそうではなくて、実際の身体の大きさを問題にされている、という話だ。サヤカは痩せていて小さい、と。たしかに私は痩せ型ではあるし、イタリアの多くの女性のような豊かなバストもお尻もないけれど、身長は163センチで、たとえば混んだバスに乗って周りを見回せば、
先週書いた「がんになって一番嫌だったこと」を読み直していたら、そうだ、もう一つ、すごく嫌だったことがあったな、と思い出したことがある。それは、母からの電話だ。 「元気? 変わりはない?」。 イタリアに住んでいる私に、東京の母から2週間に一度程度かかってくる電話に「元気だよ。何も変わりないよ」と答える。本当は、抗がん剤の副作用でフラフラで寝込んでいて、髪も抜けて、げっそりしていても、元気なフリをするのだ。母には癌になったことを伝えないことにしていたから。抗がん剤が終わって手
そりゃ、死ぬかもしれないという恐怖でしょ?」と、今、読んでくれている人のほとんどは思っているんじゃないのかな。そう、がんは、放っておけば死ぬ病気だから。でも私は、死ぬという可能性についてはあまり考えなかったというのが、本当のところです。 がん患者が先に死ぬとは限らない だって考えても、誰にも正確なところはわからないから。余命半年と言われて10年生きてたなんて話はザラに聞くし、5年生存率とかをみたって、確率の問題なだけで、実際のところは何が起きるのか誰にもわからと思うからだ
髪を剃ったら瀬戸内寂聴さんみたいになった。何もないのは頭が寒いし無防備な感じがして、病院に行くときは帽子かスカーフで。外出する時はウィッグを被って、治療中ってことはごく親しい人以外には内緒にする日々が始まった。ガンになったのは悪いことじゃないんだから、隠さなくていい、スキンヘッドで堂々としていればいい、というのが最新の流れらしいけど、私はちょっと違う気がしていた。だって髪の毛がない私の風貌は、「病気」「がん」というのを周りの人に意識させて、驚かせたり怖がらせたり暗い気分にした
「なんと!抜けるのは頭の髪だけじゃなかったぜよ!!」 その瞬間、なぜ土佐弁になっていたのかは意味不明だが、とにかくまっことびっくりしていた私。 シャワーを浴びていたら、「あそこ」の毛が、ドバッと抜けて来たからだ。 2023年3月8日の日記 首の付け根、鎖骨の上あたりに点滴をセットするためのカテーテルが埋め込んである。それがどんなヤツかっていうのは、ここに👇。 そんな器具が身体に埋め込んであるから、普通にじゃーっとシャワーが浴びることができない。少しぐらい濡れても大丈
2023年3月初旬。私は抗がん剤にやられてゾンビのようになっていた。 ずっと健康だったし、その頃も健康だった(だってがんの自覚症状は全くなかったから)。それに体力もあるんだから抗がん剤もきっと大丈夫、なんて思っていた。もちろん、抗がん剤は大変という知識はそれなりにあったけれど、自分にそれが当てはまるとは想像さえしていなかったのだ。だから抗がん剤が始まるのを「楽しみに」していた、というとちょっと違うけど、早く始まってさっさとがんを消して終わりたい、そう思っていた。 さっそく
2023年2月24日 抗がん剤第1回目 いよいよ初めての抗がん剤治療の日がやってきた。朝9時の予約でがんセンターのデイホスピタルへ直行。イタリアでは特に副作用がひどい場合などを除いて、抗がん剤の投与は日帰りでやる(日本もそう?) 点滴の前に、毎回血液検査で体調をチェックされる 受付が済むと、ほとんど待たされずにまずは血液検査をする。肝臓や腎臓、白血球や赤血球の値を見て、抗がん剤に耐えられる体力があるかどうかを判断するらしい。ってことはつまり、検査の結果によっては「今日は
毎週火曜日更新、と決めていたのに、今週はスローフードのイベントが忙し過ぎて、とうとう挫折。楽しみにしてくれた方がいたら、ごめんなさい。来週、よろしくお願いします。
京都吉兆が学食ランチを作ったという、このニュースに関する正式な記事は後日、某媒体に書くことになっているんだけど、とりあえず速報(ってもう10日も前の話だけど)ってことで、何を作ったのか?気になる人も多いと思うので、ここに書いておきます。世界のトップシェフたちがやってきては、学食ランチを作ってくれるという、イタリア、ピエモンテ州の食科学大学での話です。 日本の、京都の、懐石の最高峰、ということでどんな美しいお料理が!? と期待は最高潮、だったけど、学食なので、しかもイタリアだ
2023年2月24日金曜日 やっと抗がん剤の治療が始まった。1月末にがんだとわかったのに、治療前の必要な検査が混んでいて、1ヶ月も待たされていた。ぐずぐず検査してる間に転移したらどうすんの!と焦っていたから、来週からやりますよーと病院から電話が来た時には、待ってました!という感じで本当に嬉しかった。 その日から、「3時間ぐらい点滴をされているんだから楽な格好がいい? ジャージか、パジャマか? ベッドなの?椅子なの?」などと考えはじめた私は、はっきり言ってワクワクしていた。
毎週の更新を目指して、今回は抗がん剤治療スタート!の予定でいましたが、先週から今週にかけて怒涛のような日々を過ごしていて断念。治ったばかりなのに無理しちゃだめ!と友人家族から心配されるので、代わりになぜ、怒涛のような日々かという話です。 イタリア、ピエモンテ州ポッレンツォという場所にある「食科学大学L’Universita scienze gastronomiche di Pollenzo」は、日本の人はもちろん、イタリアの人たちからも、シェフになるための大学ね?と誤解され
今から1年半前の今頃、とても気になっていたことがある。それは抗がん剤治療で髪が抜けることだ。 抗がん剤の副作用について説明をされた時、ギャグ好きドクターと一緒にいた女医さんが、気の毒そうな顔をして「ほぼ100%の確率で、髪は抜けるのよ」と言った。そして髪が抜けることによる精神的なショックに対処してくれる、カウンセリングもこの病院でやっているわよ、とも。 やっぱりそうなのか、という諦め感と同時に、相当な衝撃だった。ある意味、がんですよ、と言われたときよりも、ずっと。 白髪
え!私が旅立っちゃったのか!?とびっくりする人もいるかもしれないけど、そうじゃない(だってこれ、書いてるしね、笑)。手術から約1年たった2024年8月15日、娘が、オランダの大学院で勉強するために、イタリア・トリノの家から旅立っていったという話です。 旅立ちの理由 一人っ子の彼女と私は、料理人をしていた私の夫、つまり彼女のパパがいつも家にいなかったということもあり、2人で過ごすことがほとんどの、母子家庭のような環境だった。だから、と言えるかどうかはわからないが、私と彼女は
「転移、ありませんでしたよ!」 ギャグ好きの腫瘍内科医が、嬉しそうな笑顔で言った。待ちに待ったPETの予約が取れて、検査に行き、その数日後、結果を聞きに行った時のことだ。 待ちに待ったPET検査 PETというのは、Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影、のことだそうで、がんの治療を始める前に全身に転移があるかないかをみるための検査だ。ブドウ糖を付加した検査薬を身体の中に入れて全身を撮影する。すると、がんは糖分が大好き、ブドウ糖が特に大
2023年2月14日。 その日はバレンタインデーだというのに、私はといえば朝から病院へ行って、抗がん剤を点滴するための器具を設置された。設置って、私の身体、鎖骨の下あたりに、その器具を簡単な手術で埋め込むのだ。部分麻酔をするから一人できてはダメ、と言われ、娘に一緒に来てもらった。 CVポートとは? その器具というのは正式な名前をCVポートと言って、抗がん剤のチューブをそのポートに繋ぐだけで点滴ができるという便利もの。毎回抗がん剤を点滴するために腕に針を刺すのは、血管が細