大間といえばマグロってそれ、ナンセンスね
大間といえばマグロだが、それだけじゃない。
量食べられる唐揚げで有名な定食屋があることを同僚に教えてもらった。
どうせ家にいても『あたしンち』を垂れ流しながら、図書館で借りた吉本ばななさんの本を読むだけ(最高じゃん)だ。
土曜日の9時頃、車を走らせた。
市街地を抜けると片方は草木が生い茂り、もう片方には海がずーっと先まで続いている。
大間といえば、年末特番で放送されるマグロ漁。私も埼玉から青森に越すまでは大間という場所を知っていても、そこは当然未知の世界だった。
しかし、実際行ってみれば普通の漁村(正しくは町だけど)で、本州最北端と言われても実感はない。
ずっと知らなかった町でも、私が生きていた分の時間が流れているって不思議に感じる。
『もののけのラジオ無双・県』を聴きながら1時間、やっと目的地の定食屋についた。
町の定食屋に入るとき、私はいつも心の中に松重豊を憑依させる。
まさしく『孤独のグルメ』
こういうのでいいんだよって頭の中で言ってみる。
店内は4人掛けのテーブルが2つと座敷がいくつかあった。床がちょっとペタペタする感じも町定食の醍醐味である。
私はテーブルに座って、早速お目当ての唐揚げ定食を頼んだ。
隣の席には人の良さそうな常連さんがいて、ちょうど注文していたラーメンが提供されていた。どうやらサービスで唐揚げもつけてくれたようで「こんな食べれないよ!」と笑いながら言っていた。
これこれ〜!!最高の会話!!!町定食でしか得られない栄養!!
片思いしている友人が好きな人と話しているのを盗み聞きしているときみたいな高揚感でいっぱいになる。
さあ、いよいよ唐揚げとご対面。実家では母が揚げた唐揚げをよく食べたが、一人暮らしでは揚げ物なんてしない。
よーし、めっちゃ食べてやるからな!!!
あ、すご。
こんな一度に唐揚げ食べたことあったっけ。育ち下がりでもこんな食べなかった気がする。
正直不安だが、腹を括って唐揚げを口へ運ぶ。
あっつ......と思った頃には時すでに遅し、前歯裏の口内を確実に火傷した。
おう。
上等じゃねぇか。
死にてぇやつだけかかってこい!!!
きっつ......
美味しいのはもちろんだが、いかんせん量がある。
味付けの奥にあるニンニクが、喉を通り過ぎたあたりで香ってくる。味変のマヨをつければもう最高に美味しい。
美味しいんだけんども......ね。量食べられるとは違うからさ......
結局3つの唐揚げを残してしまった。
だが、タッパーを貰えると事前に聞いていたので、会計と同時にお願いした。
ちょいちょいと唐揚げを詰め、「ご馳走様でしたー」と言って店を出る。
ウミネコがスィーっと飛んでいるのを眺めながら一息。
外はすっかり夏の温度。ちょっと湿度が高いような11時過ぎをお腹いっぱいにして迎える。
車のエンジンをかけて、お会計の時に貰った飴を舐める。
暑さでちょっと溶けてしまったイチゴ味の甘さと火傷した口蓋を舌で確かめるのであった。
おまけ 帰り道の温泉
露天風呂から海を眺望できる温泉に行ってきた。
ガラっと戸を開けると知り合いに似た人が居て気まずかった。私は人見知りすぎて、街中でばったり会うみたいなアクシデントに弱い。
なので、露天風呂から海を眺めていてもそのことが頭から離れず、何故か気疲れした。
パパッと浴場から出て、150円のパピコを買う。
ズラッと座布団が並ぶ宴会場のような場所に腰掛けて、髪の毛を自然乾燥させながら食べるアイス。
幸せとはこういうことを指すのだろうか。
backnumberの『瞬き』を頭の中で再生させ、たまに聴こえるさざなみにどこか寂しくなった。
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