むしろそれを第一に無能によるものと解釈し

(英国通訳師の)サトーは、幕府役人の立場上のつらさに同情的でなく、むしろそれを第一に無能によるものと解釈し、さらには幕府役人が肚と言葉のちがう日本の伝統的外交法のみでやってくるのに対し、薩摩人はきわめて態度が明快で、その言葉はヨーロッパ人の言葉のごとく信用できる、とみた。サトーはこんど長州人にはじめて接し、鹿児島城下でもった感想とおなじ感想をもった。

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「英国は幕府を相手にすべきではない。薩長を相手にすべきである。日本は早晩革命がおこらざるをえないが、その主役は薩摩か長州、あるいはその双方にちがいない」

世に棲む日々(三) 談判の章

司馬遼太郎

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