#読書感想文〜きのうのオレンジ
今回購入した「一万円選書」の中の一冊です。
(2024年7月に当選 ー 3/10)
「一万円選書」に関してはこちら→(★)
「きのうのオレンジ」(藤岡陽子・著)
(2023 集英社文庫)
レストランの店長として、忙しい日々送っていた、働き盛りの33歳の男性が、突然胃がんと告知されます。
さて、これは一万円選書の3冊目の小説ですが、ここまで来ると、選書された岩田さんの意図が、うっすらと見えてくるように感じます。
「生きろ」。
とにかく、「生きろ」。と。
「生きる」ということを、真剣にやってみなさい。
という、選者からの、強いメッセージが聞こえてきます。
一万円選書は、選書して頂くにあたり、カルテと呼ばれる、自己分析を送ります。
私は、そこに、わかりやすい希死念慮など、もちろん書いたつもりはないのですが、それでも、生きる熱量みたいなのが薄いと、読み取られたのかもしれません。
ただしこれは、特に私に限ったことではないと思われます。
というのも、私は他の方々がネットに公開されている、一万円選書のラインナップを、いくつかチェックしているのですが、見たところ、私に選んで頂いた小説は、割と定番で、多数の方の選書に入っているようなのです。
ということは、この
「生きることを、もっと真剣に誠実に考えてほしい」
という、岩田さんからのメッセージは、
今を生きる我々、みんなへのメッセージとも受け取れそうです。
「生」は「死」の存在があってこそ、初めて意識するものだと思います。
なので、身近に「死」がない現代人は、どうしても「生」に対する意識が希薄になりがちです。
普通に、平穏に暮らしていると、明日も今日と同じ日が来るのだと思ってしまう。
作者の藤岡陽子さんは看護師として働かれている方で、日常的に「生」と「死」が交錯する世界で、様々な葛藤の中、お仕事をされていたようです。
小説の中では、看護師のやりきれない思いが、吐露されるシーンもありました。
そんな日々の中で、この小説は、作者が「生」と「死」について、もっと真剣に向き合ってほしいとの思いから、書かれたのだと思います。
正直にいうと、私はこの、真剣で誠実な小説というのが、どうも苦手なのです。
なので、自分から手を伸ばすことは、あまりなく、こういう機会がないと読まなかっただろうと思います。
実は数年前に身内が、がんの手術を受けているというのに、当時は、全く気持ちに寄り添えていなかったと気がつき、反省しきりです。
健康を失うことの心痛が、全然、想像できていなかったです。
救いは、この小説がすごく、売れていることです。
奥つけをみると
2023年8月30日 第1刷
2023年9月16日 第2刷
2週間で増刷って、すごくないですか?
つまり、たくさんの方が読まれていると。
なんとなく、ぼんやりしていても、生きていられる。
それで全く困らない現代には、こういった正論すぎる小説を読んで、真剣に生きることについて考えることが、大切なんだろうと思います。
特に若い人には、読んでほしいなあと思います。
身近な人が病気になった時に、しっかりと寄り添えるように。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?