スクラムマスターが絶望の谷から抜けるためにやったこと
こんにちはこんばんは。スクラムマスターのいのもえです。
突然ですが、ダニング=クルーガー効果についてご存知でしょうか?
「完全に理解した」「チョットデキル」なんてネットミームにもなってるアレです。
私は 2023/02 にスクラムマスターになりまして、その前はエンジニアとしてのキャリアを歩んでいました。
スクラムマスターになった直後はまさにダニング=クルーガー効果でいう「絶望の谷」にいたと思うのですが、最近になって絶望の谷を抜けたかも、と思うようになりました。
この記事では同じように苦しい思いをしている方や、その方をサポートする方に向けて自分の体験談を共有したいと思います。
そもそも「完全に理解した」がピンとこない方向け↓
Welcome to "Valley of Dispair"
当時の状況
私がチームに入ったとき、以下のような状況でした。
自分は 2 人目スクラムマスター(社員としては 1 人目)として参画した
スクラムガイドと乖離しているポイントがわかりやすい状態だった(カスタマイズしている、不足しているスクラムイベントがあるなど)
スクラムマスターは未経験からのチャレンジだった
今考えると、「社員としては 1 人目のスクラムマスター」というのが自分にとって大きなプレッシャーだったように感じます。
力みすぎていた
はじめの頃は「みなさんの期待に応えてきっちり開発を回さねば…!!!!(できれば期待以上に!)」と、状況把握やそれを基にした改善提案にかなり力を入れていたと思います。
特に、スクラムマスターが改善提案をバシバシ出すのは失敗だったと思ってます。チームの自己組織化を助けない行為であることはもちろん、チームが自身で考えて出した案ではありませんから、受け入れてもらうまで色んな疑問を受け付ける必要がありました。
スクラムマスター 2 名で案を詰めていくために長時間 MTG するなど体力面での負荷がかかりましたし、チームの課題を解決したくて考えたのに、案を説明している間に自分個人の課題と感じるようになったりして精神面でも負荷が高かったです。
自信がなかった
スクラムマスターやスクラム、 LeSS に関する知識は独学が多く、自分が「正しい」と思えることがブレブレなのも良くなかったと思います。
また、チームを導くにあたっては「なぜそうした方が良いんですか?」と聞かれることもありましたが、そのときに自信をもって発言できないと感じる場面がかなり多かったです。力み過ぎていたのも相まって、「自分は役に立っているのか?」とかなり悩みました。
谷を抜けるぞ!
私は自分の考えを紙に書き出して整理することが多いのですが、何度か整理していく内に「自分に正しい知識がないから苦しいのでは?」という考えに至りました。
振り返ってみるとこの気付きは正解だったと思います。
私は正しい知識、自信、考え方を身につけるために、 以下のことを実行しました。
Certified ScrumMaster® を取得する
スクラムマスターには認定制度があるのをご存知でしょうか。
スクラムマスターに興味を持った頃から存在は知っていたのですが、取得のために受講が必要な研修費用が高額で、プライベートでとるのは難しいと感じていました。また、当時はエンジニアだったので業務上必要だから支援してほしいと説明するのも難しいと感じていました。
今回の場合は実際にスクラムマスターになったことや転職で環境が変わったこともあって、上長である CTO に相談し、翌週には受講できる運びとなりました。
その時のことは、こちらの記事にも書いています。
実際に研修を受けてみて、「なぜ」そうした方が良いのかがかなりクリアに理解できるようになりました。
理由がわかるために応用もかなり効くようになりました。
スクラムマスターとしてのチーム運営はもちろんですが、スクラムガイドを読み解いたり、ネット上の情報を判断するのにも利用できておりかなりコスパが良い策だったと感じています。
スクラム + LeSS を口頭で説明する
もともと社内にはスクラムを説明する資料があり、新入社員のオンボーディング時には渡してそれぞれ読んでもらっているようでした。
しかし、研修を受けたときに感じた (1) 「根本の考え方は口頭じゃないとわからん」という感覚と、(2) 同じ言葉を使って同じものを認識する重要性を理解した経験から資料を渡すのをやめ、資料を自作して口頭で説明するスタイルに切り替えました。
新入社員はもちろんのこと、既存社員でも希望があれば参加してもらうようにして何度か説明を実施しましたが、これは自信の回復にかなり役立ちました。
成功体験を積むという観点はもちろん、スクラムを運営する中で各ロールが担う役割を伝えることによって、期待値( 自分 へはもちろん、チームと PO 間も)をコントロールしやすくなったと感じます。
また、ワークショップ形式でのコミュニケーションを準備したり実施したりするハードルがぐんぐん下がり、チームに対するコーチングするスキルも上がったと自覚できました。
勉強するのも仕事だと理解する
LeSS やスクラムでは、プロダクトグループ(スクラムチーム)に対し成果物を求めるのはもちろんですが、それ以外にも「学習すること」を求めるのが特徴の一つだと考えています。
特に LeSS の原理原則やフィーチャーチームについての理解を深めていくと、「学習することで顧客についてより多くの人々で考えられるようになり、結果的に顧客が求めていたものを早く提供できるようになる」という価値観を端々から感じます。
もともとあまり技術書などを読まないタイプで、「必要になったら都度勉強すればいいや」というタイプでした(実際に勉強し始める頃にはだいぶ遅かったですが…)が、「チームが学び続ける状態になるには、スクラムマスターである私自身も学習し続けるべきだ」と考えるようにしました。
結果として、エンジニアだった頃よりもかなりの時間を新しい知識のインプットや状況の観察及びヒアリングに費やすようになりました。
また、チームに対して接するときにも、「この場面で最も学べることは何か」と考えるようになり、学べると思ったことについて、自然にサポート役に回れるようになりました。
その他やったこと
上記のものほど語れないですが、以下もかなり役立ちました!
社外コミュニティ(スクラム実験室)の運営メンバーに入るためのレビューを受ける、イベントを運営する
LeSS の本を読む(特に 6.1.6 章に勇気づけられました)
読んだものを scrapbox にアウトプットする(共有するときにも便利)
イベントを運営したことは以下に日記も残しています。
支援してもらったこと
ここまで自分でやったことばかり書いてましたが、もちろん周囲のサポートがあって今の自分が成り立っています。
以下に特に印象に残っていることを書いてみます。スクラムマスターを周囲で支える人の参考になれば…🙏
社内の人に支援してもらったこと
心配に思ってることを根気よく聞いてくれた(ときには長時間…)
研修費用を経費精算にしてくれた
ヒアリングに快く協力してくれた
ワークショップ等に参加してくれた
「スクラムマスターがそこまでやらなくて良いんじゃない?」と止めてくれた
家族に支援してもらったこと
小さな成果でもお祝いしてくれた
つらいときに家事を代わってくれた
仕事中の休憩方法を一緒に考えてくれた
まとめ
絶望の谷にいるときには「ダニング=ルーガー効果だ!」とは気づきませんでしたが、落ち着いてみるとまさにこの状態だったなあと思います。振り返りを通して自分の状態を言語化できたり、周囲の支援に気づけたりできてまた一つ学びに繋がったと感じます!
これからも悩みながらスクラムマスターを続けていきたいと思います。ちょっと余裕が出てきたので、少し開発もやりたいなと思う場面も増えてきました。今後また学びがあれば note に書いてみたいと思います!