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『ジャレットとバラの谷の魔女』児童書 読書感想文‐きのうのあなたより、きょうのあなた

こんにちは、藤都子です。

記念すべき第1回読書感想noteは、あんびるやすこ先生作「魔法の庭ものがたりシリーズ」7巻『ジャレットとバラの谷の魔女』の感想を綴ってまいります♪

私は児童書がだいすきです!そしてあんびるやすこ先生の作品がだいすきです!なぜなら、あんびるやすこ先生の作品には「私たちがみんなで幸せに生きていくこと」の根幹そのものがストレートに描かれているから。

もしかしたら児童書のことを「こどもだましの物語」だと認識している方もいらっしゃるかもしれません。そんなあなたには私の方から教えて差し上げましょう。それは違うと。

おとなになったら忘れてしまうような、でも私たちが元来大切にしていたはずの、胸の奥の奥にしまいこんで存在を忘れてしまった小さな宝物に光をあてて、ふたたびかがやきを取り戻させてくれるような力が児童書にはあると私は思っています。


私は性善説を信じていません。しかしだからといって人間が救いようのない醜い存在だとは決して思いません。人間はたのしいことやうつくしいものを想像することができます。うつくしい物語や絵、歌などを創造する力も持っています!

うつくしさには私たち人間のこころを大きく動かす力があり、これこそが希望であると私は信じています。そして私にとって児童書とは、まさにその存在なのです!(もちろん、正義と同じくうつくしさも間違った方向に力が働くとひとを崩壊に導くので大きな力というのは難しいですね!)

さて、前説はこれぐらいしにして本書『ジャレットとバラの谷の魔女』の感想を述べてまいりましょう!

なるべくネタバレにならないようにしますが、ネタバレ完全回避したい方はお気をつけて!


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主人公ジャレットは、人間でありながらも魔女の「魔法の庭」を相続しハーブの薬屋さんを営むごくふつうの女の子。本話では、かしこく優秀な魔女「シシィ」という女の子が曇った表情でジャレットのもとに現れます。

魔女のシシィには幼いころからずっと一緒に過ごしてきたよき相棒「黒猫」さんがいます。この黒猫さんが主人公ジャレットに、シシィの苦悩を相談するシーンが私は本作のなかで一番だいすきです!

みんなは知らないことですが、実はシシィはものすごい『がんばり屋』なんですよ。いつもみんなよりいっぱい勉強して、みんなよりいっぱい練習して、ずっと努力をつづけてきました。なんでも上手にできたのはそのせいです。それにシシィは自分でもじょうずにできなければ気が済まないところがあって。だからひとつでもしっぱいすると、人の何倍もがっかりして、もうなにもかもがダメになったように考えてしまうんです。

あんびるやすこ『ジャレットとバラの谷の魔女』p93,94(ポプラ社)

なんてすてきなんでしょう……!!!

この黒猫さんのせりふだけで、本作品が私たちの希望であることがはっきりとわかりますね。


だってですよ?自分(シシィ)のことを理解してくれている存在がいつも隣にいて、そしてそのひとが自分のことを心配し助けようとしてくれる……人生においてこんなにもうれしいことがありますか!?

私はこの黒猫さんの存在に光をおぼえ、そして涙を流しました。

シシィだけでなくもちろん主人公ジャレットにもすてきなお友達がたくさんいるので本シリーズは読んでいるだけで心があたたまり、その友情のうつくしさに感動して毎度ティッシュを10枚以上消費しているのですが、そこまで語っていると既刊の感想まで述べてしまいそうなので今回は割愛!


人間は他者のことを、己の視点から観測可能な表層の言動や肩書、そして結果などでしか評価できません。人目のない裏での努力、またもや裏での悪行を察知する慧眼を持つ人もごくまれにいますが、そんな真を見抜く目を持つ人間は本当にごくわずかです。ふつうは表層のみですべてを判断されるのがこの世の常です。

これはすなわち、なんの信念もなく平気でうそがつけたり口がうまかったり、その場限りのうわべの振舞いをうまくやれる人は、簡単に他者評価を大きく得て生きていくことができるということです。

そして逆に言えば、人の見えないところでがんばっている誠実な人が正当に評価されて報われるとは限らないということでもあります。きっとみなさんにも心当たりがあるでしょう。真面目な人が損をするとはよく言ったものです。

「あなたのがんばりは絶対に誰かが見ているよ」という慰めの言葉がありますが、残念ながらそんなきれいごと通りにこの社会はまわっていません(※藤都子個人の見解です)

私は自業自得という言葉が好きです。なぜかというと、現実はそうではないからこそ理想論としてこの言葉が好きなのです。善人が幸せになって悪人には罰が当たる、因果応報 自業自得の世界だったらどんなによかったでしょうか。


しかし安心してください!

この魔法の庭ものがたりでは、シシィの隣には良き理解者である黒猫さんがいます!

真面目にがんばってきたシシィが「居なかった」ことにはされません!!

やった~~~!!


そしてシシィは周囲のあたたかいまなざしと助言によって、他者との比較や他者からの評価ではなく、昨日までの自分と今日の自分を見つめて 自分のがんばりを自分で認めてあげることを覚えます。「きのうのあなたより、きょうのあなた」という言葉の意味を理解するのです。


現実にはシシィと黒猫さんたちのようなすばらしい信頼関係の友人を持つことは非常に難しいでしょう。しかし、こういった人間関係を結べている人もこの世にどこかにいるはずで、決してこの関係性は児童書世界の夢物語ではないはずです。

いや、信じなけれれば人間は相互理解することができない、と言った方が正しいでしょうか。

私が「私」という私だけの意識(主観)を持ちこの世に生まれ落ちた瞬間から、私は私以外には絶対になりえない、孤立した存在となります。「私」が唯一できることは「このひとはこういう人で、こう思っているんだろうな」と想像し、その己の想像を信じて、私は周囲の人間を理解している(=だから「私たち」はわかりあっていて孤独なんかじゃない)と信じることのみです。

でもだからこそ、他者を理解しようと想像し、そして信じることは貴いのです!


もし残念なことにいま身近にお互いを理解できるような存在が居なかったとしても、本書自体が読者の「すばらしい友人」になってくれるので安心してください、奥さん!本書が読まれた時点で、ジャレットもシシィも黒猫さんも読者のあなたと共に存在するのですから!本は友達!

あんびるやすこ先生の作品を読んでいると、「私」の人生が持っているはずのあかるい可能性に毎度気づかされて、心が励まされます!!

頑張ったことや真面目に生きていることが仮に周囲の人間に評価されなくても、そのあなたの誠実さは確実にあなた自身を成長させ磨き上げているのです!

やったぜ~!


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本書のワンシーンについてのみの感想しか書いていないのに長くなってしまったので今回はこれぐらいにしておきましょうか!

魔法の庭シリーズには毎度ハーブやエッセンシャルオイルを使ったすてきな小物の作り方が掲載されており、女児心が巻くすぐられるところもだいすきポイントです!毎巻表紙イラストを使用したかわいいしおりもついてきてうれしい!!!!!

わたしもハーブ魔女の魔法のお庭で薬屋さんを営み村の人や動物たちと仲良く暮らしたいよ……

おとなのみなさんも、世界が美しいことを思い出させてくれる本書シリーズをぜひ読んでみてくださいね🎶


あんびるやすこ先生の他シリーズである「なんでも魔女商会」は最新作まで持っているのですが、魔法の庭シリーズは今回読んだ7巻以降を所持していないので、これから買い集めるんじゃ!

そうそう!去年「なんでも魔女商会」20周年フェアに応募したら抽選200名プレゼントのトートバッグが当たったことを自慢しちゃお🎶

わ~~~い!!!


これからも気まぐれに読書感想文は更新します!

それでは次の更新までさようなら~!なむ!

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