『しょせん他人事ですから』が他人事ではない現実的なテーマを扱った、分かりやすいドラマだった
夏ドラマも深夜以外はたいていのものは見ていますが、面白いと思うものとそうでないものの差がついてきた感じ。
『かぞかぞ』『海のはじまり』『新宿野戦病院』は確定ですが、私の中では意外にも次の作品が浮上してきました。
(他には『クラスメイトの女子、全員好きでした』『降り積もれ孤独な死よ』も興味深い)
『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』 テレビ東京
■原作は漫画⋯原作:左藤真通、作画:富士屋カツヒト
■脚本…小峯裕之
■出演…中島健人(主人公弁護士・保田理)、白石聖(パラリーガル・加賀見灯)、片平なぎさ(喫茶柏原店主)ほか ※敬称略
そもそもアイドルやタレントが主演を演じるドラマはなんとなく見る気がしないのですが、同僚が「1話を見たら面白かったしコミックも面白い」と言っていたので、TVerで見ました。
あら、ほんとにオモシロイ。
主演の中島健人さん演じる保田弁護士も、「しょせんひとごとですから~♪」と可愛く冷たい言葉を放ちながら甘いスイーツをはしゃいで食べる、しかも金髪姿でふざけているようなのだけど、受けた仕事はちゃんとするという、そのチャラくてドライな雰囲気と、そつなく仕事に取り組む雰囲気のギャップがすごく似合っているのでしょうかね。
中島健人さん、これはアリだなと、偏見を撤回したドラマでもあります。
テーマも今どきのSNSやネットトラブルを扱った作品なので、こういう時こそ、若い人をはじめ多くの人に見てほしいし、「他人事じゃないよ」という意味では、人気タレントさんをキャスティングした狙いは効果的なのかもしれないですね。
片平なぎささんもいろんなドラマに出演されていますが、最近は認知症の役などもあったりして、年齢以上の歳を感じる役をされていました。
今回は喫茶店の普通の店主で、明るく元気で、変人弁護士・保田に何かとよくしてくれる(喫茶店が昔SNS炎上したのを機に保田に依頼したのが始まり)素敵な女性店主ということで、片平さんの美しさが映えていますし、熟年の包容力を感じる、とてもいい役をされていて輝いています。
パラリーガル・加賀見灯役の白石聖さんもまた、安田の不謹慎な雰囲気とは真逆のマジメキャラで、変人で仕事は実力ある保田と、マジメで仕事は修行中の加賀見との対照的な関係がわかりやすい。
他のキャストは、毎回トラブルを相談してくるゲストとその周りの人たちなので、人間関係もシンプルなのでストーリー(相談案件)に集中しやすい印象。
ストーリー(事例)としては、人気主婦ブロガーが特定人物からの誹謗中傷に悩み、それを対処していく話、人気兄妹アーティストが、誰かにありもしない嘘の動画(過去の偽いじめ動画)をアップ・拡散されて精神的に追い込まれる話、喫茶店が提供したスイーツに破片混入していたとSNSにあげて営業が立ち行かなくなった話など、今なら日常的にニュースで聞くような出来事ばかり。
ストーリーとともに、具体的に被害者は何をすればいいのか、何をしたいかによってアクションが違うとか、情報開示請求のこととか、要求によってはハードルが高いとか、リスクや得られる効果についてもチャラい保田がさらっと分かりやすく説明してくれるのもミソ。
豆知識も得られるメリットというか、勉強になるというか、頭の片隅に入れておくと役立ちそうな、またネット環境においては気をつけないと、と思えるようなアドバイスもあって、なかなかの作品です。
原作は漫画ということで、これを作るにあたっては専門的な話になるので、こまめな取材なり専門家の法律監修のもとで描かれているようです。それだけ下調べや専門用語の使い方や仕組みの説明など入念に作業されたのだろうなと思うと尊敬。
漫画なので10~20代の若い世代にもよさそうだし、今回は中島健人さんという人気タレントを起用したことも、若年層まで視聴者層を広げるにはよかったのかもしれませんね。
ネットで誹謗中傷やトラブル起こすのは若者だけでなく中高年も多いのですけどね。
ちなみに、脚本は小峯裕之さんということで、少し前の『転職の魔王様』も担当されていたようですが、そういえば『転職の魔王様』も、クセの強い転職アドバイザーの来栖嵐(成田凌さん)と、マジメなアシスタントの未谷千晴(小芝風花さん)、そして未谷は来栖に振り回されつつも経験を積みながら次第に成長していく、というその関係性も似ています。
脱線しましたが、ノーマークだったけど意外に面白くて好き、という話でした。
※以下はドラマの公式サイトの紹介文