見出し画像

マイマイガに関する注意喚起

 みなさん、こんにちは。
 林務担当から、「マイマイガ」に関するお知らせです。

 昨年は、「マイマイガ」という蛾が多数発生しました。マイマイガが大発生することで、人的被害や森林被害が生じる恐れがあります。この記事では、「注意喚起」を目的として、マイマイガの基本情報や被害の状況、注意点等について、ご紹介します。

1 マイマイガとは

 マイマイガは、ドクガ科に属する在来の蛾の一種で、日本全国に分布しています。幼虫は、春から初夏にかけて出現し、さまざまな樹木や草本の葉を食べて育ちます。成長の過程で、複数回脱皮を繰り返して最大で7cm程度まで成長し、成熟すると蛹化・羽化します。成虫の寿命は7日~10日程度で、交尾・産卵を終えた後、死滅します。
 本種は、概ね8~11年周期で大発生し、その後マイマイガを死滅させるウイルスや菌が引き起こす疫病の流行によって終息すると言われています(北海道立総合研究機構林業試験場 2010)。

画像1

幼虫

画像2

成虫(左♀・右♂)


2 森林被害

 三宅島では、過去には平成14年に大発生したことが記録されています。近年では、平成30年頃からマイマイガが頻繁に目撃されるようになり、続く令和元年、令和2年においても、多数発生しました。被害は島内各所に及び、主に「オオバヤシャブシ(島では「ハンノキ」と呼ばれています)」、「アカメガシワ」、「オオシマザクラ」といった樹木で、葉が食べられる被害が見られました。
 三宅支庁では、発生状況及び森林被害の実態を把握するため、マイマイガの「発生消長調査」及び「森林被害度調査」を令和2年から実施しています。

画像3

葉を食べるマイマイガの幼虫

画像4

幼虫により葉が食べ尽くされたオオバヤシャブシ(令和2年 神着地区赤場暁)

(1) 発生消長調査
 本調査では、三宅島におけるマイマイガの発生量と発生時期の把握を目的として、幼虫と成虫それぞれについて、調査を行いました。幼虫は島内8地点で、目視により幼虫の数をカウントし、成虫は島内5地点でライトトラップによる捕獲を行いました。

画像5

幼虫の調査状況

画像6

成虫のライトトラップ

画像7

 発生消長調査の結果、三宅島では4月上旬ごろより幼虫が発生し始め、5月頃に発生数がピークを迎えていました。その後6月下旬にかけて、徐々に幼虫の蛹化・羽化が進み、7月初頭には幼虫はみられなくなりました。
 一方、成虫は6月上旬に出現し始め、7月上旬に発生数がピークを迎えた後、徐々に減少していき、7月末ごろにはみられなくなりました。

画像8

 調査地点別では、赤場暁(神着地区)で幼虫が大量に発生し、次いで明日葉畑(伊豆地区)で比較的多数の幼虫が確認されました。多数発生した赤場暁(神着地区)では、4月の早い時期から出現し始め、その後も発生時期を通して、他地点を大きく上回る発生量を維持して推移しました。

図1

 一方、成虫については、三七山展望台(坪田地区)で最も多くの成虫が確認され、その他、三宅村役場前トイレ(阿古地区)、島しょ農林水産センター(坪田)で成虫が確認されました。

画像10

(2)森林被害度調査
 本調査では、発生消長調査と同じ地点で、幼虫による食葉被害の程度を確認し、その程度を4段階の被害度に分類しました(下図、凡例参照)。
令和2年は、赤場暁(神着地区)で、被害度3の甚大な森林被害がみられたものの、その他の調査地点では、目立った被害はありませんでした。赤場暁(神着地区)では、早い時期から幼虫が発生し、発生期間の後半においても、多数の幼虫が発生していました。このように長期間、高密度に発生した幼虫により食葉被害にさらされたことで、大きな森林被害が生じた可能性があります。

画像11

 過去の事例と同様に、令和2年においても、島内各所でマイマイガの発生が確認されました。さらに、赤場暁(神着地区)のように、一部では、幼虫が多数発生した地点もありました。
 令和3年も継続して発生消長調査を行うことで、大発生の収束傾向を注視するとともに、蓄積したデータから発生を予察して、注意喚起や被害防除を適切に実施できるよう取り組んでいきます。

3 注意喚起

 マイマイガは、「1齢幼虫」が毒毛をもっており、人と接触するとかぶれ等を引き起こす可能性があります。1齢幼虫とは、幼虫の成長段階のひとつで、孵化してまもない一番小さい段階(体長3~4mm程度)です。2齢以降の幼虫には毒毛は無いとされていますが、硬い毛が皮膚に刺さる恐れがあります。特に1齢幼虫は糸を吐いてぶら下がり、風に乗って飛ぶため、樹木に接近しなくとも接触する可能性がありますので、ご注意ください。
 また、成虫についても、羽に付着している鱗粉が肌に付くと、人によっては発疹やかぶれの症状が出ることがあります。手で直接触れたり、成虫や卵塊の鱗毛を大量に吸い込んだりしないようにしてください。

齢別幼虫

齢別の幼虫

画像13

老齢幼虫

 翌年の発生を抑えるためには、幼虫が孵化し始める4月頃までに卵塊を除去することが効果的です。ご自宅の外壁等に産み付けられた卵塊を発見したら、壁を傷つけないようなやわらかいヘラ等により、そぎ落としてください。
 また、身近な資材を用いた卵塊除去用具として、角型のペットボトルを半分に切った掻き取り用具も考案されており、掻き取った卵塊が容器の中に留まるので、おすすめです。
 卵塊を除去する際は、卵塊に付着した鱗毛が飛散しますので、マスクと手袋を使用してください。回収した卵塊は、ポリ袋に入れて口を結んでから燃やすごみに出してください。

画像14

卵塊と1齢幼虫

画像15

ペットボトルを用いた卵塊の除去

4 まとめ

 調査結果のとおり、三宅島では4月頃からマイマイガの幼虫が発生し、6月頃には成虫が羽化し始めます。暖かい季節は、外出する機会も増えると思いますが、幼虫や成虫に手を触れないよう注意してお過ごしください。
 また、マイマイガの卵塊を発見された場合は、4月頃の孵化までに除去しておくことで、幼虫の発生を抑制することが期待できます。まだ間に合いますので、ご自宅の壁等をチェックすることをおすすめします。
 今年についても、マイマイガの調査を継続して実施します。発生状況をnote記事として上げますので、そちらもぜひご覧になってください。


参考文献
(地独) 北海道立総合研究機構林業試験場 2010年4月 マイマイガの生態・被害・防除Q&A


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?