日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき――プロローグ T大学総長の疑惑の合金事件6 

    
 裁判記録を読みながらふと気づいたことがあった。特許問題だ。争点のひとつになっている。1995年にI氏は特許庁に対して実験装置の特許申請を出している。装置作成の資金は公費だ。JSTが出している。金額は不明。O氏らは、調査をするなかでこの特許申請にある矛盾があることを発見する。申請書には、じっさいに装置をつかって金属ガラス鋳造の実験を行い、成功したとの報告書が添付されている。30ミリ径の金属ガラスを作成したという報告だ。そこに金属ガラスができた証拠としてX線回折図が添付されているのだが、これがおかしい。まったく別の実験――93年の石英試験管を使った実験の論文(JIM93)――の図と波形が瓜二つだったからだ。

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