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高校生アスリートの腰痛にみたトレーナーとしての関わりの「責任」と「難しさ」

My LIFE 1.0を書き終えました。

もしかしたら、まだ加筆していく可能性はありますが、一旦終了。自分の競技人生を振り返っていく中で何を大切にしてきたか?このnoteを通して心の中のwill(=本当に自分がやりたいと思っていることは何か?)をきちんと自己分析できた気がします。長々と自分のことを書いた64話は長編なので、これから読む方は覚悟して読んでくださいw。個人の主観なので、クレームは優しくお願いしますww。


ここ・・・

「自分の心の中のwillが分かった」と言わないところがポイントかな。「分かること」って究極的にはなくて、生きていく中で人との出会い、失敗や成功体験、喜怒哀楽・・・こういった中でwillは「変化し続けるもの」だと思っています。初志貫徹は素晴らしいですが、それを曲げられないと時に生きにくくなってしまうこともある。それによって自分や他人を傷つけるくらいなら、柔軟に心のあり方を曲げ伸ばしすることも必要になるんじゃないかな。それができる大人はきっと素敵に見えるんだと思います。いい歳のとり方をしたいもんですね

ランニングに関して言えば、自分もすっかり「やる立場」から「支える立場」になりました。走らなくなったわけではなく意識の問題で、競技者という立場じゃなくなってから、徐々にその役割が変わってきたのだと思っています。その最たる象徴が柔道整復師になったこと。今回はそんな柔道整復師になりたての頃にトレーナーとして参加させてもらった大分インターハイのお話です。

◼︎大分インターハイにて

2013年の夏は猛暑でした。東京が涼しい…そう思えてしまうほど、大分は暑かったです。サブトラックに作ったトレーナーステーションは連日の37度超え。トレーナーたちが練習会場に到着するのは朝の早い時間帯なのですが、拠点となるテントを開き、選手が来れるようにベッドや備品の準備しているだけで汗だくになりました。ほんと、暑かったです。

夏の甲子園同様に、インターハイは非常に過酷な試合だと思います。若いから大丈夫ということはなくて、とても危険な状況下で競技を行います。だからといってインターハイをなくした方がいいとは思わず、この大会にかけてきた高校生たちの熱い姿を見れば、簡単に無くせるものではないことがすぐにわかります。まぁ、感情論ですね。選手たちの安全を優先すべきか、想いを優先させるべきか、難しいところです・・・

日本陸連がサブトラックに設置するトレーナーステーションにくる子はいわゆる「爆弾」を抱えている子が多く、この1本にかけたい!何とかしてほしいと言ってくるケースもしばしば。本当はストップと言いたいところですが、本人や監督コーチの意志をしっかり聞いて、その上で必要な処置、求める処置をしてあげることが僕たちの仕事です。

無茶なお願いもたくさんありました。でも、真剣な彼らを見ていると簡単に断ることはできません。無理でも自分に何ができるのかをすごく考えさせられましたし、彼らにどう伝えるべきか悩みながらできることを最大限にしてあげたつもりです。

◼︎腰痛を抱えたハードラーの想い

自分がケアを担当した選手の中にもそういう「爆弾持ち」はたくさんいましたが、特に印象に残っている選手が一人います。

その子は地区大会のチャンピオンで今回のインターハイでも決勝に残れる可能性が大いにあったハードルの選手でした。腰の痛みを訴えてトレーナーステーションにきたのですが、症状を見ると伸展型の腰痛。腰を反らすと結構強い痛みを訴えました。ランナーによく見かける腰痛の一種です。

そして、年齢的に注意しなければいけないのが腰椎分離症やすべり症。腰骨の疲労骨折の一種ですが、当然そのリスクは頭に入れながら診ていました。幸いにも1度目の治療でかなり良化。本人の満足度も高く、ハードルを越える仕草がかなりスムーズに行えているように見えました。本人も嬉しそうな表情でレースに向かい無事に予選突破。トレーナーステーションにいるとレースは見られないので、結果はあとで知ったのですが、やはりうまくいってくれると本当にうれしいものです。

ところが、翌朝その子が再びトレーナーステーションに来た時は少し様子が違いました。前日に無事予選を通過したのでおめでとうと声をかけようと思っていましたが、浮かない表情でこっちにやってきます。予選といえど楽なレースではなかったでしょう。レース中は大丈夫だったようですが、朝起きたら痛みが戻っていたようです。

「昨日と同じようにしてください!!」

オーダーされたのは前の日と全く同じ施術。ここに来れば痛みがなくなって走れると信じてきてくれたのかもしれません。ただ、状態が違えば痛みの引き方も違うのは当然のこと。結局、どんなに手を尽くしても痛みを完全に取ってあげることはできず、本人が望むような状態にしてあげることはできませんでした。

前の日とは打って変わって悲しそうで不安そうな顔をしながらレースに向かう姿を見ていると胸が張り裂けそうでした。自分の力不足。あのような子をなんとかしてあげたいと思ってトレーナーを志したのに、治療の結果を出せなかったことが本当に申し訳なかったです。

結果は準決勝敗退。記録も予選の時よりもはるかに悪かったです。その時の状態を考えると「この怪我だったらすぐに痛みが引くもんじゃないから、仕方ないよ。」と言うべきだったのかもしれません。それを伝えて納得させることもトレーナーの大切な役割です。ただ、当時はこの一言がどうしても言えませんでした。それはその怪我の状態を分かっていなかったわけではなく、その時の選手の気持ちに感情移入してしまったから。当時は自分もまだまだ試合に出ていて、結果を出したいと思っていましたし、選手の気持ちが痛いほどわかる。この痛みをなんとかしてあげたい、でも取りきれなくてごめん。そんな感情でした。

◼︎トレーナーの仕事って?

その後、一緒にトレーナーステーションに入っていたベテラントレーナーの方が声をかけてくれました。一連のやり取りを見ていたんでしょうね。きっといろんな想いをぐっとこらえて、ギリギリまで口にしなかったのだと思います。

「こういう大会に来ると、いつも『負けた気分』になって帰る」
「うまくいったこと以上に、うまくいかなかったことのほうが印象に残っているから」
「でも、そういう思いがあるからこそ、またこようって気になるし、もっと頑張らなきゃて気になるんだよ」

そのトレーナーは自分と同じ柔道整復師でした。自分の治療院でオリンピック選手や日本のトップ選手ももたくさん担当していて、県内の強豪校のトレーナーもやっている方でした。そんな方でも「負けた気分」になって帰っているんだなということに、ビックリしましたが、そういう中で揉まれて初めて力がついていくんだなとも感じました。

翌日、そのトレーナーの方がおもむろにテーピングを教えてくれました。とあるトップ選手に実際に貼っているテーピング方法。こんな企業秘密的な技術をさりげなく教えてくれたことが、本当にうれしかったですし、それと同時にこんなことまで教えてくれる以上はもっともっと頑張らなきゃと思ったのは言うまでもありません。

トレーナーステーションは治療院ではありません。その場で全てを解決して痛みをゼロにしてあげることが本来の仕事ではないのですが、選手と共にその時の感情を共有し、そして痛みを分かってあげたかった。未熟なトレーナーでしたが、今の自分の想いにも繋がっている大切な一コマです。

◼︎腰痛とランニングの関係を考える

ランナー向けの情報サイトを作り始めた時に、このエピソードは実はとても大きなきっかけになっています。怪我やトレーニングの情報は常に更新されていますし、最新のもの、更新されたものをきちんと然るべきところに届けることができれば、救われるランナーがもっとたくさんいるんじゃないかと。

ランナーの腰痛に関する記事は一旦まとめましたが、これだけには止まらないですね。。。

今後情報は常にアップデートしていきたいなと思っています。情報によるミスリードを起こさないように、責任は重大ですね・・・

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宮川 浩太@RUNNING CLINIC院長
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