階段でよろける、膝が痛い人必見。球形嚢の活性化エクササイズ
今日は久しぶりに、体性感覚のひとつである前庭覚に関するお話をしていきたいと思います。前庭覚は加速、回転を知覚するシステムのことです。前庭覚を司るのは、内耳にある三半規管と耳石器官からなる前庭器官であり、三半規管は頭部の回転、耳石器は前後左右+上下の加速を感じ取っています。
姿勢の維持には、当然ながら平衡感覚(バランス感覚)が必要不可欠です。平衡感覚とは、具体的に「身体に伝達される揺れ」「回転の動き、加速度、重力方向への負荷」といった情報から成り立っていて、それを知覚するのが前庭覚の役割とされています。
前庭覚の情報に、視覚や固有覚、触覚等の感覚情報が統合されて、姿勢の制御が行われるわけです。前庭覚が機能していない状態として、分かりやすいのが「目が回っている状態」のこと。回転方向に過剰な力が働くことで、前庭覚がほかの感覚を知覚できないことで起こり、立つ・歩くなど日常では問題なく行える動作が、困難となってしまいます。
今日お話ししていくのは、前庭覚を司る器官のひとつ、耳石器にある「球形嚢(きゅうけいのう)」の役割と活性方法です。
球形嚢の活性化エクササイズ
球形嚢は、画像のように耳石器に存在する感覚器官です。同じく耳石器に存在する卵形嚢が「水平方向」の知覚を担っているのに対して、球形嚢は「垂直方向」の知覚を担っています。例えば、日常生活で駅の階段を昇り降りしている様子を想像してください。階段の昇降運動は、身体が前方に移動しながら上下に動いていますよね。
前方移動に関連する卵形嚢、上下移動に関連する球形嚢の2つがしっかり機能していることで、はじめて階段の昇り降りがスムーズに行えるわけです。2つが機能していないと、情報が曖昧になってしまい、脳はその不明瞭な情報を元に動作を形成しないといけなくなります。その結果、足元がおぼつかなくなったり、ゆっくりと動かないと足を滑らせてしまったりするわけです。
場合によっては、早く動こうとして関節部に過大な負荷がかかり、膝を痛めてしまうことも。実際、膝を痛めているクライアントに、球形嚢を刺激するエクササイズを行うと、上下動作がスムーズに行えるようになることも珍しくありません。前庭覚の機能低下が、痛みというアウトプットにつながっているという事例です。
そのため、スクワットに違和感を覚える、膝が痛い、動きがスムーズではないという人は、次に紹介する簡単なエクササイズを先に行い、球形嚢を刺激するといいかもしれません。
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