乳製品が人体へもたらす悪影響
乳製品は栄養価が高く健康に良いという印象が今でも強く残っています。乳製品は長らく「完全栄養食品」と謳われて、老若男女問わず愛されてきました。牛乳などは特に、その傾向が顕著です。
一方で、乳製品でのアレルギーで悩む方も少なくありません。実際に乳製品が人体に悪影響を及ぼすという研究も、最近は多く存在します。具体的には、次のような問題点が指摘されています。
1)女性ホルモンの大量摂取
現在、日本で市販される牛乳には、女性ホルモンが大量に含まれます。経口摂取した、遊離(未抱合体)型のエストラジオールやエストロンの生物活性は、比較的低いとされます。
しかし、エストロンの硫酸抱合体の生物活性は高く、一日の摂取量で換算した場合、環境ホルモン物質や植物エストロゲン(植物性女性ホルモン様作用物質)が発揮する作用の、数万倍に匹敵する量を飲むこととなるのです。
日本で市販される牛乳は、妊娠中の雌牛からも搾乳されます。妊娠中の牛の乳は、卵胞ホルモン (エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)が大量分泌されています。
実際に市販の牛乳を調査したところ、妊娠した牛から搾乳された牛乳には、そうではない牛乳に比べ卵胞ホルモンが約1.5~2倍、黄体ホルモンは約6~8倍も含まれていたそうです。この傾向は、調製粉乳も同じだと考えられています。
(1)免疫機能への影響
女性ホルモンは、細胞性免疫を抑制し、感染症への抵抗力を低下させ、IgE(即時型アレルギー反応を引き起こす抗体)産生を亢進させアレルギーを起こしやすくさせる作用があります。牛乳内の過剰な女性ホルモンが、発達過程にある小児の免疫・神経・生殖(特に男児)に影響する可能性は、少なくないでしょう。
各食品の摂取量を比較すると、1955年を基準にして1975年頃で、牛乳製品、肉、卵摂取量がピークに近づきました。この年は、アレルギーの視点からみると特徴的とされています。
(2)男性への影響(アレルギー)
1986~2000年で、食物由来のアナフィラキシーを起こした患者(154症例:男性86、女性68)の生年を調査した研究があります。すると、1975年以後に生まれた人たちが多い傾向にありました。
2000~2001年、アレルギー検査を行った5,342件について、年齢別でIgE値を調査した研究があります。すると、思春期前まではIgE値に性差はなく、思春期を境に値は減少していきます。
男性の場合、思春期以後は男性ホルモンでIgE産生が抑制されます。しかし男性のアレルギー患者を調べると、思春期以後でも女性よりIgE値が高いと判明しました。つまり、男性の免疫が女性化し、IgE産生が高くなっていたと考えられるのです。その原因として有力と思われたのが、乳製品に含まれる女性ホルモンでした。
日本人は、植物に含まれる植物エストロゲンを、欧米人の約10倍以上摂取しています。遺伝子的には、植物エストロゲンを処理する能力を持っていると考えられますが、約70年前の戦後から習慣化した動物由来の女性ホルモンの処理能力は、まだ獲得途中と言えるでしょう。また女性ホルモンの影響は、男性の精巣がん・前立腺がんの発生増加との関連でも指摘されています。
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