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低負荷でも筋力アップは可能?研究が示す重量だけが正解じゃないトレーニング戦略
トレーニング指導を行っていると、クライアントから「重い重量を持たないと筋力は伸びないのでは?」という疑問を投げかけられることがあるのではないでしょうか。
確かに、従来は「最大筋力を高めるには高負荷が必須」「低負荷では筋肥大も筋力アップも中途半端になる」という考えが一般的でした。
しかし近年、「軽い重量であっても、しっかりと追い込んだりトレーニングボリューム(総負荷量)を確保したりすれば、十分な効果が得られる」という研究報告が増えてきました。
このnoteでは、パワーリフターを対象としたベンチプレスの比較実験と、低負荷での筋肥大に関するレビュー研究の2つに焦点を当て、具体的にどのような結果が示されたのかを解説します。
研究①:パワーリフターのベンチプレス比較研究
まずご紹介するのは、熟練したパワーリフターを被験者とした興味深い実験です。ここでは「低負荷・高ボリューム(LL-HV)」と「高負荷・低ボリューム(HL-LV)」という2種類のベンチプレス方式を12週間続け、筋力や挙上速度、腕囲・胸囲などがどのように変わるかを比べました。
LL-HV群:1RMの45〜60%程度という比較的軽い重量で、高回数のベンチプレスを行う
HL-LV群:1RMの75〜90%という重い重量で、回数を少なめに設定して行う
いずれの群も、セット数やその他の補助種目の総ボリュームは極力揃え、違いが出るのは「最初のベンチプレス1セットの負荷・回数のみ」という設計です。
結果、最大筋力(1RM)は両群とも有意に伸びただけでなく、低負荷で高回数をこなしたLL-HV群も高負荷群に劣らぬ伸びを示しました。
また、80%1RMでの挙上速度はLL-HV群のほうが向上率が高かったほか、腕囲などの形態的変化もやや優位に出ました。つまり、「重い重量にこだわらなくても、しっかりと追い込めば筋力が十分伸びる可能性がある」という結果が出たのです。
なお、被験者はパワーリフターなので元々のトレーニング経験値が高く、フォームが安定していたり余力などの自己調整が上手だったりする点も、効果を後押ししたと考えられます。
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