姿勢を決めるのは筋力・筋肉量・骨格ではない? カギを握るのは情動と身体所有感
トレーナーや運動指導者にとって、姿勢を正すなどの姿勢改善にアプローチする場合、機能解剖学的な観点や筋肉の強化、ストレッチやリリースによる弛緩を通じて姿勢改善を図るケースが多いと思います。
しかし、姿勢は筋力が強い・弱いという話だけで収まるものではないということを、トレーナーは理解する必要があるわけです。今回はその点にフォーカスを当てて、姿勢は情動から作られるという話をしたいと思います。
識別系と原始系という2つのシステム
姿勢の話をする前に、脳に備わっている「識別系」と「原始系」という2つのシステムについて解説します。
識別系とは、脳において「環境からの情報を分析し、判断を下すシステム」であり、高度な認知能力や意識的な思考に関与しています。大脳新皮質の特に前頭前野を中心としたシステムで、言語理解、論理的思考、計画の立案、問題解決などの役割を担っているのが特徴です(例:複雑なパズルを解く、相手の発言の意図を理解するなど)。
識別系は「何が起きているか」「どう対応すべきか」を認識し、より精密な判断を行うために発達しました。人類の長い歴史に照らし合わせれば、進化の過程で生まれた比較的新しい機能といえます。
一方、原始系は「生存や基本的な感情、反応に関わるシステム」です。無意識的・本能的な反応を司るのが特徴で、大脳辺縁系(特に扁桃体)、視床下部、脳幹などが中心となっています。
原始系は、例えば恐怖を覚えるシーンで「逃げるor戦う」といった反応に関わったり、空腹や性的欲求などの基本的な生理的欲求の制御にも関わったりしています。原始系は人類や他の動物に共通する機能であり、生存に直結する行動や感情に深く関与している、文字通り「原始的」な能力なのです。
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Brain Special Magazine
運動指導者の方へ向けて「脳」について理解し、パフォーマンスを高め機能改善などを行えるように学べるコンテンツです。
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