上手に“寄り目”できますか?輻輳運動のエクササイズで集中力を底上げする
いきなりですが、皆さんは最近「寄り目」をしましたか? 実はこの寄り目の運動が上手にできるかどうかは、日常生活の認知機能や集中力に大きく関連すると言われています。今回は、そんな寄り目に関わるさまざまな知識をお伝えしつつ、寄り目を通じて認知機能を鍛えるトレーニングを紹介します。
ピントを合わせる能力が低いと集中力が低下しやすい
寄り目のように、両目を内側へと寄せて近くの物体にピントをあわせる運動を輻輳運動(ふくそううんどう)と呼びます。この能力は、近くの物体を見るときに重要な役割を果たします。
現代人のほとんどは、毎日スマホで何らかの情報を得ています。仕事中はパソコンじっと見ているでしょうし、読書が好きな人なら本を手にとって目で文字を追いかけるでしょう。
私たちの目は、動画やテキスト、あるいは友人・家族など見ようと思っている目標物に対して、神経による情報伝達と目を動かす筋群の適切な緊張によって両眼の視線を目標に合わせます。これがいわゆる「ピントの合った状態」です。両眼で捉えた目標物を脳が統合・処理することで、対象物を立体的に捉えられるのです(これを「両眼視」といいます)。
しかし、左右の視線をそろえて、両眼で対象物を捉えられないという状態があります。これが「斜視(しゃし)」です。画像のように、片方の視線が対象よりも内側を向いている状態を「内斜視」、片側の視線が外側に向いている状態を「外斜視」と呼びます。
他にも、片側の視線が上を向く上斜視、片側の視線がい下を向く下斜視などもあります。
さて、斜視などでピントが合わない状態が続くと、当然文字を読む・映像を見る際に支障をきたします。特に現代人の場合、毎日PCやスマホを見るので寄り目=輻輳運動ができることは視覚情報処理能力に直結します。輻輳運動を通じて対象物に視線を向けることは、集中力の維持にも欠かせません。
対象物にピントを合わせるのが苦手な状態が長引くと、長時間集中して物事に取り組むことが難しくなります。
実際に、ADHDの子どもは脳機能の異常により、一点を集中して凝視するための眼球のコントロールが難しいとされているようです。こうした特性が、長時間の集中が苦手ですぐ席を立ってしまう、おしゃべりといった行動につながってしまうのかもしれません。
確かに、目でうまく情報を処理できないとなれば、どうしてもイライラしたり気が散ったりしてしまいますよね。
斜位と斜視の違い
ちなみに、斜視とよく似た言葉に「斜位」があります。斜視は左右の視線が一致していない状態のことを指しますが、斜位はもともと左右の目の向いている方向に違いが見られている状態です。斜位の場合、しっかりと両眼視はできているものの、眼球の向きのズレを微調整していうため、眼精疲労が起きやすいとされています。目の向きのズレが強いと、物が二重に見えてしまうケースも多いです。
斜位を矯正する場合、専用のメガネ・コンタクトレンズの使用や遮閉法というトレーニングの実施、手術による治療などが選択されます。
現代人に増えているスマホ急性内斜視
斜視には先天的要因と後天的要因に分けられます。後天的要因の場合、脳神経麻痺や脳出血といった危険な病気の兆候が考えられるので、早めの検査が必要です。その一方、現代時には「スマホ急性内斜視」という斜視の傾向も見られます。
スマホ急性内斜視の特徴は、長時間のスマホ・タブレットの使用です。スマホを操作するときは寄り目で近距離を眺め続けることとなるため、内直筋の緊張が取れず寄り目が戻らなくなってしまうのです。超至近距離かつ同じ姿勢でスマホを見る、寝転がりながらスマホを使う、深夜に暗い部屋でスマホを使うといった行動は、なるべく避けたほうがいいでしょう。
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