リノール酸を見直す。炎症作用と健康作用はトレードオフの関係なの?
多価不飽和脂肪酸で、健康にいい方。そういわれると、なんとなくオメガ3、α-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)と答える人が多い気がしいます。実際、薬学・栄養学的観点の両方で、オメガ3は特に心血管の健康について、何十年も研究されてきました。
今日のテーマは、「じゃない方」つまりオメガ6の話です。代表的なオメガ6と言えば、生活でも目にしやすいリノール酸ですよね。リノール酸は健康にいい影響はあるものの、炎症性エイコサノイドの前駆体という事実から、摂りすぎを心配される声が多いです。そんなオメガ6の健康面にフォーカスした話をしたいと思います。
リノール酸の生化学的性質
リノール酸は、私達の食生活でおそらくもっとも身近にある多価不飽和脂肪酸で、必須脂肪酸なので体内で合成できません。一説では、欠乏症を防ぐために1日2gのリノール酸が必要とされています。普通に生活していれば、まあ問題なく摂取できる量と言えるでしょう。
オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸は、ほぼ同じ代謝経路をたどるので、必要となる酵素も一緒です。そのため、オメガ6系を過剰に摂取するとオメガ3系の代謝経路とのバランスが崩れて、炎症促進作用の高いアラキドン酸が増えてしまうとされています。
リノール酸は、脂肪消化(リパーゼによる加水分解や胆汁酸塩による乳化)の後、小腸の内腔から腸管細胞によって吸収されます。その後、腸管細胞の中でトリアシルグリセロールに※再エステル化され、さらにリン脂質やコレステリルエステルに再エステル化されます。その後、リノール酸はカイロミクロンに取り込まれ、血流に乗っていきます。
リノール酸が細胞内に入ると、組織の種類やエネルギー要求量に応じて、細胞膜に取り込まれたり、代謝反応に利用されたりします。血漿中では、リノール酸は主に(約30%)が血漿中に濃縮され、LDL(約35%)とHDL(約30%)によって輸送されます。残りは、血小板と赤血球膜によって輸送されています。血中のLA濃度ですが、新生児では全脂肪酸の約4.6%と非常に低いものの、小児期と成人期で18%程度まで上昇します。新生児は成長と発達のため、非常に多くの脂肪酸を必要とすることが、この数字の要因と考えられています。ちなみに、リノール酸の血漿中濃度は男性よりも女性の方が高い傾向にあるようです。
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