漫画原作「成実 ー勇武無双ー」後編
① 伊達家・本陣
伊達家の本陣。
伊達政宗に向けて、放たれる矢。
小十郎「殿! 危ない! 」
叫ぶ片倉小十郎。政宗目掛けて一直線にめがけて来る矢が迫る。
政宗「何の! 」
持っていた軍配で矢弾を防ぐ。
② 伊達家別動隊の陣
別動隊の陣。伊達成実と伊庭野遠江と家来達。皆どうして良いのか困惑。
成実「どうする、遠江? 我等は本陣の政宗の兄貴達を助けに行くか? 」
両手を組む。
遠江「しかし、成実様連合軍の兵士が行く手を阻んでいます。突破するには、命を捨てる覚悟がない限りは突破できませんぞ」
不敵な笑みの佐竹義重と連合軍の兵士の図。
成実「畜生! 伊達家もここで終わっちまうのか!」
陣の机を叩く。
遠江「全ては、佐竹義重の策略通りに事が進んでいます」
家来参「本陣より、殿の使いの者が来ました! 」
遠江「!? 」
成実「通せ」
現れる本陣からの使い下郡山内記(イメージ筧利夫)。
内記「伊達家本陣より、殿の伝令を預かって来た下郡山内記(したこおりやまないき)と申す」
挨拶。と同時に『伊達家家臣 下郡山内記』と言う文字が表記。
内記「現在の伊達家の本陣の状況を伝えます」
固唾をのんで聞く、別動隊一同。
内記「人取り橋を越えた連合軍の猛攻で本陣は総崩れになりました。殿を退かせる為、鬼庭左月斎様が人取橋に突入し討ち死に」
人取橋の敵陣に家来と共に突撃する老将の鬼庭左月斎(イメージ山崎努)。
遠江「左月斎殿が! 」
内記「殿を救わんが為に、高倉城の伊東肥前様も敵陣に打って出ましたが討ち死!」
家来と共に敵陣に突入する伊東肥前(イメージ佐々木蔵之介)。
成実「なんてこった」
顔を下に向ける。
内記「そして、殿よりの成実殿へ伝言をお伝えします。急ぎ、成実殿とその家臣は退却しろとの事です」
成実「! 」
遠江「殿が亡くなれば、成実様が伊達家の中心にならなければならない」
成実の顔を見る遠江。
成実「どうする? 」
目を閉じる。
➂回想・資福寺
資福寺。階段と大きな門と本堂。
N 「ここは出羽国(現在の山形県)の資福寺。幼少期の伊達政宗と伊達成実が過ごした場所である」
本堂。本堂の前には、幼少期の政宗(梵天丸)と成実(時宗丸)がいる。
梵天丸「時宗丸!」
眼帯を付けた子供の梵天丸。と同時に『梵天丸(後の伊達政宗)』と言う文字が表記。
時宗丸「ハイ! 梵天丸様! 」
おとなしそうな子供の時宗丸。と同時に『時宗丸(後の伊達成実)』と言う文字が表記。
梵天丸「お前の夢は何だ? 」
駆け寄る時宗丸。
時宗丸「私は、誰にも負けない強い武将になりたいです! 梵天丸様は? 」
両手を強く握って言う。
梵天丸「俺か、俺はウーン・・・」
両手を組んで考え込む。
そして、青空を見上げる。
梵天丸「俺は、奥羽を統一、いや、この国の統一だ」
空を見上げて言う。
時宗丸「梵天丸様凄いですね! 」
梵天丸「いや、時宗丸難しいけどな。お前や小十郎となら、出来そうな気がする」
時宗丸「ハイ! 」
目を輝かせて言う。
N 「こんな時に、昔の事を思い出しやがる・・・」
➃伊達家別動隊の陣
別動隊の陣。
成実「決めた! 」
目を開ける。成実を見る遠江、内記、家臣達。
成実「俺は、退却せんぞ」
遠江「成実様! 」
成実様「俺は、兜の百足で誓った! 一歩も退かんとな! 」
成実の百足の兜の前立てのアップ。
成実「政宗の兄貴いや政宗様を生かす為、俺が命を捨ててでも、政宗様を退かせる為に活路を作る! 」
強い決意の成実。
遠江「貴方と言う人は・・・」
成実を見て言う。
成実「内記殿」
内記「何でしょうか? 」
成実「本陣に戻って、殿にこう伝えてほしい。成実は退却しない、代わりに成実とその一党が退きの活路を開くと」
内記「成実殿心得ました! 」
一礼する。
成実「遠江! 瀬戸川館の別動隊の兵の数は! 」
遠江「五百名余りです」
成実「よし! 活路を開く策はこうだ! 」
固唾を飲む遠江、家臣達。
成実「本陣を攻めている連合軍の側面に突入する!」
家来四「敵の真っ只中とは危険すぎるのでは!? 」
成実「否、そこが、連合軍の盲点だ。攻め込んでる側面(よこ)から、死ぬ気で攻撃してくる奴らが来るとは予想もせんだろう」
腕を組んで言う。
遠江「成程、成実様」
成実「側面から突入後、真正面に移動して、連合軍を撹乱させる。その隙に、殿達には退却してもらう」
回想・馬に騎乗した成実達が、多量の足軽や武者達と戦う図。
成実「皆の者、俺に命を預けてくれ! 殿、否伊達家の危機を我等で救うぞ! 」
遠江・家臣一同「はっ! 」
➄伊達家・本陣
本陣。
伊達家対連合軍の死闘が展開。
政宗が騎乗、槍を使用し戦闘。
政宗「この! 」
馬上で槍を振り回し戦う、徒歩武者と戦闘。
敵武者一「大将の伊達政宗だ! その首貰った! 」
刀で切り掛かる。
政宗「俺もここまでか! 」
必死に戦う。
声 「我は! 伊達家総大将伊達政宗なり! 」
政宗「!? 」
遠くで自分を名乗る声がしたので驚く。
小十郎「伊達家の者よ! 今こそ、命を懸けて戦う時ぞ! 」
馬に騎乗し、槍を上げて言う。
政宗「小十郎・・・」
敵武者一「アッチが本物だと! 」
隙を見た政宗。
政宗「どこを見ている! 」
徒歩武者に、槍を上から叩きつける様に攻撃。
政宗を発見した小十郎。
小十郎「小十郎よ何をやっている! これより、連合軍を迎え撃つぞ! 」
政宗も小十郎を発見。
政宗「ハッ! 殿! 」
小十郎「丸森の合戦での経験が役に立った! 私は政宗様貴方の右目! 死ぬも生きるも一緒です! 」
突進する。
政宗「全く俺の初陣を嫌でも思い出させよって! 」
苦笑い。
政宗「さあ来い! 連合軍共! 」
徒歩武者達と戦闘を再開。
⑥平地
平地。連合軍の伊達家の本陣への総攻撃が続く。
成実「別動隊突っ込め! 」
そこへ、大太刀を持ち、騎乗した成実が突進。
馬で突進し、騎乗しながら、大太刀を叩く様にして振るい徒歩武者を攻撃。
成実に続き、騎乗した遠江、別動隊の騎馬武者、徒歩武者、足軽達が連合軍へ突撃。
真っ先に、馬で敵の真っ只中に突入する成実。
成実「俺は勇武無双の武将の伊達成実だ! 俺の首が欲しい奴はかかって来い! 」
名乗りを上げる。多量の兵が成実に攻めて来る。
成実「上等だぜ! 」
攻めて来る兵に向かって、ニヤリと笑う。
遠江「成実様に続け! 」
遠江や騎馬武者も戦う。
別動隊の徒歩武者、足軽達も連合軍に向かって、刀で突いて、槍で叩く等して、攻撃を開始。
兵士参「成実様だ! 」
兵士四「別動隊が来てくださった! 」
別動隊の加勢で、伊達家の兵士達も勢いを取り戻し、反撃開始。
⑦連合軍本陣・内部
再び連合軍本陣。
家来四「義重様! 」
義重の家来が急いで登場。
義重「どうした? 」
家来四「伊達家本陣を攻めている我が軍が立ち往生しています! 」
義重「何だと! 」
立ち上がる。
家来四「伊達家の別動隊が本陣を攻めている我が軍に突入して、混乱状態にあります! 」
回想・足軽と戦う馬に乗った成実。
義重「伊達成実か! 」
苦々しい表情。
⑧平地
平地。成実達別動隊と連合軍が死闘を展開。
下馬して、大太刀で徒歩武者や足軽達と戦う成実。
成実「やっぱり、馬から降りて戦った方が良いぜ」
敵足軽達「ウオー!」
成実に対して、刀を抜いて攻撃する足軽達(足軽は統一感のない軽装の装備)。
成実「甘いぞ! 」
向かってくる足軽に対して、大太刀を殴る様にして、攻撃。
成実「ハッ! 」
大太刀を先で鎧が保護されていない部位を斬る。
敵足軽壱「ヒィッ」
斬られた足軽が目の前に倒れる。
遠江「成実様! 大丈夫でしたか! 」
遠江も下馬して救援に来る。
成実「遠江! スマン! 」
連合軍の足軽対成実と遠江の戦い。太刀で戦う成実、槍で足軽を払って戦う遠江。
敵武者弐「覚悟! 」
成実を長柄槍で突いて攻撃しようとする敵徒歩武者。
成実「何の! 」
槍の突きを回避後、急いで槍の柄を片手で掴み敵徒歩武者から取り上げる。地面に突き刺される槍。
成実「隙だらけだぞ! 」
太刀を殴る様に使用して、倒した後に鎧で保護されていない部位を大太刀の先で斬る。
成実に向かって、騎馬武者が突進してくる。
敵武者三「お命頂戴! 」
槍を握った騎馬武者が奇襲。
槍を上から叩くように戦う騎馬武者。太刀で応戦する成実。
成実「こっちは、不利か!」
焦る成実。
成実「!! 」
先程の地面に突き刺さった槍を発見。
成実「やってやるか! 」
何かを思いつく。
敵武者三「成実! 覚悟! 」
槍を持って迫り来る。
遠江「成実様! 」
別方向に居た遠江が叫ぶ。
成実、急いで突き刺さった長柄槍を引き抜く。
成実「行け!」
槍を騎馬武者に向けて思いっ切り叩きつける。
敵武者三「うげぇ」
槍、騎馬武者に首に直撃。地面に倒れる。
遠江「ハッ!」
駆け付けた遠江が槍で倒れた騎馬武者に止めを刺す。
遠江「大丈夫でしたか? 」
成実「急げ! 合戦に戻るぞ! 」
太刀を握り、合戦に戻る。
N 「成実達別動隊の活躍により、息を吹き返した伊達家は総大将の伊達政宗の退却に成功した」
足軽や徒歩武者達と戦う成実と別動隊。
⑨合戦終了
合戦が終了。刀や槍が地面に突き刺さったり、兵士の亡骸が横たわっている。
N 「こうして、人取橋の合戦は終了した」
⑩退却1
退却していく伊達家。
N 「勝敗については、色々と解釈があるが、伊達成実の書いた『成実記』には、人取橋
の合戦は、伊達家・連合軍の武分かれ(引き分け)に終わり、伊達家は一陣地も取られなかったと書かれている」
馬に乗り退却する成実。
N 「そして、連合軍は」
⑪退却2
退却する連合軍。
N 「佐竹義重の留守中に、水戸城の城主江戸重通が義重の留守を狙い領地の常陸に侵攻。この報を受けた義重は人取橋の合戦の最中退却を余儀なくされた」
義重「重通め! 」
苦々しい表情。
⑫本宮城
本宮城。城門。
N 「本宮城。伊達家の居城」
奥御殿。立派な作りの屋敷。
N 「そして、幾日か立った日の事」
正装の成実が登場。
小姓が守護する襖の前に立つ成実。緊張な面持ちの成実。
成実「入ります」
襖が開く。現れたのは、正装の政宗、小十郎、伊達政宗の正室愛姫(中央に政宗と愛姫、右脇に小十郎)。
政宗「良く来た成実! 」
笑顔の政宗。
成実「政宗の兄貴! 小十郎の兄貴! 良くご無事で! 愛姫(あねうえ)も! 」
政宗「その言葉何とかしてくれんか! 罷りなりにも俺はお前の主だぞ! 」
デフォルメ調の表情。
成実「スンマセン」
デフォルメ調で謝罪。
愛姫「良いではありませんか。殿と成実殿は、子供の頃から、兄弟同然に過ごしてきた間柄、合戦や公務のない時は義兄弟(きょうだい)仲良くすれば」
間に入る愛姫。『伊達家 伊達政宗正室 愛姫(めごひめ)』と言う文字が表記。
政宗「オイ、愛姫」
困惑気味の政宗。
成実「姉上、いや、奥方様かたじけない」
一礼する。
愛姫「いや、良いんですわよ~」
笑顔の愛姫。その様子を冷静に見ている小十郎。
政宗「話は変わるが、成実よ此度の合戦、別動隊を率いて、良く戦ってくれた。礼を言うぞ」
成実「有難き事と存じます」
頭を下げる。
政宗「お前が連合軍に突入しなかったら、俺の命がなかった」
頭を下げる成実を見て言う。
成実「殿、先程の合戦で、火縄銃で撃たれたと聞きましたが大丈夫ですか? 」
政宗「大丈夫だ! 掠り傷だし、具足が丈夫だったんで、この通りピンピンだ! 」
右手を回す。
小十郎「殿! 先程の合戦は命を落としかねない事は何度もありましたよ! 」
一喝する。
政宗「スマン、小十郎」
苦笑いで、平謝り。
小十郎「この合戦、伊達家の多くの武将達が討ち死にしていきました。鬼庭左月斎殿、伊東肥前殿、伊庭野遠江殿・・・」
小十郎の脳裏に討ち死にした武将の顔が左月斎、肥前、遠江の顔が浮かぶ。
政宗・愛姫「!」
遠江の名前を聞いて、成実の顔を見る。
ぐっとこらえる成実。
成実「遠江には、ずっと俺と一緒に戦って欲しかった・・・」
小十郎「スマン・・・」
成実「大丈夫です! 」
立ち直ろうとする。
政宗「しかし、此度の合戦は、武分けであって、勝ってはないな」
成実「でも、殿負けてはいません! 」
小十郎「その通りだ。雪辱は機会はいつか来る。その時は、伊達家は勝たねばならんぞ」
頷く。
愛姫「でも、私には勝利です」
成実・政宗・小十郎「!? 」
愛姫の一言に驚く。
愛姫「例え、戦に負けたとしても、殿が、小十郎殿が、成実殿が伊達家の家族の人達が生きて帰ってきたら、それは私の勝利です」
真剣に聞き入る三人。
愛姫「戦での勝利は、次では構いません」
笑顔で説く。
成実「奥方様に、一本取られましたな」
一同笑う。
N 「伊達家最大の危機である『人取橋の合戦』を経て、4年後の天正17年の『摺上原合戦』で、伊達政宗と伊達家は奥羽の覇者となるのである」
青空と本宮城の画。
(完)