『牛乳配達DIARY』を読んだ
変な時間に寝て変な時間に目が覚めてしまったので、届いていたこの漫画を読んで感想を書いてみる。
『牛乳配達DIARY』はツイッターで佐久間宣行さんが「数話読んだら面白かった」みたいなことを呟いていて、気になったので買ってみた。(…佐久間さんじゃないかもしれない、じゃなかったらすいません。)アマゾンでも品切れ中で、話題の漫画なんだろうか。
作風はガロ〜アックスに載ってそうというか、久しぶりにこんなサブカル臭の強い漫画を読んだ気がする。ヴィレッジバンガードで漫画を買い漁って悦に入っていた学生の頃を思い出した。当時は初期の古泉智浩作品に憧れていたが、この作者さんは大橋裕之さんあたりだろうか。…と思ったら巻末の作者紹介のところにしっかりそう書いてあった。(こんなところで予知能力を使ってしまった。)
作者さんもたぶんそういうのが好きで、ちゃんとそういうのに受けた影響を紙の上にバーっと出して何ページも描き続けられる才能を持った人なんだろう。
本編にもちょくちょく挟まれるフレーズで、帯にも書いてあった「漫画みたいなことがあって面白かったので漫画にしてみた」というのに惹かれたのだが、特に大きな事件があるわけでもなく、ひたすら牛乳配達員さんの些細な日常的なやりとりが時折映画みたいなカットで描かれていた。漫画みたいというのはあくまで作者さんにとっての感覚で、正直全然漫画みたいじゃなかった。でもそれがオシャレに見えて羨ましかった、羨ましさから今もこの感想文を書いているところがあります。
個人的にはこの「ハクモクレン」の話が好きで、配達中にハクモクレンのスケッチをしている若い女性と話す機会があって、今はまだ見せられるものじゃないけど配達の帰りにはスケッチも終わるからと言われ、どう感想を言おうか考えながら配達していたけど結局その女性はいなかった…みたいな短い話で、牛乳配達したことはないけどわかるというか、先行あるある体験というか、この一話だけで完成されてる気がする。
人生ってそういうことが多分にあるよな〜、そういう人生の余計なワンシーンみたいなものほど切り取ると味わい深いよな…と、一応自分も漫画を描いている身として、久しぶりにそこに立ち返ることができた、ありがとうございます。
1冊通しで読んでいて、時々「ドヤ感」を感じることもあった。これはただ俺がひねくれてるだけだから俺側の問題なんだけど、痴呆症の旦那さんとその奥さんのところにサンプル配りに行った時の話とか、「ここ切り取ってやったど感」が気になったりして、ちょくちょくそれを感じるエピソードというか、ページ、コマを見つけては、この作者さんの持つ才能、ワールド、空気感にどっぷり浸かることができなかった。処女作だとか関係なく、その人の持つ「いやらしさ」って、胸のあたりから手を伝って出るものだ。そのいやらしさを含めて好きになれるかどうか。漫画は難しい。