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「東京は冷たいって本当?」

東京は冷たい。
よく聞く言葉。耳にタコができるくらいよく聞く。

東京出身の僕はいつも違和感を感じる。
というか、
東京出身とか関係なく違和感を感じる。

なぜなら僕は優しいからだ。

どこに行っても誰と会っても「あなたは優しい人だね」とよく言われる。
そう、僕は優しさの権化なのである。

僕と比べてバファリンなんて優しさ成分が50%しか無いのだからきっと余裕で勝てるだろう。

だって、
先日も自転車の後輪にロングスカートを巻き込んでしまっていたおばさまがいて、スカートが傷付かぬように取り外したし、

老夫婦のお爺さんが転んでしまい、足が悪く立ち上がれず、お婆さんも持ち上げられずにいるところをわざわざ自転車から降りて助けたし(言いかたが恩着せがましい)

とにかくすぐにサッと声をかけたり助けたりする。

それに対して「えっへん!今日も良いことしたぜ!」なんて全然思わない。
人に優しくすることが当たり前なのだ。
そう、なぜなら僕は優しさの権化だから(もうわかったよ、うるさい)

そんな僕が、

昨日、
自転車に乗っていたら、近所の細道で結構な速度を出した原付とぶつかりそうになった。ある程度予期していた僕は咄嗟に急ブレーキしたが、逆ウィリー状態になり、股間と左脛を強打し、蹲った。

原付のドライバーは心配するどころか焦って更に速度を上げて去っていく。

ブーーーーン

.....。


やはり東京は冷たいのかもしれない。

確かに
真っ正直に
「だ、、大丈夫ですか?」
なんて声かけたら、

「てめぇ、ふざけんなよ。警察呼ぶからな」
なんて大変な目に遭ってしまうから、もしかしたら僕でも逃げてしまうのかもしれない。優しさの権化である僕であったとしても。

実際病院に行くほどの怪我はしてない。膝にたんこぶ、股間に打ち身となぞの擦り傷くらい。
いや、結構痛い。なにせ蹲っているというのが現実。

でも、生きているわけだし、そんな病院行くほどの怪我でもないので、
もしも「大丈夫ですか?」
と言われたら、
「あ、、はい、大丈夫です」
と、僕は言ってしまうだろう。

オーマイゴット。

東京で見せる優しさは時として、いや、大体が損をする性質を持っているようだ。

そんな東京での「優しさ損」を考えながら蹲っていると、目の前に女子大生らしき女の子が通り過ぎようとしている。
おそらく5m前くらいから僕と原付の一悶着を目の当たりしていたであろう女の子。
その女の子が僕の真横を通り過ぎていく。
ぼくはまだ痛みが治らず蹲っている。
ふと顔を上げた僕と、その女の子はチラリと目が合った。

(なに、その冷たい目、、、)

女の子は全く興味ないとでも言った感じで僕から目を逸らし去っていく。

人が路上で蹲っているのに!??

東京よ、これが本当の東京の人々の真実の姿なのかい?

いや、
きっと僕に意識があるから命に別状はないと判断したんだろう、、、


でも、
やっぱり、

東京は

冷たかった。

サドルに座った時の痛みを堪えながらも僕はその後無事家に辿り着き、

事の全てを妻に話した。

妻は
「散々な目に遭ったね。事故らなくて良かったよ」と心配してくれた。

そして、

「これ買ってきたんだ。食べよう」

と、
僕が気になっていたレストランのテリーヌをテイクアウトで買ってきてくれていた。

や、優しい。

東京とかそんなんどーでも良いけど、

目の前の人に優しくしていたら、

あなたの生きる世界は
みんな優しくなる。


そう思う今日この頃。

テリーヌうま。

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