すなをとむらうやうに。
海を見に行こうと思った
でも、海は怖いと思った
海底の真っ白な砂は掬い上げれば
私の指の隙間を通り抜ける
その中に宝石はあった
私はそっと、その透明な光を集める宝石を
静かに砂の下へと沈ませた
ある日私は宝石の場所を見失った
鯨の声は遠くて、おぼろげで、
優しくて、そして怖いと思った
その歌声に抱きしめられてしまったなら
私は放り出されてしまったこの世界で
生きることができないような
そんな気がした
空に散りばめられた星を
なぞる指先で繋げてみたいと思った
でも、空は怖いと思った
天井のように見える空はどこまでも続いていて
死んでしまったなら、
まるで奈落の天国へ落ちていくようなのだと
生かされているみたいな私の希望は無くなって
星屑も結局はただの屑だと
真っ逆さまに
真っ逆さまに
真っ赤な蠍座の目玉に追いかけられた夏の夜は
誰も傷つけたくないと飛んだ夜鷹を思い出して
誰にも傷つけられたくない私は
地べたを這ってさらさらと泣きました
空と海とが逆転するような
鯨が空を揺蕩うような
そんな夢を見ていたい
光に閉じ込めてしまった小さな小さな宝石は
どこかの国へ流れつきましょう
心地よい砂の上を裸足で歩いたなら
ガラス破片で切れた足底でさえどうでもよくなる
そんなしあわせがあってもいいのですか
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?