手塚治虫 (火の鳥<異形編>)
(『マンガ少年』1981年1月号~1981年4月号)
この「異形編」は41年前のもの。
比較的新しい方だから(えぇ~~っ!自分はまだ生まれてないよ!などと言わないで欲しい・・・笑)
絵柄などが若い人たちにも読みやすいのではないかと思う。
「火の鳥」の話は長大な時間の流れの中で生き、そして死んでいく人間たちの姿を
「輪廻転生」的な世界観を手塚流の解釈を踏まえて描いていく壮大な物語だ。
この『異形編』では、限られた場所で30年間という時間の輪の中に閉じ込められた尼御前(左近介)の話が描かれている。
父が助かると大勢の人間が殺される・・・そのためには尼御前を殺さねば・・・と考えた左近介は尼御前を殺す。
しかし、その尼御前こそ自分自身の姿だったのだ。
そして・・・未来永劫自分は自分に繰り返し殺され続けるのだ!
「火の鳥」は「尼御前(左近介)」に語る・・・。
『しいたげられた不幸な人々を無限に救いなさい
それこそ無限に!
(中略)
この世界のほかにも さまざまな世界があるのです
その者たちをあなたがたは妖怪(もののけ)と呼んでいる
悪霊とも魔性とも餓鬼とも呼んでいます
でも さまざまな世界で
そのものたちはりっぱに生きています
そして どの世界にもしいたげられたものは
無数にいるのです』
壮大な「火の鳥」の物語をぎゅーっと圧縮して
テーマをより鮮明にした感のある作品だ。
100ページ少々の原稿にこれだけの深いテーマ性を秘め
尚且つ、説教臭さもなく
「不思議な世界」で起こる「不思議な出来事」として
読者を「物語世界」にぐいぐいと引き込んでいく
手塚治虫の力量にはただただ感心するばかりだ。