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同い年のはとこ男子3人。【ひねくれ育児日記】

義祖母の七回忌で島根県大田市温泉津町へ。

義祖母は子どもが5人いて、孫が12人、ひ孫も5人くらい。東京、大阪、和歌山、島根から30人ほどが集まった。結婚した孫も、ちゃんとひ孫を連れてやって来る。それだけ聞くと、しきたりを重んじる家のようにも見えるが、実際は法事と会食だけ集まって、あとは自由行動。お互いにできるだけ気を使わなくて済むよう配慮されている。孫たちも、それぞれ法事を組み込んだ家族旅行を計画して参加した。
親戚一同が集まるのは義祖母の納骨で集まって以来、5年振りだ。その間に息子が産まれた。聞けば、同い年の男の子があと二人来るらしい。息子にとっては、はとこにあたる。

当日、お寺の入口の前で一人目の子に会う。5年前にお会いして見覚えのある夫婦の妻さんが、男の子を抱っこしていた。横にいた夫さんが「いやいや期で、中に入るのをいやがって」と。うちの息子も先ほど、着替えるまで盛大にいやいやをしていた。そこで少しお話しする。
建物の中に入ると、遠くにもう一人の子が見えた。抱っこしていたお母さんと目が合って、目でご挨拶しあう。

法事が始まる。ご住職が「少々お経が短くなっても、意味がわかっている方がいいでしょう」と、重要なところを解説してくださってからお経が始まった。
息子は最初は割と大人しかったが、そのうち飽きてもぞもぞし始めたので、電車のおもちゃを渡す。すると私と夫の足元で、連結しては外すを繰り返し始めた。かちかちという音は小さいが、やや焦る。

焼香が始まり、二人目に会った子はお父さんと一緒に焼香台の前まで進んでいたが、息子は拒否。そして焼香から戻った私にいろいろしゃべり始めたので、連れて部屋の外へ。
こんな時のためにシールブックを家から持ってきたはずが、お寺に来る前にどうしても荷物の中から見つからなかった。代わりに持ってきたトミカのシールを渡すと、なかなかの食いつきで、ご住職のお話が終わるまで、縁側でシールを台紙に並べて貼っていた。
一人目の子は寝てしまったようで、お母さんが抱っこしたまま焼香していた。二人目の子はお母さんの膝の上でずっと大人しくしているようだった。

宿泊している旅館内に設けられた会食会場へ。子ども用のお膳が準備されていた。ハンバーグにエビフライ、好き嫌いの多い息子でも食べられそうなものが結構ある。しかし息子の食はなかなか進まない。普段から頼みの綱にしている白いご飯ではなく、見慣れないいなり寿司だったことも影響したのかもしれない。いなり寿司を3口ほど、他のおかずも少々食べたところで完全に手が止まってしまう。横から口に運んでも食べない。
ふと顔を上げると、さっきの二人目の子が自分でスプーンを持って口に運んでいるのが見えた。一人目の子はまた部屋に来るのをいやがって、お母さんと一緒に他の部屋で食べているらしい。

食べないが、息子はいつもの調子で元気だった。私の椅子に登って背中の後ろに立って、最近気に入っている「げんこつ山のたぬきさん」を大きな声で歌う。そのうち、私の向かいの親戚の女性と、歌の最後のじゃんけんをやり始めた。高校生くらいの娘さんと並んで座っていた、母親の大先輩であるその方。にこにこして付き合ってくださるのがありがたい。

食べ終えた二人目の子をお父さんが連れて、「いっしょにあそぼ」と誘いに来てくれた。宴会場の隅へ移動。二人目の子はトミカを5台と、持ち運びできるマップを持っていた。息子は興味津々。気がつくと、息子は自分の1台しか持ってきていないトミカと、二人目の子のトミカを一緒にして「これはーなんかいばしゅ、これはーぱとろーるかー」と、全てを我が物顔にして遊んでいた。「すみません」と言うとお父さんが「いやいや、一緒に遊べてうれしいね」とお子さんに。この懐の広さを私も持ちたい、と思う。その子も嬉しそうでもないが、嫌がるでもない。

しばらく遊んでから、二人目の子のお父さんの発案で、一人目の子のところへ行ってみることに。一人目の子は両親と、そして夫さんのお兄さん夫妻と、会食会場のある旅館のロビーで遊んでいた。
息子が置いてあった車を手に取ると、一人目の子はみるみる悲しそうな表情に。自分のおもちゃを使われるのがいやなのだ。慌てて息子に車を返させる。さっき、二人目の子からトミカを快く貸してもらった息子はやや困惑するが、二人目の子がトミカをまた貸してくれたので一緒に遊び始めた。一人目の子はそこに混じるでもなく、車を片付け、さらに遊んでいたブロックも片付け始めた。自分のおもちゃを取られたくないのだ。
「こうやっていると個性が出ますね」と、やってきた二人目の子のお母さんが言う。
しばらくして、一人目の子の一家の乗る電車の時間が迫ってきた。「次また会えることがあるのかな、もう会えないかもしれないね」と言い合いながら、一家を見送り、会食は流れ解散となった。

宿泊している部屋に戻り、息子のおむつを替えようとすると、激しい抵抗に遭う。
さっきまであんなに機嫌よくしゃべっていた息子。普段、同い年くらいの他の子と一緒にいるところをじっくり見ることがないから、あんなにコミュ力を持っているなんて、知らない人の多いところでも機嫌よくにこにこしていられる特性があったなんて、知らなかった。
ただ、一人目の子も今ごろ家族だけになったら、ずっとにこにこしているのかもしれない。親戚集合の場では見せなかった特性をたくさん持っているのだろう。つい、自分の子と他の子を目に見えるところで比べようとしてしまうけれど、優劣なんかつけられない。ただ、みんなに個性がある、というだけのことなのだろう。その個性をできるだけ大切にして育てたい、と思う。

シールを剥がすのが苦手でシールブックを渡してもすぐに放置していたが、気がつくと剥がせるようになっていた。そして数か月前に放り出したシールブックを開いて「うみにトラックはしってる、おかしいねー、おふねでしょ」と貼り直す。

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