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斜め上。【ひねくれ育児日記】

息子が風呂に入らない。

iPadばかり見ているから、その横でトミカの道路を組み立ててみる。するとすんなりこっちによってきて、トミカを走らせ始めた。やがて、風呂が沸いた音が鳴る。「お風呂入ろう」と声をかけると「いらない」と言う。最近「いらない」が多い。
しばらく待ってみる。トミカを実況して盛り上げる。もう一度「お風呂入ろう」と言ってみる。顔も上げずに「いらない」「ままおふろはいって」。
しんどくなってきて畳に転がる。気がつくと息子はまたiPadを見ている。私は先に自分の服を脱ぐ。それでも「いらない」。
攻防が始まってもうすぐ20分。寒い。息子にもらった風邪がまだ治り切らないのに。しんどくて、しんどくて、言ってしまった。「じゃあ、まま先に入るから。」
私は風呂場に入り、ドアは開けたまま、お湯を出す。息子が来る気配はない。
やってはいけないことだと思う。子どもを置いていくなんて。息子の周りの安全は一応確保してあるとはいえ、何かあったときに聞こえないかもしれないし、それに息子の心に傷を残すんじゃないだろうか。心配だけれど、息子を風呂に連れていく方法も見つからなかった。
部屋に戻ってみる。息子は座って、ぼーっとした顔でトミカの救急車をいじっていた。私をに気付くと、笑って「いらない」と言う。
なすすべなく、風呂場に戻る。ドアを開けたまま、自分の髪を洗う。息子に危険なことが何も起きませんように。洗いながら、先日バスボールを買ったことを思い出す。
髪を洗い終えて、息子のいる部屋をのぞく。息子は布団にもたれかかり、斜め上を見てぼーっとした顔をしていた。そこで私にはっと気付き、また笑って「いらない」と言う。
私は一度戻ってバスボールを探し出し、再度息子の部屋へ。息子はさっきと同じ体勢、同じ表情。「これやろう。乗り物が出てくるみたいだよ」と言ってみると、息子の顔が険しくなる。「いらない」と、バスボールを叩き落とそうとしてきた。そしてバスボールを手に取ると、もともと置いてあった場所に戻そうと歩き始めた。
そこですかさず、ズボンを脱がせる。息子は「いらない」とまた言うが、抵抗は弱い。なんとか服を脱がせきると、歩いて風呂に向かってくれた。

一人の部屋で斜め上を見ていた息子は、何を考えていたのだろう。
風呂場で息子の体を洗いながら聞いてみたけれど、答えてはくれなかった。息子の今の言語能力以上のことだとわかっていたけれど、それでも知りたかったのだ。
一人、寂しくしていたのだろうか。風呂には入りたくないけれど。自分が、いないと寂しがってもらえる存在だと、どうも信じきれない。
どうか息子の心に傷が残っていませんように。うまくできなくて、ごめん。

風呂への試行錯誤は続く。
それでも必死の思いで、部屋に残していくのだけは回避している。

少し舌足らずな息子のしゃべり方。
しかし保育園の同じクラスのお友達には、すらすらと話している子がいた。息子は早生まれなので、おそらく息子より月齢が上なのだろうと思う。
今みたいなしゃべり方も、今だけか。すぐに、もっとすらすらぺらぺらしゃべるようになるのか。貴重すぎる今を、よく見て聞いておかないと。

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