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きいろいことり。【ひねくれ育児日記】

息子に初めて買った本が「きいろい ことり」だ。

ファーストブックはこれではなく「くだものさん」。妹が出産祝いに贈ってくれた本だ。生後1ヶ月のころ、読んでみると笑った。一緒に貰った他の本でも。
もっと他の本も読んであげたくなって、本屋へ行った。しかしどの本がいいのかさっぱりわからない。ただブルーナさんの絵は見たことがあったので、0歳向けの「おはなし絵本」の中から買ってみた。

「おはなし」といっても、読んでみると大がかりなストーリーはない。「きいろい ことり」が「いぬさん」から、牧場の人や動物、設備などを次々と紹介してもらうという内容だ。
後から図書館で同じシリーズの本を借りてみると、「ふしぎな たまご」は自己肯定感がめちゃくちゃ高い「あひるの あかんぼ」に心揺さぶられるし、「ちいさな さかな」は自己肯定感の低い「さかな」が女の子のためにさっと動けるところに心揺さぶられる。それに比べると「きいろい ことり」は淡々と進む話だった。

そんな印象だったから、息子が8ヶ月くらいの、手に取ったものを口に入れるのが一番ひどかった時期に、「くだものさん」などは念を入れて遠ざけたが、「きいろい ことり」はそこまで注意していなかった。そのため、数ページはすでに端がかじり取られている。

昨年末に里帰りするときに「きいろい ことり」を持っていったのも「他の本より軽くてかさばらない」というのがもっとも大きな理由だった。ただ自宅に戻ってくるとき、母がおもちゃ箱にこの本をしまい込んでいたため、荷物に入れるのを忘れてしまった。

他にも忘れ物や送ってほしいものがあったため、自宅に戻ってから2週間くらいしてから「きいろい ことり」を含む荷物を母に送ってもらう。
届いた段ボール箱を、最近、引き出しや箱の中身をぽいぽい出すのが好きな息子に見せた。すると、最初に引っ張り出したのが「きいろい ことり」だった。他のものには目もくれず、まっすぐ見ている。

息子は座ってページをめくり始めた。隣に座って、ほとんど暗記してしまった絵本の文章を読みながら思う。私にとって、この本はそんなに響かなかったけれど、息子にとっては生まれたころからずっとそばにある、大事な本になっていたのだ。私の感想なんて、押し付けられるはずがない。

その後もたびたび息子は「きいろい ことり」をめくる。なかでも「ひまわり」の絵のページがお気に入りのようで、そこを開くだけでにやにや笑っていることもある。そのページにはすでに折れ目がついているけれど、気にする素振りもない。

四つん這いで顔を横に向けて寝る。
椅子を押して歩く。
「バイバイ」と手を振る。
積み木の上に積み木を一つ重ねる。

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