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作品ご紹介:Krishnam Vande Jagadgurum②劇中劇について
『Krishnam Vande Jagadgurum』にはスラビ・シアターという家族劇団が登場します。
スラビ・シアターは約130年前に設立された劇団で、主にヒンドゥー教の神話を上演します。
絢爛豪華な衣装と凝った舞台装置、音楽は生演奏と生歌です。かつては多くの人々がこのスラビを観に通ったそうです。
[スラビのドキュメンタリー]
このページでは『Krishnam Vande Jagadgurum』の中のスラビが演じる演目について解説いたします。
オープニングの劇中劇 クルクシェートラの戦い
『マハーバーラタ』のクルクシェートラの戦いのシーンになります。バーブが最初に演じるのは、Abhimanyu(アビマニユ)です。
アビマニユ:勇者アルジュナの息子。
劇中ではアビマニユが戦場で敵に囲まれている場面。
父アルジュナに代わり、敵陣へと攻め入ったアビマニユだが運悪く敵陣の中に一人取り残される。多くの戦士に囲まれ、全身に矢を受けながらも、戦車の車輪を振り回し壮絶な最期を遂げる。
その次にバーブが演じるのはGhatotgacha(ガトートカチャ)です。
ガトートカチャ:英雄ビーマと羅刹女ヒディンバーの息子。劇中ではアルジュナの敵であるカルナとの闘いの場面で登場。
カルナはインドラ神から一撃必殺の槍を授かっていて、アルジュナを倒す為に温存していた。しかし、アルジュナを勝たせたいと思っていたクリシュナはガトートカチャをカルナに差し向ける。ガトートカチャはカルナたちを苦しめ、カルナは止む無く必殺の槍を使ってしまう。
ガトートカチャは見事槍をカルナに使わせたが、槍の犠牲となって息絶える。
前半の劇中劇 『Patala Bhairavi』
バッラーリで最初に上演したのは神話ではなく、1951年制作のインド映画『Patala Bhairavi』の舞台化したもののようです。これはテルグ映画の大スターN・T・ラーマ・ラオ(NTR)主演のファンタジー映画で、庭師Ramuduが愛する姫の為に冒険する物語です。
バーブは主人公Ramuduを演じます。
劇中では、噴水の前で歌うシーンから始まります。
[映画『Patala Bhairavi』の同じシーン]
終盤の劇中劇『Krishnam Vande Jagadgurum』
クライマックスで上演する演目はこの映画の題名にもなっている『Krishnam Vande Jagadgurum』(宇宙の創造神クリシュナ)です。これは主人公バーブの祖父が書いた戯曲で、『バーガヴァタ・プラーナ』を元に書かれているようです。
マツヤ、”乳海攪拌”(ヒンドゥー教における天地創造神話)のクールマ、ヴァラーハといったヴィシュヌの化身の活躍が演じられていきます。
バーブが演じているのはNarasimha(ナラシンハ)です。
ナラシンハ:ヴィシュヌの第4の化身。ライオンの獣人。
ヴァラーハ(ヴィシュヌの化身)に兄を殺されたヒラニヤカシプは、苦行の末に無敵同然の力と命を得て天界を奪い取る。しかし、ヒラニヤカシプの息子プラフラーダは、ヴィシュヌを信仰する。何をしても信仰をやめない息子にヒラニヤカシプは激怒する。「お前が帰依するヴィシュヌは”どこにでもいる”というならば、この柱の中にもいるというのか」と柱を破壊すると、その中からナラシンハが現れ、ヒラニヤカシプの腹を裂いて殺してしまう。
ヒラニヤカシプとナラシンハの物語に関しては、Periplo Eritreoさんが書かれた映画『Bhakta Prahlada』の解説を読まれると分かりやすいです。
参考サイト:Priyan News & Gossips 収集癖:ナーラダ仙(2)
用語解説
『マハーバーラタ』
古代インドの神話的叙事詩で、ヒンドゥー教の聖典のうちでも重視されるもの一つ。世界3大叙事詩の一つといわれる。
パーンドゥの子であるパーンダヴァ五王子と、パーンドゥの兄で盲目のドリタラーシュトラの子であるカウラヴァ百王子の王位をめぐる物語。
ヴィシュヌ
ヒンドゥー教の神、世界の維持神。
クリシュナ
ヒンドゥー教の神。ヴィシュヌの化身(アヴァターラ)。神聖さ、愛、知、美の神。
マツヤ
ヴィシュヌの第1の化身、魚の姿をしている。アスラ(悪魔)からヴェーダ(経典)を奪い返し、大洪水から人々を救った。
クールマ
ヴィシュヌの第2の化身、巨大な亀。乳海攪拌の際、攪拌棒に用いられたマンダラ山を海底から支えた。
ヴァラーハ
ヴィシュヌの第3の化身、猪の姿をしている。アスラ(悪魔)によって沈められた大地を持ち上げた。
ナラシンハ
ヴィシュヌの第4の化身、人獅子。
クルクシェートラの戦い
マハーバーラタで描かれる大戦争。敵対するパーンダヴァ五王子とカウラヴァ百王子の最終決戦。
アルジュナ
マハーバーラタに登場する英雄。パーンダヴァの五王子の一人。
ビーマ
マハーバーラタに登場する英雄。ビーマセーナともいう。パーンダヴァの五王子の一人。
カルナ
マハーバーラタに登場する英雄。パーンダヴァの五王子に敵対するカウラヴァの中心人物。アルジュナの宿敵。弓の名手。
『バーガヴァタ・プラーナ』
プラーナとは「古き物語」を意味し、一群のヒンドゥー聖典の総称。
バーガヴァタ・プラーナ(Bhagavata Prana)はクリシュナについて語られている経典。
協力:インド神話映画Bot 様 Twitter
見出しイラスト:©mikitakahashi Twitter