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『ウーリーと黒い獣たち』#スピンオフ 月の使者編‐パート2‐
今回も「ウーリーと黒い獣たち」の
スピンオフ作品をお届けさせていただきます。
前回はコチラ☟
それでは、いってみましょう(^^♪
突然の出会い
![](https://assets.st-note.com/img/1724825501576-GqkXrhYhMl.jpg?width=1200)
昨日の騒動から一夜明けた早朝。あいにもかわらず「べしゃり屋」の朝は早い。ほんのり明るい程度で、ほぼ暗闇という状態にもかかわらず話し声が聞こえてくる。わたしは「始まった」と半分、諦めの気持ちを持ちつつ、半分は怒りの矛先をどこに向かえばいいのか悩みつつも、ゆっくりと起きる意識を自覚した。どうせ、今日は使者の役目として手紙を作成しなければいけないと考えていたので、好都合だ。寝起きの脳は、手紙を書くには適している。
さっそく、部屋の外につけられている簡易式の手洗い場で顔を洗ってこよう。 部屋着のまま外へ出て、手洗い場に向かう。すると、すでに手洗い場に誰かの人影が見えた。わたしはとくに気にすることなく、軽く会釈をして顔を洗う。隣に人の気配を感じつつも、顔を洗い続けて、「さっぱりした」と手持ちのタオルで顔を拭う。どうやら、まだ”その人”はいるらしい。さすがに日も高くなり否が応でも隣の人の顔が目に入る。
「おはようございます!」
顔が向き合った瞬間、その男は挨拶する。わたしはハッとして、おもわず返しの挨拶のタイミングを忘れた。なぜなら、その男は かの勇者ウーリーだったからだ。
「あっ、おはようございます」
ウーリー
「今日はあつーなりそうですね、日照り続きは困ったもんですわ」
その男は、当たり障りない会話を始める。社交辞令だろうか。それともわたしと会話をしたいのだろうか。少なくとも、ここで邪険に扱ってはのちの関係性に問題が生まれると感じ、すぐさま、わたしも返答する。
「そうですね。暑くなりそうですね」
ウーリー
「でしょっ!たまらんですわ!
そういえば、お兄さん、あんまり見ない顔ですな」
「あぁ、挨拶が遅れました。最近、隣に引っ越してきた行商人です」
ウーリー
「へぇ、お名前を聞いてもよろしいですか」
「大丈夫ですよ、ゴーショーといいます。よろしくおねがいします」
ウーリー
「ゴーショーさんですね。わたしはウーリーといいます。
よろしゅうおねがいします♬
どうです?この国には慣れはりましたか?」
「いや、まだまだ慣れないですね。わたしが以前、住んでいた場所にくらべると環境は厳しいものを感じますね。水不足という時期も重なって、少しばかり後悔してますよ」
ウーリー
「そこんとこ、かわりに謝ります。すんません」
「いやいや、ウーリーさんが謝らなくても。
こういったタイミングで移り住んだわたしの責任ですから。
お心を悪くして申し訳ない」
ウーリー
「はははっ!ゴーショーさんはやさしいですね。
気にしないでください」
なんだ!?
この心地よい空間は!!これが勇者に選ばれる所以の人柄というものか。わたしの立場からするとウーリーという存在は、けして良好な関係性とはいえない。どちらかといえば敵側だ。たしかにお互いの素性は割れていない。知らない者同士だからこそ、たわいのない会話を続けられるのは承知の上だ。そうした前提条件があるにもかかわらず、この男の会話のテンポ、しゃべるスピード、なにより「会話を続けたい!」と思わせる相手への気配りを感じずにいられない。
いかん!
ウーリーに感情移入してはいけない。わたしにはわたしの使命がある。女王ルボン様から授かった敵地視察という重要な任務を全うしなければいけないのだ。
わたしは、このままでは自分の立場的にも良くないと感じ、「それでは」と言葉を交わして去ろうとしたとき。ウーリーが食いぎみに話しかける。
ウーリー
「すんません。赤の他人にこういう話をするのはどうかと思いますが、
じつは昨日、わたし勇者に任命されたんです」
!?
えっ、そのくだりの話を今するの??
使者の身として、ここで話を終わらせるわけにはいかない。ついつい「はい!知ってますよ!」と声を大にして言いたかったが、グッとこらえて無知のフリをする。
「えっ!?勇者??どういうことですか?」
ウーリー
「昨日の広場でのこと、知らないんですね。
はい、言葉のとおりです。わたしは勇者になったんです」
「はぁ、勇者ですか、大変ですね」
ウーリー
「そうなんすよ!聞いてくださいよ!
今回、ターリキィ国が酷い干ばつに襲われているじゃないですか。
そんで、その原因はどうやら国王、アクーン王の病気が原因らしんですよ。知ったこっちゃ、ないですよ、そんな話し!そいで、その病気の原因も、なんか悪い気が関係しているみたいな話で」
ウーリーの口は止まらない。初対面の今さっきまでの会話の中で、もっとも饒舌でスピーディにはなしたのではないだろうか。わたしの返答を待たずして、ウーリーは続ける。
ウーリー
「そもそも、悪い気ってなんですかって話ですよね。それよりもさっさと医者に行かなかったアクーン王の問題っすよね。というより、アクーン王の病気で国が干からびるっておかしくないですか」
「まぁ、そういう設定だからしょうがないだろ」と不思議な言葉を脳内にめぐらせたわたしは、もちろんウーリーに同情するように頷きながら会話を進める。
ウーリー
「でねでね、悪い気をどうにかするために、今回、偉い賢者さんに勇者とし抜擢されたんですが、正直、ムリやなって思うんです。だって、今までそういった経験、ないんですよ。わたし、ただの日雇いサラリーマンですからね。最近じゃ、カイサーの視線も厳しいですし。あっ!カイサーはわたしの奥さんです」
「へぇ~、この人、日雇いなんだ~。苦労してんだな」とウーリーの情景を聞いてちょっぴりセンチメンタルな気持ちが芽生える。心ばかりかウーリーの背中に哀愁すら感じずにいられない。
「では、なぜ今回、ウーリーさんは勇者に選ばれたんですか?
言葉は悪いですが、何の取り柄もないとおっしゃるなら、何らかの ご自身の知らない理由があるということですよね」
ウーリー
「ゴーショーさんは、上手いな~。会話のつなげ方が絶妙っすね~」
「いやいや」
ウーリー
「いや、まぁ、昨日に広場で勇者になる人の条件みたいなんがあって。
それで見事にわたしがハマったみたいで。
そんで聞いてくださいよ。いきなり、あのすっぱいでおなじみ
”メウボーシ”をいきなり食わされたんですよ。
むっちゃ、ニコニコしながら賢者さんが口に押し込むんです」
「それはツラい」
ウーリー
「そしたら、その辺から記憶が曖昧で。気づけば、いつもの感覚とは違うといいますか。なんか妙にまわりの人が明るいといいますか。でも、その状況にビックリはしなかったんですよね。子供の頃に同じ経験をしたような気がして」
「いつもと違う感覚?どういうことですか」
ウーリー
「自分の身体のようで、身体じゃないような。これは体験してもらわんと十分な説明できまへんわ。申し訳ない」
「うむ、そこんところがとても気になる」と内心、焦りだしているわたし。
なぜなら、ウーリーの身に起きていることは知っているからだ。そう、ウーリーはメウボーシの実を食べると発光する身体を持ち合わせている。しかし、「あなたはメウボーシを食べると発光するんです」と伝えても、おそらく信じてはくれまい。
いつのまにか気づけば太陽はすでに眼中に入り、日差しはキツい。ただ、目の前には勇者が悩み困った様子でたたずんでいる。わたしは敵国の使者なのだ。ここで得られる情報は間違いなく有力な情報で、女王ルボン様へ伝えねばならない情報だ。気づけば、わたしはウーリーの手を握りしめて、こう言った。
「良ければ、わたしの目の前でもう一度、メウボーシを食べてみてはいかがでしょうか!」
突然、手を握られてビックリするウーリー。その後、仰天した顔からスッとにこやかな顔となり、わたしにはなしかける。
ウーリー
「ゴーショーさん、それは丁重にお断りします」
なんじゃ、そりゃ!!
ゼッタイ”食べる”いうくだりではなかったのか。わたしの心の内は、恥ずかしさと怒りとが混ざり合い、心がたかぶっている。わたしは腐っても”月の使者”だ。この感情を相手に悟られてはいけない。とくに変わりない神妙な顔立ちで、ソッとウーリーの手を離した。(余談だが、この男の手は毛深いと感じた)
「すまない。いきなり無理なお願いをして。
会って数分の、初対面の男の願いはおかしいですよね。
忘れてください」
ウーリー
「いやいや、ゴーショーさんのやさしさに甘えて、わたしのほうこそベラベラとしゃべってしまい申し訳ないです。ゴーショーさんのお願いは断りますが、今後、お会いできたときは近況報告しますね」
「ぜひ!」
と食いぎみに返答したわたしに、ウーリーは「ではっ!」と去り際の手をわたしに向けて、手洗い場を後にした。
なんと、濃密な時間だったのだろう。
これが世にいう「早起きは三ターリキィの得」というのか。おかげで勇者の現状について知ることができた。また、使者としてバレることなく友好な関係性を気づくことができたのは、大きな収穫だろう。
わたしは、すっかり乾いたタオルを手に持ち、そそくさと自分の部屋に帰った。いまの状況を文書として女王ルボン様へ伝達せねばと、心がワクワクしているからだ。
重要文書
![](https://assets.st-note.com/img/1724826589597-NcmhXMcF42.jpg?width=1200)
-女王ルボン様-
任務としてターリキィ王国潜入を命じられました月の使者ゴーショーであります。敵地となるターリキィ王国へ潜入して1週間がたちました。現状についてご報告させていただきます。
1、王国の現状
2、勇者の誕生
1、王国の現状につきましては、女王ルボン様もご存じのとおり酷い日照りが続いております。同時に猛暑も重なり、国民は苛立ち、けして豊かな国とはもうしがたい状況です。ただ一部、明るく過ごす国民の姿も見えるので、すべての国民が疲弊しているとは断定できません。また、ターリキィ国王アクーンは現在、病にひれ伏しています。どうやら、この国の干ばつ問題は、国王アクーンの病気が原因のようです。いまだ回復の見込みがないため、油断せずに引き続き、使者の身として国の情勢をご報告して参ります。
2、昨日、勇者が誕生しました。国王の身を案じた賢者によって「勇者が必要だ」と判断し、勇者を見つける活動が催されました。そして、見事にその場で勇者が見つかりました。勇者の名は「ウーリー」といいます。幸いにもわたしの住む家の隣の長屋に住んでおります。また、さきほど勇者と接触することに成功しました。以下、勇者について情報を共有いたします。
・奥さんがいる。(奥さんの名はカイサー)
・日雇いサラリーマンで働いている。
・今回の勇者抜擢に悲観的な意見をもつ。
・メウボーシの実を食べると、ウーリーの身に変化が起きる
以上です。
勇者の動向につきましては、引き続き調査を進めて参ります。
情報の更新を発見次第、随時ご報告させて参ります。
月の使者 ゴーショー
「ふぅ、終わった」
ペンを握る手で額の汗を拭い、一息つく。無事に重要文書の作成に終わりが付いて、一安心するわたし。すっかり日は昇りきり、室内は暑苦しい。
しかしながら、今回、敵国ターリキィ王国へ侵入して、もっとも有力な情報を得られた数日ではなかっただろうか。王国の情勢を知るのはもちろんのこと、なによりこちらの素性はバレることなく、勇者と接触できたのは大きい。女王ルボン様も今回の重要文書を読んで、お喜びいただけるだろう。
「そうだ!今日は、ひさびさに豪華な食事にありつこう」と考え、手元の文書を封筒へ忍び込ませる。使者として、ここに疑問を感じるのはいかがと思うが、こうした機密文書をいまだに便箋でやり取りしなければいけないのは、どうにかならないのかと感じつつ、身支度の準備をする。
今日もターリキィ国は、暑くなるだろう。
市場に隣接する料理屋には、かの有名なバナンナ料理が食べられるらしい。
「どんな美味しい料理が食べられるんだろう」と想像しながら、わたしは町の中へ消えるのであった。
以上です♬
勝手ながらのわたしの妄想物語りでした。
お楽しみいただけたでしょうか。
またまた、ご要望がありましたら
妄想を膨らませて創作させていただきます😊
では、また。
失礼します。
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