超常異能の改変作家 第13話

  *

「――あら? あらあらあら??」

 麻音《アサネ》姉ちゃんが僕たちの様子を察する。

「なんか、ふたりとも顔、真っ赤だよ?」

 生萌《イクモ》も様子を察する。

「さては一発――」

「――してねえよっっ!!」「――してないですっっ!!」

 ふっ、と麻音《アサネ》姉ちゃんが笑う。

「息ぴったりね。朝ごはん、できてるし食べよ?」

  *

「今日は、お米なんだ……」

「まあ、昨日はタマタマよ。タマタマだけに」

「『タマタマだけに』って言いたいだけだよね? 別に言うところでもないし」

 どうやら麻音《アサネ》姉ちゃんは下ネタが好きらしい。「びんびんよ」と言った時点で、そういうキャラだと気づくべきだった。なんか、つまらないギャグを言ってる親父くせえ。

「でも、私は、そういうの……経験ないしなあ……中身は理解しているつもりでいるけど」

「別にいいんじゃない? そういう属性って男からしたら貴重だし。むしろ、ありがたがるよ。結婚するときとか」

「そうかな……それがコンプレックスな人、結構いて流される子もいたけどね。私は、そういう興味を持つ対象がタイくんだったから……あ、もちろん姉弟としてよ。お○ん○んを見るくらいしかしてないからね」

「…………」

 ツッコんでいいのだろうか――いろんな意味で。

「生萌《イクモ》わかんない」

「生萌《イクモ》は一生わからなくていいからね」

 生萌《イクモ》のフォローは初芽《ハツメ》がしてくれた。

「で、あなたたち……クラスは一緒のほうがいいわよね?」

「……うーん、もう大丈夫です。わたしたち、もう付き合っているので」

「あ、やっぱり、そうだったんだね。顔、真っ赤だったし生萌《イクモ》でもわかったよっ!」

「生萌《イクモ》ちゃん天才だわっ! 成長してるっ! お姉ちゃん、感激っっ!!」

「生萌《イクモ》は常に成長しているのですっっ!!」

 どんどん話がそれていくな。

「とにかく、わたしたちは付き合っているので、もう、なにも心配はいりません」

「そう、よかったわっ! これで、たとえクラスが違ったとしても、ほかの子と恋に落ちるなんてことはないわよねっ! お姉ちゃんは、あなたたちを信じますっっ!!」

「絶対に大丈夫ですっ! 大公《タイコー》は、そのへん極度に真面目だからっっ!!」

 あっはっはっはっ、と麻音《アサネ》姉ちゃんと初芽《ハツメ》は笑い出す。

「……なんか、この前振り、盛大にフラグっぽいけどね」

「えっ、生萌《イクモ》……なんか言った?」

「なんにも言ってないよ、初芽《ハツメ》姉ちゃん」

 なんか、妙に時間の流れが遅く感じるな……言ってみるか。

「ところで、みんな……今、何時だっけ?」

「ん?」「今?」「今は…………あっっっっ!!!!」

 また遅刻になりかけフラグかよ――。

  *

 ――遅刻ぎみの登校だが、なんの問題もなく着きそうだ。

 もともと僕らは能力者の端くれだ。

 あのときの僕が存在を疑われたとき――表札を見に行こうとしたとき――に麻音《アサネ》姉ちゃんと生萌《イクモ》が瞬間移動したことがあった。

 あれは、もとの彼女たちの基礎身体能力が高いという証明だった――あのときは異能が発現していなかったから、そのときの僕は異常な速さに驚いたけど。

 だから、なんとか間に合いそうだ……僕たち四人は。

 ……と、思ったのだが――。

「――ねえ、見て、あの子……」

 初芽《ハツメ》が、なにかを発見する。

 なにかとはランドセルを装備している小学生っぽい幼女である。

 どうやら道に迷っているらしい。

「どうしたの?」

「――! 道に迷ってしまったのです」

「どこへ行きたいの? ……――」

 ――と、僕は聞いた。

「ハーティア異能覚醒学院《いのうかくせいがくいん》です」

「なら、僕たちと同じだし、一緒に行く?」

「……はい、です。でも……」

 幼女はジロリと、こちらを見る。

「怪しい人について行ってはいけないと、お母さんに言われているのです」

 ……えっ? 僕のこと? そんなに怪しい、のか?

「じゃあ、お姉ちゃんたちについて行けば大丈夫っ! この麻音《アサネ》お姉ちゃんに任せなさいっっ!」

「なんか、お姉ちゃん……親父くせえので、ついて行きたくねえです」

「――親父くせえ……」

 麻音《アサネ》姉ちゃん、感づかれてるぞ。本人すげえショックみたい。

「じゃあ、このお姉ちゃんは、どうかな……?」

 お、初芽《ハツメ》が名乗り出た。

「なんだかドス黒い気を感じます。闇です。闇が背後にいます。怖いです」

「…………」

 幼女は、僕が初芽《ハツメ》に対して「魔王」と感じたものを的確に表現している……なんて、鋭さだ――感的な意味でも、ダメージ的な意味でも。

「じゃあ生萌《イクモ》と行こうっ!」

「うんっ!」

 とりあえず、生萌《イクモ》は大丈夫みたいだ。よかった。早く学院に向かわなきゃな――。

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